245 / 311
隠された事情④
しおりを挟む
「……王宮の備品から、手配したのか?」
リシス王国同様セネーバ王宮でもベッドが主流なことを考えれば、敷布団も持って来ている時点で違うことはわかっていたが、念の為聞いておく。
「もちろん、俺個人で手配したに決まってるだろぉ? さすがに牢屋にベッドを持ち込むわけにはいかねぇから、大陸で使われてる寝具を取り寄せてみたんだ。気に入ったか?」
前世では初めましてながらも、懐かしの敷布団よ。今思い出したけど、前世の俺はベッドより敷布団派だったわ。畳んで押入れに仕舞えば、狭いスペースを活用できるから、友人が遊びに来た時とか便利だったんだよな。
高級旅館並みにフッカフカで高そうな布団を前に、遠い昔の記憶に思いを馳せつつ、ヴィダルスの様子を横目で伺う。
こちらをじーっと見つめながら、尻尾をブンブンしている姿は、まさに飼い主に「褒めて褒めて」とねだるワンコ。思わず後天的犬好きの血が騒ぎそうになるが、騙されてはいけない。こいつは匂いで、俺の感情がわかるのだ。
つまりこの行動は、絶対わざと。自分が可愛く見えてることがわかってて、敢えてそれを見せつけているあざとワンコなのだ。……ワンコなら、あざとくても可愛いから許される気がするな。いかん、絆されるな。俺。
「……ありがとう。ヴィダルス。おかげで腹の子に負担をかけずに済む」
敢えて腹を撫でながら感謝を口にすると、一瞬ヴィダルスの表情が冷たいものになったが、すぐに口端を上げて愉しげに笑った。
「……そうだな。腹の子に何かありゃ、お前の体にも障りがあるかもしれねぇからな」
……やっぱり、これくらいでは動じないか。
それじゃあ、せっかくなのでここで取っておきの爆弾を、と。
「……布団の礼に、忠告してやるよ。ヴィダルス。お前、ボンドロネリ家に良いように使われているぞ」
再びヴィダルスの顔から、笑みが消えた。
ボンドロネリ家は、ヴィダルスの生家であるランドルーク家の懐刀と呼ばれる家で、取り巻きだったまだら髪の双子のジャガー獣人の家だ。
以前アストルディアや、チルシアさんからセネーバの貴族情勢について教えてもらったが、ボンドロネリ家は戦争賛成派の筆頭貴族であり、かなり過激な選民思想を持っていると聞いた。
かつて取り巻きだった双子は、今はヴィダルスと同じ部隊に所属して、側近のようにかいがいしく働いているらしい。……となれば、今回の件でヴィダルスを唆したのがあの双子であることは、ほぼ間違いない。
元々あの双子はヴィダルスを馬鹿にしきっていて、自分の楽しみの為にいいように扱っていた。ボンドロネリ家当主である親から、いざとなったらヴィダルスを対アストルディア時の捨て駒にするよう命じられたとしても、喜んで従ったことだろう。
「ボンドロネリ家をはじめとする戦争賛成派は、お前に俺を奪わせることによって、アストルディアが女王に反旗を翻した時の捨て駒にするつもりだ。アストルディアと戦わせて、お前が負けた時はその首で溜飲を下げさせようとしてるんだよ。明らかに、お前を馬鹿にしている。悔しくはないのか? ヴィダルス」
ヴィダルスの眉間の辺りに皺が寄る。……これは、少し効いているか?
「なあ、ヴィダルス。俺とチルシアさんを解放してくれたら、俺はお前に協力するよ。お前を馬鹿にしてる奴らを、一緒に全員ボコボコにして、二度とそんなことを思えないようにしてやる。だから、今すぐこの忌々しい首輪を外してくれよ。お前だけが頼りなんだ」
「……【確信に近い、はったり】、か。ーーおいっ、そこの見張り!」
「は、はいっ!」
「明らかに、エドワードがよけいな情報仕入れてるじゃねぇか。誰が漏らした」
「す、すみません! メリヌドが、抑えがきかなかったようで。で、ですが、あくまで自分の考えを述べただけで、詳しいことは話してないと聞いていたのですが……」
リシス王国同様セネーバ王宮でもベッドが主流なことを考えれば、敷布団も持って来ている時点で違うことはわかっていたが、念の為聞いておく。
「もちろん、俺個人で手配したに決まってるだろぉ? さすがに牢屋にベッドを持ち込むわけにはいかねぇから、大陸で使われてる寝具を取り寄せてみたんだ。気に入ったか?」
前世では初めましてながらも、懐かしの敷布団よ。今思い出したけど、前世の俺はベッドより敷布団派だったわ。畳んで押入れに仕舞えば、狭いスペースを活用できるから、友人が遊びに来た時とか便利だったんだよな。
高級旅館並みにフッカフカで高そうな布団を前に、遠い昔の記憶に思いを馳せつつ、ヴィダルスの様子を横目で伺う。
こちらをじーっと見つめながら、尻尾をブンブンしている姿は、まさに飼い主に「褒めて褒めて」とねだるワンコ。思わず後天的犬好きの血が騒ぎそうになるが、騙されてはいけない。こいつは匂いで、俺の感情がわかるのだ。
つまりこの行動は、絶対わざと。自分が可愛く見えてることがわかってて、敢えてそれを見せつけているあざとワンコなのだ。……ワンコなら、あざとくても可愛いから許される気がするな。いかん、絆されるな。俺。
「……ありがとう。ヴィダルス。おかげで腹の子に負担をかけずに済む」
敢えて腹を撫でながら感謝を口にすると、一瞬ヴィダルスの表情が冷たいものになったが、すぐに口端を上げて愉しげに笑った。
「……そうだな。腹の子に何かありゃ、お前の体にも障りがあるかもしれねぇからな」
……やっぱり、これくらいでは動じないか。
それじゃあ、せっかくなのでここで取っておきの爆弾を、と。
「……布団の礼に、忠告してやるよ。ヴィダルス。お前、ボンドロネリ家に良いように使われているぞ」
再びヴィダルスの顔から、笑みが消えた。
ボンドロネリ家は、ヴィダルスの生家であるランドルーク家の懐刀と呼ばれる家で、取り巻きだったまだら髪の双子のジャガー獣人の家だ。
以前アストルディアや、チルシアさんからセネーバの貴族情勢について教えてもらったが、ボンドロネリ家は戦争賛成派の筆頭貴族であり、かなり過激な選民思想を持っていると聞いた。
かつて取り巻きだった双子は、今はヴィダルスと同じ部隊に所属して、側近のようにかいがいしく働いているらしい。……となれば、今回の件でヴィダルスを唆したのがあの双子であることは、ほぼ間違いない。
元々あの双子はヴィダルスを馬鹿にしきっていて、自分の楽しみの為にいいように扱っていた。ボンドロネリ家当主である親から、いざとなったらヴィダルスを対アストルディア時の捨て駒にするよう命じられたとしても、喜んで従ったことだろう。
「ボンドロネリ家をはじめとする戦争賛成派は、お前に俺を奪わせることによって、アストルディアが女王に反旗を翻した時の捨て駒にするつもりだ。アストルディアと戦わせて、お前が負けた時はその首で溜飲を下げさせようとしてるんだよ。明らかに、お前を馬鹿にしている。悔しくはないのか? ヴィダルス」
ヴィダルスの眉間の辺りに皺が寄る。……これは、少し効いているか?
「なあ、ヴィダルス。俺とチルシアさんを解放してくれたら、俺はお前に協力するよ。お前を馬鹿にしてる奴らを、一緒に全員ボコボコにして、二度とそんなことを思えないようにしてやる。だから、今すぐこの忌々しい首輪を外してくれよ。お前だけが頼りなんだ」
「……【確信に近い、はったり】、か。ーーおいっ、そこの見張り!」
「は、はいっ!」
「明らかに、エドワードがよけいな情報仕入れてるじゃねぇか。誰が漏らした」
「す、すみません! メリヌドが、抑えがきかなかったようで。で、ですが、あくまで自分の考えを述べただけで、詳しいことは話してないと聞いていたのですが……」
405
あなたにおすすめの小説
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる