俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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決戦③

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「ヴィダルス様。お言葉ですが、エドワード様相手とならば、流石に私共も手加減はできません。向こうはこちらを殺す気ですのに、こちらは生け捕りにしなければならないなんて、フェアじゃありませんわ」

「うっかり殺してしまったとしても、責を負わされることはないと約束して頂けなければ、僕達は戦えません」

 鏡のような二体のジャガーの進言に、ヴィダルスは目を細める。

「いいぜ。最初から殺す気で行け。お前らごときがエドワードを殺せるとは思えねぇけどな」

「おっしゃいましたね? エドワード様が亡くなった後に後悔なさっても、取り返しはつきませんからね」

「前言撤回して、ヴィダルス様の命令に従っただけの僕達を、殺そうとなさったりはしないでくださいね」

「しつけぇ。……エドワードがその程度の奴なら、そん時は俺も目を覚ますさ。ようやく俺は、この呪いのような執着から解放されて、何もかもが恵まれている、つまんねぇ無機質な日々に戻れるんだ」

 ヴィダルスの答えに、双子のジャガーは揃って歪んだ笑みを浮かべた。

「……やったぁ、やったぁ、言質を取った!」

「エドワード様と殺し合いができるうえ、うまく殺せたらヴィダルス様まで絶望させられるなんて最高過ぎる!」

「口ではこんなことを言ってるけど、本当に私達がエドワード様を殺したら、ヴィダルス様は絶対後悔するのよ」

「でもプライドが高いから、自分が一度言ったことを覆すこともできないんだ」

「「想像しただけで、すごく惨めで素敵過ぎる!!」」

「……本性バレていたことを知った途端、開き直り過ぎだろ。お前ら。普通、俺の目の前で言うか。それ」

「だって、今更隠しても仕方ないのでしょう?」

「今まで散々陰で馬鹿にしてたこと知られてたんだから、口に出しても今更でしょう?」

「たとえ馬鹿にしてても、利用価値がある限り、ヴィダルス様は私達を切り捨てない」

「だったら、僕達は僕達の利用価値を示しながら、堂々と馬鹿にするだけです」

「……お前らと話していると、頭が痛くなる」

 クスクスと顔を見合わせて笑うボンドロネリの双子にとっては、全てが遊びなのだろう。
 ヴィダルスを馬鹿にすることも。俺と殺し合うことも。罪のない人々を惨殺して、ネルドゥース辺境伯領を滅ぼすことも。
 父上であるヒュールデリドの主張は、人間である俺からすれば受け入れ難いものでもあったけど、それでも彼なりの信念や正義は感じられた。種族や立場が違えば、俺も彼に共感していたかもしれないと、思わせるものはあった。
 けれどこの双子には、それがない。双子にとっては、全てがただ、自分達の愉しみの為のものでしかないのだ。反吐が出る。

「それでは、ここは私達に任せて、ヴィダルス様は下がっていてください。ラスボスは常に、遅れて攻撃するものですから」

「他の奴らで僕達に着いて来れる自信がある奴がいれば、混ざってくれてもいいよ? その代わり、うっかりエドワード様と間違って殺しちゃっても、恨まないでね」

 俺にとってありがたいことに、ヴィダルスはひとまず参戦しないで高みの見物に決め込んでくれるようだ。
 ヴィダルス相手でも勝つ自信はあるけれど、それに加えて多勢に無勢になるとなかなか厳しい状況だったので、正直ありがたい。ヴィダルスが部下を殺さないように努めるタイプなら、多勢に無勢だからこその勝機もあるが、絶対あいつ巻き込みとか気にしないし。

 先頭には並んだ双子。そして、何人かの獣人兵もその後に続くように、攻撃姿勢を取る。
 取り敢えず傍観を決めた奴らも隙あらば襲ってくるだろうから、戦闘相手はヴィダルス以外の全員と思っていいだろう。

 誰がいつ、襲いかかって来ても良いように、周囲に結界を張って剣を構える。

 双子が同時にこちらに飛びかかって来たのを合図に、ヴィダルスの部隊との戦闘が始まった。


 

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