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聖女の日々10
しおりを挟む「ありがとう。父様。……申し訳ないけど私が出てくるまで、ここで待っていてくれる?」
「勿論それは構わないが……着いていかなくて、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。大聖堂の中は、予言者の領域だもの。ここでは、誰も彼には敵わない。予言者が私を害そうとしない限りは、誰も私を傷つけることはないよ」
私の言葉を聞いて、先程の兄様の言葉を思い出したのか、父様の顔が曇った。
「……予言者が、ディアナを害そうとする可能性は?」
「兄様の話を聞いてたでしょう? ……予言者が、聖女である私を害すことはあり得ないんだ。例え私以外の全てを傷つけることになったとしても、彼は私だけは守ろうとする。……当代の聖女が私一人である限りは」
例え私が望もうと、望まなかろうと、彼は私を守ろうとする。私だけは守ろうとする。
……私の中に、彼が愛した初代聖女の姿を見いだせる限りは。
「どうしても、彼と二人きりで話したいの。……いや、話さないといけないんだ。だから、父様はここで待っていて」
私の言葉に応えるように、普段はこの時間は施錠されているはずの大聖堂の扉が開いた。
……ああ。私がここに来ていることを、彼は気づいている。
「……分かった。ここで待っているよ。どうせ私が行っても、結局眠らされるだけだろうから」
以前兄様の身に起こったことを、兄様伝いに聞いている父様は、少しの葛藤の末に、引いてくれた。
「……ありがとう」
もう一度父様に感謝の言葉を伝え、大聖堂の中へと足を進める。
私が大聖堂の中に入った瞬間、背後で音を立てて扉が閉まった。
まるで私と父様を隔てるようだと、苦笑しながら、あかりが灯った大聖堂の中を歩く。
ステンドグラスの間をぬって、真っ直ぐに向かうのは、初代聖女の像の元。
すぐ近くの長椅子に座ると、両手を組んで聖女の像に祈りを捧げた。
「……今日はいかがされました?」
つい先程まで誰もいなかった私の隣に、いつの間にか少年姿の予言者が座っていたが、今度は特に驚かなかった。
「……貴方に初代聖女の話を聞きたくて、ここに来ました」
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