処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ

文字の大きさ
186 / 225
連載2

神との戦い8

しおりを挟む
 トリアスらしきもやが、ルイス王の体から出てきた瞬間。
 私から離れて駆け出した兄様が、剣を抜いて跳躍する。

「お前は、ここで消えるのだから」

 そしてその剣を、まっすぐもやに向かって振り下ろした。

【っ愚かものめ! 神体から離れて弱体化したとはいえ、我は神だぞ! ただ人の剣なぞで斬れるものか!】

「愚かものはお前だ。トリアス。……ただ人の俺が、何故今の状態のお前を視認できていると思っているんだ」

 その時初めて、兄様が握る剣が【黎明】ではないことに気がついた。

「普通の剣では斬れなくてもーーお前の本体を封じているかつての神体ならば、その限りではないだろう。封印の際にディアナの力を纏っているのなら、なおさらな」

 兄様がもやに向かって振り下ろそうとしているのは、私がトリアスの本体を封じた、神体の剣だった。

 状況を理解したもやは、瞬時に逃げようとしたけど、既に手遅れだった。
 剣の刃は、まっすぐにモヤに向かって振り落とされ、断末魔の悲鳴が亜空間の中を響き渡る。
 まるで水が蒸発するみたいに、一瞬でもやは霧散して薄くなり、そのまますぐに消えてしまった。

「……やった……」

 しばらく呆然とその場に立ち尽くしていたけど、状況を理解するなり、胸の中からふつふつと喜ぶが湧き上がってきて、自然と口もとが緩んだ。

「兄様……やったよ! 私達、ルイス王とトリアスを倒したんだ!」

 ルイス王はまだ絶命こそしていなかったけど、顔は黄疸で黄色く染まり、完全に瀕死の状態だ。
 おそらくすぐに聖女の力を行使しない限り、もう助ける術はないだろう。
 聖女の力を使い切った私はルイス王の為に力を行使することはできないし、もしできたとしても行使するつもりはない。

 前世では腹違いの兄だった男の野望は、もうここでおしまいだ。
 そして私の復讐も、聖女としての役目も。

「これで全部おしまいだよ……私、もう聖女じゃなくていいんだ……ただのディアナに戻れるんだ」  

 厳密に言えば、私はこれから少し休んで体力と気力を回復させ、シャルル王子と私自身の【厄】を結晶化して取り除かないといけない。
 ユーリアが残した【厄】も飽和前に片づけないといけないし、ユーリアを初めとした歴代の【災厄の魔女】の思念が残っていないか調査する必要もあるかもしれない。

 けれど私が【聖女】として果たさなければならない使命は、既に達成された。
 何度も何度も生まれ変わる度に、魂が引き継いできた役目を、ようやく終わらせることができたのだ。

「ああ。これでおしまいだ。よく頑張ったな。ディアナ」

 優しく微笑む兄様の姿に、自然と視界が潤んだ。

「兄様のおかげだよ……全部、兄様がいてくれたから……っ!?」

 兄様のもとに行こうとした瞬間、不意に左手が光りはじめた。

 出立の際に、予言者から左手の薬指に無理やりはめられた、あの指輪が。
 
 
しおりを挟む
感想 178

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。