世界の十字路

時雨青葉

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第3章 ゲーム

出した答えは―――

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 提示されたのは、命の取引。


 ようは、助かるなら二人一緒に、そして死んで魂を狩られるとしても二人一緒にということだ。


 そんな重い代償のやり取りを〝ゲーム〟という軽い言葉で片付けるとは。
 嫌悪感で吐き気がしそうだ。


「受けるも受けないも、お主次第。受けないなら、私はあの者の魂をさっさと狩って、お主の元からも消えよう。」


 このゲームを受ければ、自分の命も危うくなる。


 しかし、ゲームを拒否すれば、拓也が確実に命を落とす代わりに自分だけは確実に助かる。


 この死神は、自分が助かる選択肢をちらつかせて揺さぶりにきているわけだ。
 こんなに性質たちの悪い心理戦もない。


「どうする?」


 死神は笑う。
 実はそれにすぐには答えず、一度瞑目した。


 このゲームを受けると宣言するのは簡単だ。
 でも、このゲームを受ければ、自分が賭けるのは自分の命だけじゃない。


 自分には、桜理を救うために聖木たちと交わした誓約がある。


 もしこのゲームに負けて自分が死ねば誓約は破棄となり、桜理も道連れに命を落とすことになるだろう。


 自分にとっては、桜理のことが最重要項目。
 彼女の命を危険にさらすことになるのには、かなりの抵抗があった。


 しかし、突きつけられた選択肢はこんなにも悩ましい。


 桜理を確実に守るためには、拓也を見捨てなければならない。


 桜理を危険にさらすか、拓也を見捨てるか。


 どちらが嫌かと問われれば、すぐに前者と答えるだろう。
 だからといって、拓也を見捨てることはどうしてもできない。


 命というものは、それほどに重いのだ。


 最善は全員が助かること。
 そのために選ぶ道は、最初から一つしか用意されていない。


 ―――ここは、腹をくくるしかないだろう。


 静かに目を開いた実は、目の前の死神をじっと見据みすえる。




「いいだろう。そのゲーム、受けてやる。」




 はっきりと、そう宣言した。


(信じるからね、拓也。)


 長い逡巡しゅんじゅんの結果、実は自分と桜理の命を賭けることを選んだ。
 もう、後戻りはできない。


「よくぞ言った!」


 彼は上機嫌で言うと、実の胸――ちょうど心臓の上――にトンと指をつけた。


「―――っ!!」


 突如、指をつけられた胸から電撃を食らったかのような衝撃が突き抜けた。


 実の体が大きく痙攣けいれんし、その全身が強張る。
 そんな実を見つめたまま、彼が意味の分からない呪文を唱え始めた。


「う……く…っ」


 体と意識が、激しいしびれに支配される。
 鈍麻する五感と思考の中、指が触れる胸だけがひどく熱い。


 実の胸と彼の指の間に火花を伴った光が弾け、実の体が一際大きく痙攣けいれんする。
 それが、終了の合図だったようだ。


 しびれと熱から解放された実の体が、力を失ってぐらりと揺らぐ。
 その体を、死神が軽々と支えた。


 全身をさいなんでいた痺れは、思ったよりも早くざんすら残さずに消えていく。


 体がすんなり動くようになったことに気付くや否や、実は即座に死神から離れた。


「何をしたんだ?」
「契約の刻印をしただけだ。」


 言われて、実は無意識に胸に手をやった。


 確かに胸に―――いや、魂に何かを穿うがたれた気がする。


「あの者が死んだら、お主の魂はその刻印に捕らわれて私のものになる。そういう刻印だ。あの者が生き延びた場合は消えるから、安心するがよい。」


 そこまで言うと、死神はふいに肩を震わせた。
 何事かと問うより先に、我慢しきれなくなった彼が声高らかに笑い出す。


「ふふ………あはははは! さあ、ゲームの始まりだ。共に楽しもうではないか! あはははは! はははははは!!」


 彼の笑い声に反応してか、胸が熱を帯びる。
 その熱に浮かされて、意識がまた―――

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