世界の十字路

時雨青葉

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第4章 急転

死神と戦ってきた家系

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 説明は至って簡単だ。


 拓也に死神らしきものがいているのを見て、なんとか死神に接触しようとした。
 その結果死神と対面し、とあるゲームを持ちかけられたのだ。




「―――で、そのゲームとやらを受けちゃったのか!?」




 紫苑が机に身を乗り出した。


「うん、まあ……そういうこと、ですけど……」


 実は、歯切れ悪くそう答える。


 当然の流れではあるが、あの後の自分は、蓮と紫苑、そして尚希の三人に事情説明を求められた。


 もちろん、ゲームのことを話すのには少し迷いがあった。
 とはいえ、拓也以外の人間にゲームのことを話すなという条件はなかったはず。


 何より圧力全開の蓮と尚希に押し負けて、開きたがらない重い口をこじ開けた実であった。


 自分が話している間、三人はこちらから目を離すことなく、微動だにしないまま話に耳を傾けていた。


 そして、ひと通り事の顛末てんまつを語り終えた後の反応が、紫苑の一言だった。


「そのゲームを受けた結果、刻印をされたんですね?」
「はい…」


 実が蓮の言葉に頷いた時、尚希が我慢の限界というように実の両肩をがっしりと掴んだ。


「この馬鹿!! なんで、そんな勝手なことをしたんだ!?」


 怒鳴る尚希の目には、明らかな非難の色が浮かんでいる。


「なんでって……仕方ないでしょう! 拓也の命が懸かってるんですよ!?」


 尚希に向けられる視線に神経を逆なでされて、実は思わず怒鳴り返していた。


「断れば、すぐにでも拓也の魂を狩られてました。一刻のゆうもなかったんです。拓也を見捨てて、ゲームを断ればよかったって言うんですか!?」


 もしもあの場で自分がゲームを拒めば、下手すれば拓也はもう死んでいたかもしれない。


 誰の助言も得られないあの場で、拓也の可能性の生か絶対の死かを選ばされたのだ。
 誰が好き好んで、友人の死を選ぶというのか。


 あの時の自分と同じ状況に尚希が立たされたなら、彼だって絶対に自分と同じ選択をしただろう。


 尚希には、こちらを責められないはずだ。


 尚希もそれを分かっているのだろう。
 悔しげに唇を噛み締めた彼は、それ以上怒号を浴びせることはしなかった。


「今は、悔いても仕方ないですね。」


 蓮は溜め息混じりにそう言って、机の下からあらかじめ持ってきていた巻物を取り出した。


 遥かな年代を感じさせる古い巻物だ。
 巻物を机の上に置いた蓮は、静かにそれを広げた。


「あっ」


 実と尚希が声をあげる。


 その巻物には、実の胸に刻まれた刻印と全く同じ紋様が描かれていた。


「僕たちの家は、古くからこの死神と戦ってきました。天命による死で還る命ではなく、まだ生きるべき輝きを宿した命をこの死神は好みます。死神による被害に対抗するために立ち上がった術者たちの家系……その一つが、この九条家です。」


 なるほど。
 だから、死神祓いという単語がネットに書かれたわけか。


 蓮の説明を聞いて納得すると同時に、自分の引きのよさに感心してしまった。


「最近ではうわさも聞かなくなりましたが、最盛期には一日に何人もの人が死神祓いのためにここを訪れていたそうです。先祖の目的はその死神の滅却でしたが、人々が死神を強く信仰してひどく恐れていた時代では、巨大な力を持つ死神を相手に最終的な目的は叶いませんでした。」


 始めに言われたのは、なかなかに厳しい結果。
 しかし、落胆しかけた実たちを否定するように、蓮がそこで首を横に振る。


「しかし、長い歳月の中で、この刻印を消す儀式を生み出すことには成功しています。本来なら、実君にもその儀式を受けてもらいたいところですが、この儀式は今のところ僕の父にしかできない上に、お友達の命が懸かっているのであれば、強制はできません。」


 蓮は、淡々とそう述べた。


「こちらに訪ねてきたのも何かの縁でしょう。できうる限りの協力をします。」


 蓮の手がパーカーのポケットに入る。
 そこから出てきたのは、墨で文字や記号が書かれた何枚かの古びた紙だった。


「ここで使っている護符です。何かあった時に使ってください。随分昔のものだし、あなたたちからすると気休めのようにしか感じないかもしれません。ですが、持っていた方がいいかと思います。それと、何かあった時のために連絡先を教えてもらえますか?」


 その後、お互いの連絡先を交換し合って、この日は帰ることになった。


 護符は、ありがたくもらっておくことにした。


 何があるかは分からないし、相手が地球由来の存在である以上、どこまでアズバドルの力が通じるかも予想できなかったからだ。


 情報としては大した収穫はなかったが、緊急時に頼るところが見つかったのは大きな結果だろう。


 少なくともこの時、実と尚希はこの進展に心なしか安堵していた。




 しかし……



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