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第6章 別れの時
拓也の気がかり
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尚希の表情の変化を認めながら、拓也は自分の内にくすぶっている疑念を口にする。
「昨日から、姿を見せてないよな。尚希は一度家に戻ってるって言ってたけど……おれ、違うと思うんだよ。だって、おかしいんだ。おれの中で禁忌の反動を食い止めている実の力が、だんだんと弱ってる。反動の勢力にじわじわ負けてるっていうより、実自身の力が弱ってるんだ。家に戻ってるだけなら、これはおかしいんじゃないか?」
自分の中で奮闘する実の力が、徐々に弱ってきている。
これが、大きな気がかりだった。
変に律儀というか潔癖症というか、実は一度やると決めたことには手を抜かない。
その姿勢は、魔法に対しても然りだ。
自分を助ける時間を稼ぐために、実は自分自身の命を削りかねないほどの魔力を費やしている。
そんな実が、途中で投げ出すわけがないのだ。
自惚れでもなんでもなく、それは疑いようのない事実。
助けられないと分かりきっているなら、実はきっと最初から助けない。
実が自分を助けようとしているのは、自分が友達である以前に、自分が助かると確信しているからだ。
実なら、絶対に最後までやりきる。
それなのに……実の力が弱くなっていくこの現実はなんだ?
原因として考えられるのは、実が諦めたか、実の身に危険が及んだかの二つ。
前者がありえない以上、残る可能性は一つだけだ。
「実は、どこで何をしてるんだ?」
拓也は尚希に厳しく問う。
あんな見え透いた嘘をついて、実の話題に触れた瞬間にあんな表情をするくらいだ。
何も知らないはずがないだろう。
尚希は目を閉じて、首を横に振る。
だがその寸前、彼の瞳に動揺が走ったのを見逃さなかった。
「知らない。」
「キース!!」
どこか気まずげに顔を逸らした尚希に、拓也は勢いよく詰め寄る。
「お前、おれの嗅覚を忘れたか!? それが嘘だってのは、においで分かってんだぞ!! どうせ実に口止めでもされてるんだろうけど、今は律儀にそれを守ってる場合か!? 実が危ないかもしれないんだぞ!?」
「危ないのは、お前だって一緒だ。」
「はあっ!? 実よりも、おれの方が危ないって言いたいのか? だったらなおさら、実の心配をすべきだろ! 実が弱ればその分、おれだって禁忌の反動にやられるんだから。」
「実は、お前が死なない限り死なないよ。」
「そんな保証がどこにある!? あいつは、自分の限界なんて微塵も考えずに突っ走るアホだぞ!? それは、キースだって分かってるはずじゃねぇか! 実のことはどうでもいいっていうのかよ!?」
「実の居場所は、本当に知らないんだ!!」
耐えかねたように尚希が叫ぶ。
その叫びに含まれた悲痛な響きに、拓也は用意していた罵声を思わず引っ込めた。
戸惑う拓也の前で、尚希は心底つらそうに言葉を絞り出す。
「それどころか、実が今どんな状況にあるのかすら……オレにも分からないんだよ。オレだって、いっそのこと全部話してしまいたいさ。だけど……そんなことすれば、余計に実の命が危なくなるんだ! どうしようもないんだよ!!」
「なっ…!?」
拓也は言葉を失う。
よくは分からないが、実が危機的状況にあるのは間違いないようだ。
しかも、何か詳細を話せない事情があるらしい。
「オレには……どうすることも、できないんだよ。………くそ…っ」
自虐的に呟きながら、尚希は自分の無力さを呪う。
そう。
自分には何もできない。
結末がどうなるか。
それは全て、拓也の判断に左右される。
自分としては、全てを拓也に打ち明け、実を助けるために魔法を解除してもらいたい。
しかし……
拓也の背後で揺れる黒い影が、視界の端にちらつく。
あれが拓也に憑いている限り、それはできないのだ。
拓也を守るために、実が自らの命を賭けに差し出したのだ。
自分がそれを無駄にすることなど、できるわけがないじゃないか。
結局……自分は、見ているしかないのだ。
事情を知っていても所詮は部外者でしかなく、事の顛末をただ傍観することしかできない。
それは自分にとって、限りなく絶望に近い苦痛だった。
本当にやりきれない。
どうしていつも、自分の気付かないところで、事態は進退窮まるところまで悪化しているのだろう。
自分が普段からもっと拓也に注意を向けて、早く異変に気付いていれば、拓也がここまで追い詰められることもなかったかもしれない。
実が命を賭けに差し出すことにもならなかったかもしれない。
この状況に、尚希は歯噛みするしかなかった。
「昨日から、姿を見せてないよな。尚希は一度家に戻ってるって言ってたけど……おれ、違うと思うんだよ。だって、おかしいんだ。おれの中で禁忌の反動を食い止めている実の力が、だんだんと弱ってる。反動の勢力にじわじわ負けてるっていうより、実自身の力が弱ってるんだ。家に戻ってるだけなら、これはおかしいんじゃないか?」
自分の中で奮闘する実の力が、徐々に弱ってきている。
これが、大きな気がかりだった。
変に律儀というか潔癖症というか、実は一度やると決めたことには手を抜かない。
その姿勢は、魔法に対しても然りだ。
自分を助ける時間を稼ぐために、実は自分自身の命を削りかねないほどの魔力を費やしている。
そんな実が、途中で投げ出すわけがないのだ。
自惚れでもなんでもなく、それは疑いようのない事実。
助けられないと分かりきっているなら、実はきっと最初から助けない。
実が自分を助けようとしているのは、自分が友達である以前に、自分が助かると確信しているからだ。
実なら、絶対に最後までやりきる。
それなのに……実の力が弱くなっていくこの現実はなんだ?
原因として考えられるのは、実が諦めたか、実の身に危険が及んだかの二つ。
前者がありえない以上、残る可能性は一つだけだ。
「実は、どこで何をしてるんだ?」
拓也は尚希に厳しく問う。
あんな見え透いた嘘をついて、実の話題に触れた瞬間にあんな表情をするくらいだ。
何も知らないはずがないだろう。
尚希は目を閉じて、首を横に振る。
だがその寸前、彼の瞳に動揺が走ったのを見逃さなかった。
「知らない。」
「キース!!」
どこか気まずげに顔を逸らした尚希に、拓也は勢いよく詰め寄る。
「お前、おれの嗅覚を忘れたか!? それが嘘だってのは、においで分かってんだぞ!! どうせ実に口止めでもされてるんだろうけど、今は律儀にそれを守ってる場合か!? 実が危ないかもしれないんだぞ!?」
「危ないのは、お前だって一緒だ。」
「はあっ!? 実よりも、おれの方が危ないって言いたいのか? だったらなおさら、実の心配をすべきだろ! 実が弱ればその分、おれだって禁忌の反動にやられるんだから。」
「実は、お前が死なない限り死なないよ。」
「そんな保証がどこにある!? あいつは、自分の限界なんて微塵も考えずに突っ走るアホだぞ!? それは、キースだって分かってるはずじゃねぇか! 実のことはどうでもいいっていうのかよ!?」
「実の居場所は、本当に知らないんだ!!」
耐えかねたように尚希が叫ぶ。
その叫びに含まれた悲痛な響きに、拓也は用意していた罵声を思わず引っ込めた。
戸惑う拓也の前で、尚希は心底つらそうに言葉を絞り出す。
「それどころか、実が今どんな状況にあるのかすら……オレにも分からないんだよ。オレだって、いっそのこと全部話してしまいたいさ。だけど……そんなことすれば、余計に実の命が危なくなるんだ! どうしようもないんだよ!!」
「なっ…!?」
拓也は言葉を失う。
よくは分からないが、実が危機的状況にあるのは間違いないようだ。
しかも、何か詳細を話せない事情があるらしい。
「オレには……どうすることも、できないんだよ。………くそ…っ」
自虐的に呟きながら、尚希は自分の無力さを呪う。
そう。
自分には何もできない。
結末がどうなるか。
それは全て、拓也の判断に左右される。
自分としては、全てを拓也に打ち明け、実を助けるために魔法を解除してもらいたい。
しかし……
拓也の背後で揺れる黒い影が、視界の端にちらつく。
あれが拓也に憑いている限り、それはできないのだ。
拓也を守るために、実が自らの命を賭けに差し出したのだ。
自分がそれを無駄にすることなど、できるわけがないじゃないか。
結局……自分は、見ているしかないのだ。
事情を知っていても所詮は部外者でしかなく、事の顛末をただ傍観することしかできない。
それは自分にとって、限りなく絶望に近い苦痛だった。
本当にやりきれない。
どうしていつも、自分の気付かないところで、事態は進退窮まるところまで悪化しているのだろう。
自分が普段からもっと拓也に注意を向けて、早く異変に気付いていれば、拓也がここまで追い詰められることもなかったかもしれない。
実が命を賭けに差し出すことにもならなかったかもしれない。
この状況に、尚希は歯噛みするしかなかった。
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