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第2章 失踪
変わったのか、変わっていないのか……
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それから、あっという間に四日が過ぎた。
華奈美は病欠ということになっていて、今のところ事件とは無関係だと認識されている。
そう仕向けるのに実が奔走したのは、言うまでもない。
この四日、実は徹底的に学園とその周辺を調べた。
だが、得られるのはくだらない情報ばかりで、事件の核心に触れるような有力情報は得られずじまいだった。
それどころか、実が毎日探っているにも関わらず、被害者は増え続ける一方。
今や、行方不明者は十四人になっていた。
「……はぁ。」
帰りのホームルームが終わり、実は疲弊しきったように深く息をついた。
さて、今日はどの方面から調べるか……
頭の中は、すでにその事しかない。
そろそろ、考えられる可能性も少なくなってきている。
このまま何も手がかりも得られないと、近いうちに手詰まりになってしまうだろう。
毎日頭と体を使いまくって疲れが溜まったせいか、最近は授業にあまり集中できずにいた。
「よっ、実。」
欠伸をしながら教室を出ると、廊下で晴人が待っていた。
「なんか、今日は朝から眠そうだなぁ。」
実を見て、晴人はからかうような顔で笑う。
「なになに? 何か、いけないことでもしてるの?」
「ちげーよ、馬鹿。」
バンバンと肩を叩いてくる晴人を、実は横目に睨む。
誰のために動いていると思っているんだ。
そう思いはしたが、晴人の記憶は自分が改ざんしてしまっているので、不満を口に出して言えるはずもなく……
「で? なんの用?」
「あら…。冷たいなぁ、実君。」
おどけた仕草で、晴人は両頬に手を当てる。
「寝不足でも、八つ当たりはダメよー。」
「……いっぺん死んでこい。」
イライラしてそう言うと、晴人は声をあげて笑った。
「あははっ、冗談冗談。オレにはすぐに棘を返すところは、やっぱり変わらないな。」
言われて、実は口をへの字に曲げる。
幼い頃から一緒にいたというだけあって、確かに晴人にはすぐにこんな口を利いていた気がする。
互いに互いの性格は十二分に知っているという気持ちが、そういう態度に繋がるのかもしれない。
そんな晴人に変わらないと言われると、なんとも言えない気分になる。
性格は変わったと、晴人は言う。
魔力や記憶の封印を解いてから一年が経とうとしている今、それも当たり前のこと。
しかも、桜理の一件から、自分がどちらなのか分からないという状態だ。
そんな中で、性格が変わったように見えるのは致し方ないことだろう。
なのに、晴人はふとした拍子に昔と変わらないとも言う。
変わってしまったはずの自分に、そう言って笑いかけてくるのだ。
だからか、時々考える。
―――昔と今、何が違って何が同じなのか、と。
一見して明らかに違うのに、そう疑問に思ってしまう心を止められない。
そして、それを考えると、自分という存在がひどく危うく思えて……
「実?」
「え?」
呼ばれて視線を移すと、晴人が不思議そうにこちらを見ていた。
「どしたの? 難しい顔で黙り込んじゃって。」
その言葉で、自分の意識があらぬ方向に飛んでいたことを知る。
「いや、なんでもない。」
「ふーん、そっか。」
晴人は、大して気にした風でもなくそう言うだけだった。
「で、何?」
これ以上妙な態度を取って何か勘付かれても困るので、実は話を本筋に戻した。
「あ、えっと……今日って、実、暇?」
「いや。今日はこの後、やることが腐るほどある。」
即で答えると、晴人は少し残念そうに肩を落とした。
「そっかぁ…。用事があるんじゃ仕方ないな。」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。ちょっと付き合ってくれたらなぁって思うことがあったんだけど、オレだけでも十分と言えば十分だし。気にしないで。」
「ふーん。」
特に深刻そうな雰囲気もなかったので、実は些事と判断して話を流す。
そこで、晴人がふと目を伏せた。
「それにしても、華奈美長いな…。メッセージは返ってくるんだけど、電話までする元気はないって言われて…。土日を挟んでも治らないのか。」
「……そうだね。確かに長いね。」
頬がひきつりそうになるのを、なんとかこらえる実。
「まあ、風邪の治りなんて人それぞれだから。」
「それは分かるんだけどさ。華奈美って滅多に体調を崩さないから、結構心配なんだよね。ちょっと、様子を見に行こうかな……」
「ちょっと待って。分かったから。」
もしかして、付き合ってほしいこととはこのことか。
痛む頭に手を当て、実は晴人を制する。
「今日は付き合えないけど、明日は付き合うよ。明日も月宮が休みだったら、一緒に見舞いにでも行こう。急に家に押しかけたって、月宮が話せる状況とは限らないだろ。今日はメッセージで、それとなく様子を聞いといて。」
突然華奈美の家に行かれては、全然細工ができないじゃないか。
苦し紛れの時間稼ぎではあったが、こちらの提案に晴人はパッと顔を輝かせた。
「さっすが実! そう言ってくれると思ったよ! 大好きだーっ―――ぐほっ…」
感激して両手を広げて飛びかかってきた晴人の腹に、実の拳が命中する。
「そこから先は許さん。気持ち悪いからやめろ。」
「いてて……ひでーなー。優しいんだか優しくないんだか分かんねーよ、そんなんじゃあ。」
「別に、どう思われても構わないよ。」
腕を組んでつんと顔を背ける実。
にべもない実の態度に、晴人が少しむっとしたような表情を見せた。
「こんのー……ひねくれ坊主!」
「わっ!?」
晴人の指が脇腹をつんとつついてきて、実は思わず飛び上がってしまう。
「まあ~た引っ掛かった。オレもそうだけど、どっかの誰かさんも学習能力がないよなぁ?」
「この…っ」
してやったりと笑う晴人に、実は眉根に力を込める。
それで満足したのか、晴人は上機嫌で実から離れていった。
その途中、ふと晴人は実の方を振り向く。
「素直じゃなくなったな、お前。優しくてお人好しなのは変わらないくせにさぁ。損しかしないぞー? ま、オレはからかいがいが増して、面白いけどさー♪」
足取りも軽く、上機嫌で晴人は実に手を振る。
―――ブツンッ
実の中で、何かが切れた。
「いっぺんマジで死んでこい! この馬鹿晴人ーっ!!」
お決まりのセリフが、校舎に響き渡った。
華奈美は病欠ということになっていて、今のところ事件とは無関係だと認識されている。
そう仕向けるのに実が奔走したのは、言うまでもない。
この四日、実は徹底的に学園とその周辺を調べた。
だが、得られるのはくだらない情報ばかりで、事件の核心に触れるような有力情報は得られずじまいだった。
それどころか、実が毎日探っているにも関わらず、被害者は増え続ける一方。
今や、行方不明者は十四人になっていた。
「……はぁ。」
帰りのホームルームが終わり、実は疲弊しきったように深く息をついた。
さて、今日はどの方面から調べるか……
頭の中は、すでにその事しかない。
そろそろ、考えられる可能性も少なくなってきている。
このまま何も手がかりも得られないと、近いうちに手詰まりになってしまうだろう。
毎日頭と体を使いまくって疲れが溜まったせいか、最近は授業にあまり集中できずにいた。
「よっ、実。」
欠伸をしながら教室を出ると、廊下で晴人が待っていた。
「なんか、今日は朝から眠そうだなぁ。」
実を見て、晴人はからかうような顔で笑う。
「なになに? 何か、いけないことでもしてるの?」
「ちげーよ、馬鹿。」
バンバンと肩を叩いてくる晴人を、実は横目に睨む。
誰のために動いていると思っているんだ。
そう思いはしたが、晴人の記憶は自分が改ざんしてしまっているので、不満を口に出して言えるはずもなく……
「で? なんの用?」
「あら…。冷たいなぁ、実君。」
おどけた仕草で、晴人は両頬に手を当てる。
「寝不足でも、八つ当たりはダメよー。」
「……いっぺん死んでこい。」
イライラしてそう言うと、晴人は声をあげて笑った。
「あははっ、冗談冗談。オレにはすぐに棘を返すところは、やっぱり変わらないな。」
言われて、実は口をへの字に曲げる。
幼い頃から一緒にいたというだけあって、確かに晴人にはすぐにこんな口を利いていた気がする。
互いに互いの性格は十二分に知っているという気持ちが、そういう態度に繋がるのかもしれない。
そんな晴人に変わらないと言われると、なんとも言えない気分になる。
性格は変わったと、晴人は言う。
魔力や記憶の封印を解いてから一年が経とうとしている今、それも当たり前のこと。
しかも、桜理の一件から、自分がどちらなのか分からないという状態だ。
そんな中で、性格が変わったように見えるのは致し方ないことだろう。
なのに、晴人はふとした拍子に昔と変わらないとも言う。
変わってしまったはずの自分に、そう言って笑いかけてくるのだ。
だからか、時々考える。
―――昔と今、何が違って何が同じなのか、と。
一見して明らかに違うのに、そう疑問に思ってしまう心を止められない。
そして、それを考えると、自分という存在がひどく危うく思えて……
「実?」
「え?」
呼ばれて視線を移すと、晴人が不思議そうにこちらを見ていた。
「どしたの? 難しい顔で黙り込んじゃって。」
その言葉で、自分の意識があらぬ方向に飛んでいたことを知る。
「いや、なんでもない。」
「ふーん、そっか。」
晴人は、大して気にした風でもなくそう言うだけだった。
「で、何?」
これ以上妙な態度を取って何か勘付かれても困るので、実は話を本筋に戻した。
「あ、えっと……今日って、実、暇?」
「いや。今日はこの後、やることが腐るほどある。」
即で答えると、晴人は少し残念そうに肩を落とした。
「そっかぁ…。用事があるんじゃ仕方ないな。」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。ちょっと付き合ってくれたらなぁって思うことがあったんだけど、オレだけでも十分と言えば十分だし。気にしないで。」
「ふーん。」
特に深刻そうな雰囲気もなかったので、実は些事と判断して話を流す。
そこで、晴人がふと目を伏せた。
「それにしても、華奈美長いな…。メッセージは返ってくるんだけど、電話までする元気はないって言われて…。土日を挟んでも治らないのか。」
「……そうだね。確かに長いね。」
頬がひきつりそうになるのを、なんとかこらえる実。
「まあ、風邪の治りなんて人それぞれだから。」
「それは分かるんだけどさ。華奈美って滅多に体調を崩さないから、結構心配なんだよね。ちょっと、様子を見に行こうかな……」
「ちょっと待って。分かったから。」
もしかして、付き合ってほしいこととはこのことか。
痛む頭に手を当て、実は晴人を制する。
「今日は付き合えないけど、明日は付き合うよ。明日も月宮が休みだったら、一緒に見舞いにでも行こう。急に家に押しかけたって、月宮が話せる状況とは限らないだろ。今日はメッセージで、それとなく様子を聞いといて。」
突然華奈美の家に行かれては、全然細工ができないじゃないか。
苦し紛れの時間稼ぎではあったが、こちらの提案に晴人はパッと顔を輝かせた。
「さっすが実! そう言ってくれると思ったよ! 大好きだーっ―――ぐほっ…」
感激して両手を広げて飛びかかってきた晴人の腹に、実の拳が命中する。
「そこから先は許さん。気持ち悪いからやめろ。」
「いてて……ひでーなー。優しいんだか優しくないんだか分かんねーよ、そんなんじゃあ。」
「別に、どう思われても構わないよ。」
腕を組んでつんと顔を背ける実。
にべもない実の態度に、晴人が少しむっとしたような表情を見せた。
「こんのー……ひねくれ坊主!」
「わっ!?」
晴人の指が脇腹をつんとつついてきて、実は思わず飛び上がってしまう。
「まあ~た引っ掛かった。オレもそうだけど、どっかの誰かさんも学習能力がないよなぁ?」
「この…っ」
してやったりと笑う晴人に、実は眉根に力を込める。
それで満足したのか、晴人は上機嫌で実から離れていった。
その途中、ふと晴人は実の方を振り向く。
「素直じゃなくなったな、お前。優しくてお人好しなのは変わらないくせにさぁ。損しかしないぞー? ま、オレはからかいがいが増して、面白いけどさー♪」
足取りも軽く、上機嫌で晴人は実に手を振る。
―――ブツンッ
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「いっぺんマジで死んでこい! この馬鹿晴人ーっ!!」
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