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第4章 異世界の仕組み
世界と世界の境目
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少し森に分け入ると、屋敷はあっという間にその姿を消してしまう。
それに構わず、実は迷いなく歩を進めた。
しかし、ただついてきただけの晴人はかなり不安なようだ。
落ち着きがない様子でしきりに辺りを気にする挙動に、その不安が大いに表れていた。
「なあ……どこに行くんだ?」
「………」
晴人が訊ねるも、実は黙して足を機械的に動かすだけ。
それはまるで、晴人などいないかのような態度だった。
晴人はむっとしながらも、一度は口を閉ざす。
しかし、重苦しい空気に耐え続けるには、今の精神状況では無理があった。
「実…」
再度背中に呼びかけてみるが、やはり返事はない。
「実ってば。」
「………」
「―――っ」
晴人は表情を険しくする。
「みの――………っ!?」
感情に任せて怒鳴ろうとした晴人の言葉は、急に立ち止まった実が晴人を阻むように出した手によって遮られた。
「実…?」
「しっ」
この時になって、実は初めて晴人にまともな反応を示した。
「静かに。人の気配が近い。」
「え…?」
そう言われて、晴人は周りを見渡す。
しかし、周囲には深い森が広がるばかりで人の姿など見えない。
「さっきからずっとコレを追ってたんだけど……奴ら、この辺りで動きを止めそうだ。」
「?」
実が何を言ってるのか、晴人にはさっぱり分からない。
そんな晴人を後目に、実はまた歩き出す。
ほどなくして、少し開けた場所に出た。
「……ここっぽいな。」
実は一人で呟いて、思案げにその周辺の木を見て回った。
そしてまた、木々の密集地帯へと入っていく。
実の行動の不可解さに唖然と立ち尽くしていた晴人は、実が下草を踏む乾いた音にハッとして、急ぎ足でその後を追った。
実が消えた先に向かうと、実は一本の木の下に。
「実……お前、さっきから何してるわけ?」
理解不能だと、その目が訴えている。
「まあ、色々とね。」
実は、ざっくりとした答えを返すだけ。
森には、すでに何人かの気配があった。
途中まではそれを追って、先ほどからはその気配が向かうであろう場所を予測してここまで来たわけだ。
ずっと晴人を無視していたのは、感じられる気配が微かで、少しでも意識を逸らせば気配を追うことができなくなりそうだったから。
実はすぐ側の木を見上げる。
高さも枝のつき方もちょうどいい。
「よっと。」
実は手近の枝に手をかけると、一気に体を浮かせて枝に乗った。
突然の行動に目を丸くする晴人に、実は手を伸ばす。
「何やってんの? お前も来いって。」
「え? ……なんで?」
晴人は流れについていけず、棒立ちになって実を見る。
「いいから。理由なら、すぐに分かる。」
実が手を伸ばしたまま促すと、晴人は困惑しながらもその手を取った。
実が晴人の手を引っ張り、その力を利用して晴人も木に登る。
「よし、この辺でいいかな。」
数本の枝を登ったところで、実は幹に手をついて一息。
「晴人、あそこ見て。」
「え?」
少し遅れて実の隣に立った晴人は、実に言われてその指が示す方向を見た。
先ほど一瞬だけ立ち寄った開けた空間。
そこが、葉の隙間からよく見えている。
遠すぎず近すぎない距離のここは、まるで計算したのかと思うくらいに見晴らしがよかった。
「そろそろ来るよ。」
「え? 誰が……あっ!!」
晴人が声をあげた。
実が言ったすぐ後、何人かの人々が視線の先に現れたのだ。
黒い外套を、フードまですっぽりと被った人々。
間違いない。
彼らだ。
「晴人。返したケータイ、持ってる?」
実は自分の携帯電話を見ながら、晴人にそう訊いた。
唐突な問いに一瞬固まりつつも、晴人はズボンのポケットに手を突っ込む。
「えっと……確か、いつもの癖でポケットに……あった。」
晴人の手には、メタリックブルーの携帯電話。
実はそれを確認し、また彼らの方へ視線を戻した。
「空間が、歪んできてる。」
呟いた実に、晴人も同じ方を向く。
彼らは、そこに立っているだけだった。
怪しい素振りを見せない彼らは、そこで何かを待っているようにも見える。
何もないままに、時間だけが過ぎる。
だが、隠しても隠しきれない空気の揺らぎが、この後確実に異変が起こることを実に知らせていた。
そして数十秒後、変化は唐突に訪れる。
ぐにゃり、と。
彼らが立つ前の空間が、ふいに歪んだのだ。
次に、ばっくりと空間が縦に裂ける。
そこから現れたのは、一つの扉だった。
「あれが境目か……」
実はまた、携帯電話に目を落とす。
「五時五十九分。」
その言葉に、晴人も携帯電話を見る。
「………十、九…」
静かに、カウントダウンを始める実。
「八…七……」
晴人からは理解できない、異常な状況に響くカウント。
「六…五…四…」
晴人が、無意識に携帯電話を握り締める。
携帯電話の画面に映るデジタル時計が、一秒ごとに時を刻む。
「三…」
時間は進む。
「二…」
膨れ上がる晴人の緊張と、対照的に冷静な実の声。
「一…」
もう、カウントが終わる。
時計が―――六時を示した。
それに構わず、実は迷いなく歩を進めた。
しかし、ただついてきただけの晴人はかなり不安なようだ。
落ち着きがない様子でしきりに辺りを気にする挙動に、その不安が大いに表れていた。
「なあ……どこに行くんだ?」
「………」
晴人が訊ねるも、実は黙して足を機械的に動かすだけ。
それはまるで、晴人などいないかのような態度だった。
晴人はむっとしながらも、一度は口を閉ざす。
しかし、重苦しい空気に耐え続けるには、今の精神状況では無理があった。
「実…」
再度背中に呼びかけてみるが、やはり返事はない。
「実ってば。」
「………」
「―――っ」
晴人は表情を険しくする。
「みの――………っ!?」
感情に任せて怒鳴ろうとした晴人の言葉は、急に立ち止まった実が晴人を阻むように出した手によって遮られた。
「実…?」
「しっ」
この時になって、実は初めて晴人にまともな反応を示した。
「静かに。人の気配が近い。」
「え…?」
そう言われて、晴人は周りを見渡す。
しかし、周囲には深い森が広がるばかりで人の姿など見えない。
「さっきからずっとコレを追ってたんだけど……奴ら、この辺りで動きを止めそうだ。」
「?」
実が何を言ってるのか、晴人にはさっぱり分からない。
そんな晴人を後目に、実はまた歩き出す。
ほどなくして、少し開けた場所に出た。
「……ここっぽいな。」
実は一人で呟いて、思案げにその周辺の木を見て回った。
そしてまた、木々の密集地帯へと入っていく。
実の行動の不可解さに唖然と立ち尽くしていた晴人は、実が下草を踏む乾いた音にハッとして、急ぎ足でその後を追った。
実が消えた先に向かうと、実は一本の木の下に。
「実……お前、さっきから何してるわけ?」
理解不能だと、その目が訴えている。
「まあ、色々とね。」
実は、ざっくりとした答えを返すだけ。
森には、すでに何人かの気配があった。
途中まではそれを追って、先ほどからはその気配が向かうであろう場所を予測してここまで来たわけだ。
ずっと晴人を無視していたのは、感じられる気配が微かで、少しでも意識を逸らせば気配を追うことができなくなりそうだったから。
実はすぐ側の木を見上げる。
高さも枝のつき方もちょうどいい。
「よっと。」
実は手近の枝に手をかけると、一気に体を浮かせて枝に乗った。
突然の行動に目を丸くする晴人に、実は手を伸ばす。
「何やってんの? お前も来いって。」
「え? ……なんで?」
晴人は流れについていけず、棒立ちになって実を見る。
「いいから。理由なら、すぐに分かる。」
実が手を伸ばしたまま促すと、晴人は困惑しながらもその手を取った。
実が晴人の手を引っ張り、その力を利用して晴人も木に登る。
「よし、この辺でいいかな。」
数本の枝を登ったところで、実は幹に手をついて一息。
「晴人、あそこ見て。」
「え?」
少し遅れて実の隣に立った晴人は、実に言われてその指が示す方向を見た。
先ほど一瞬だけ立ち寄った開けた空間。
そこが、葉の隙間からよく見えている。
遠すぎず近すぎない距離のここは、まるで計算したのかと思うくらいに見晴らしがよかった。
「そろそろ来るよ。」
「え? 誰が……あっ!!」
晴人が声をあげた。
実が言ったすぐ後、何人かの人々が視線の先に現れたのだ。
黒い外套を、フードまですっぽりと被った人々。
間違いない。
彼らだ。
「晴人。返したケータイ、持ってる?」
実は自分の携帯電話を見ながら、晴人にそう訊いた。
唐突な問いに一瞬固まりつつも、晴人はズボンのポケットに手を突っ込む。
「えっと……確か、いつもの癖でポケットに……あった。」
晴人の手には、メタリックブルーの携帯電話。
実はそれを確認し、また彼らの方へ視線を戻した。
「空間が、歪んできてる。」
呟いた実に、晴人も同じ方を向く。
彼らは、そこに立っているだけだった。
怪しい素振りを見せない彼らは、そこで何かを待っているようにも見える。
何もないままに、時間だけが過ぎる。
だが、隠しても隠しきれない空気の揺らぎが、この後確実に異変が起こることを実に知らせていた。
そして数十秒後、変化は唐突に訪れる。
ぐにゃり、と。
彼らが立つ前の空間が、ふいに歪んだのだ。
次に、ばっくりと空間が縦に裂ける。
そこから現れたのは、一つの扉だった。
「あれが境目か……」
実はまた、携帯電話に目を落とす。
「五時五十九分。」
その言葉に、晴人も携帯電話を見る。
「………十、九…」
静かに、カウントダウンを始める実。
「八…七……」
晴人からは理解できない、異常な状況に響くカウント。
「六…五…四…」
晴人が、無意識に携帯電話を握り締める。
携帯電話の画面に映るデジタル時計が、一秒ごとに時を刻む。
「三…」
時間は進む。
「二…」
膨れ上がる晴人の緊張と、対照的に冷静な実の声。
「一…」
もう、カウントが終わる。
時計が―――六時を示した。
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