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第5章 迎え
命名までの経緯
しおりを挟む「……は? 名前?」
その話を切り出した時、実は目を丸くして間の抜けた声を出した。
予期していなかった話題によほど驚いたのか、その先の言葉がしばらく続かなかったくらいだ。
「……そんなの、ポチでもシロでもなんでもいいじゃん。」
「やだよー。そんなテキトーなの。」
不満を言うと、実はいかにも面倒そうな渋い顔をした。
「だったら、親か家の人たちにつけてもらえば?」
「嫌だ。実につけてもらうって決めてたんだもん。」
「なんで…?」
「ぼくが一番に心を許した人だからね。」
「はあ…? そんな……」
実は二の句も告げないようだった。
しばらくこちらを見つめていた実は、やがて盛大な溜め息を吐き出す。
「やだ。」
「えーっ!!」
「無理だって!」
実は、ぶんぶんと首を振った。
「お前な! 名前ってのは、一生ついて回るんだよ? そんな大事なことを俺に任せないでよ!」
「大事だからこそ、実に頼んでるんじゃん!」
「うっ…」
間髪入れずに言い返すと、そこで実が言葉につまる。
すでにこの時点で実が相当なお人好しであることを知っていた自分は、さらに食い下がった。
「お願いだよ。こんなこと、実にしか頼めないんだって。もう母さんにも言ってあるし、みんなも楽しみにして待ってるんだから。」
「おまっ……なんで、肝心の俺には事後承諾なんだよ!?」
そりゃもちろん、こうすれば実が断れないと分かっているからだ。
そう思ったが、素直にそれを言えば、実が途端に頼みを引き受けてくれなくなるのは目に見えている。
だからそこは、ただ黙って流すことにする。
「………っ」
参ったと言わんばかりに髪を掻き回す実。
やはり目論見どおりだ。
期待を込めてその様子を見つめていると―――
「……大した名前はつけられないからね。」
小さな吐息と共に、実はそう言って抵抗することを諦めた。
ここまで言わせれば、自分の勝ちである。
「わーい! ちゃんと、ドラゴンにちなんだ名前にしてね。」
「はっ!? 注文まであるの!?」
実はとんでもないというような表情をしたが、これは当時名前がなかった自分にとって、どうしても譲れないことだった。
自分は、ドラゴンの姿で生まれてきたことに並々ならぬ誇りを抱いていた。
この姿に恥じぬような守護獣になりたいと思っているし、そのためにも自分を奮起させるような名が欲しかったのだ。
一歩も引く気はないと目で訴えると、実は非常に弱った顔をしながらも、静かに目を閉じた。
身動きしなくなった実は、その頭の中にある膨大な知識から、ヒントになりそうな情報を探しているのだろう。
「………」
実の沈黙は長かった。
待っている間に、期待と不安がどんどん大きくなっていく。
「―――じゃあ、ドラード。」
長考の末、実は一つの名前を口にした。
そして、それが今後自分が名乗っていく名前になるのだった。
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