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第2章 無限の力
たった一人での帰還
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桜が、はらはらと散っている。
いつの間にかそこにいた自分は、その景色をただぼうっと見つめていた。
(私は……)
今まで、何をしていたんだっけ?
どうしてこんな所にいるんだろう。
「………」
思考が働かない。
あるのは、乗り物酔いでもしたかのような酩酊感と、微かな気持ち悪さ。
それと、目の前で舞い散る桜の花びら。
(帰らなきゃ……)
でも、どこへ?
分からない。
分からないのに、帰らなきゃいけないと何かが訴えてくる。
その何かに急かされた体が、のろのろと動き出した。
ゆっくりと立ち上がって、覚束ない足取りで桜の吹雪の中を進む。
なんだか、自分の体が自分の体じゃないみたいだ。
意識に関係なく体が勝手に動いているような、不思議な心地。
しばらく歩くと、遠くに真っ白な建物が見えた。
なんとなく、見覚えがある気がする。
自分の体は、まっすぐにそこに向かっていた。
「桜理様!?」
建物の前に立っていた誰かが、自分を見てそう叫んだ。
それを境に、静かだった建物の中が一気に騒がしくなった。
誰もが口々に、一つの名を呼んでいた。
「桜理様!」
建物の中から飛び出してきた人が、自分の肩を優しく掴んだ。
ゆっくりと顔を上げれば、髪を高い位置でまとめた女の人が心配そうにこちらを見ていた。
この人にも、見覚えがあると思う。
「桜理様、お怪我はありませんか?」
「………」
頭が痛い。
答えないと、余計に心配させてしまう。
でも、答えられない。
答えたくない。
「桜理!」
今度は女の子の声がして、腰に温かいものがぶつかった。
そちらを見下ろすと、小さな女の子が自分に抱きついていた。
その大きな瞳が、茫然とした自分の姿を綺麗に映し出している。
体が動くままに膝をついて、女の子を抱き締める。
一方の女の子は、不思議そうに首を傾げた。
「桜理…? どうしたの? ……実は?」
「………っ!!」
女の子が放った言葉。
今までぼんやりとしていた頭に、氷点下の冷や水でも浴びせられた気分だった。
嫌だ。
考えたくない。
しかし、急に動き出した頭は、これ以上の現実逃避を許してはくれなかった。
思い出すことから逃げていた現実が。
目を背けていた記憶が。
最後に見た、苦しみの中に安堵を浮かべたあの笑顔が。
目まぐるしく脳裏を駆け巡る。
「桜理、大丈夫か?」
頭上から声がした。
ユエを抱いたまま顔を向けると、拓也と尚希が戸惑ったようにこちらを見下ろしている。
二人の姿を見た瞬間、ふと気が緩んだ。
彼らなら実を助けてくれる。
実を、きっと……
そう思うと、凍りついていた感情が一気に爆発して、熱いものが込み上げてくるような気がした。
目頭から、濡れたものが零れる。
自分では止められないくらいに、ぽろぽろと。
「―――っ!!」
声にならない悲鳴をあげて、桜理は顔を覆った。
周りがそれに驚いて、気遣わしげな言葉をかけてくる。
しかし、そんなものは桜理に届かなかった。
実が……実が……
どうにかして訴えたいのに、涙と嗚咽が喉に大きな異物感としてわだかまって声が出ない。
実が捕まってしまった。
自分を助けに来たせいで。
自分の存在が実にとって一番の弱点になるって、そう分かっていたはずなのに……
激しい後悔が鋭利な刃物となって、心をずたずたに切り裂いていく。
涙を流しても変わりはしない現実に、押し潰されてしまいそうだった。
(―――――実……)
いつの間にかそこにいた自分は、その景色をただぼうっと見つめていた。
(私は……)
今まで、何をしていたんだっけ?
どうしてこんな所にいるんだろう。
「………」
思考が働かない。
あるのは、乗り物酔いでもしたかのような酩酊感と、微かな気持ち悪さ。
それと、目の前で舞い散る桜の花びら。
(帰らなきゃ……)
でも、どこへ?
分からない。
分からないのに、帰らなきゃいけないと何かが訴えてくる。
その何かに急かされた体が、のろのろと動き出した。
ゆっくりと立ち上がって、覚束ない足取りで桜の吹雪の中を進む。
なんだか、自分の体が自分の体じゃないみたいだ。
意識に関係なく体が勝手に動いているような、不思議な心地。
しばらく歩くと、遠くに真っ白な建物が見えた。
なんとなく、見覚えがある気がする。
自分の体は、まっすぐにそこに向かっていた。
「桜理様!?」
建物の前に立っていた誰かが、自分を見てそう叫んだ。
それを境に、静かだった建物の中が一気に騒がしくなった。
誰もが口々に、一つの名を呼んでいた。
「桜理様!」
建物の中から飛び出してきた人が、自分の肩を優しく掴んだ。
ゆっくりと顔を上げれば、髪を高い位置でまとめた女の人が心配そうにこちらを見ていた。
この人にも、見覚えがあると思う。
「桜理様、お怪我はありませんか?」
「………」
頭が痛い。
答えないと、余計に心配させてしまう。
でも、答えられない。
答えたくない。
「桜理!」
今度は女の子の声がして、腰に温かいものがぶつかった。
そちらを見下ろすと、小さな女の子が自分に抱きついていた。
その大きな瞳が、茫然とした自分の姿を綺麗に映し出している。
体が動くままに膝をついて、女の子を抱き締める。
一方の女の子は、不思議そうに首を傾げた。
「桜理…? どうしたの? ……実は?」
「………っ!!」
女の子が放った言葉。
今までぼんやりとしていた頭に、氷点下の冷や水でも浴びせられた気分だった。
嫌だ。
考えたくない。
しかし、急に動き出した頭は、これ以上の現実逃避を許してはくれなかった。
思い出すことから逃げていた現実が。
目を背けていた記憶が。
最後に見た、苦しみの中に安堵を浮かべたあの笑顔が。
目まぐるしく脳裏を駆け巡る。
「桜理、大丈夫か?」
頭上から声がした。
ユエを抱いたまま顔を向けると、拓也と尚希が戸惑ったようにこちらを見下ろしている。
二人の姿を見た瞬間、ふと気が緩んだ。
彼らなら実を助けてくれる。
実を、きっと……
そう思うと、凍りついていた感情が一気に爆発して、熱いものが込み上げてくるような気がした。
目頭から、濡れたものが零れる。
自分では止められないくらいに、ぽろぽろと。
「―――っ!!」
声にならない悲鳴をあげて、桜理は顔を覆った。
周りがそれに驚いて、気遣わしげな言葉をかけてくる。
しかし、そんなものは桜理に届かなかった。
実が……実が……
どうにかして訴えたいのに、涙と嗚咽が喉に大きな異物感としてわだかまって声が出ない。
実が捕まってしまった。
自分を助けに来たせいで。
自分の存在が実にとって一番の弱点になるって、そう分かっていたはずなのに……
激しい後悔が鋭利な刃物となって、心をずたずたに切り裂いていく。
涙を流しても変わりはしない現実に、押し潰されてしまいそうだった。
(―――――実……)
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