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忌まわしき過去
独り立ち
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鴨志田は帰って来なかった。
借金取りから逃げてる為に行方をくらましてるのか、金策に奔走してるのか分からないが、学校にも来ておらず、無断欠勤を続けているようだ。
学校側は、これ以上鴨志田の事を庇う事は出来なくなり、解雇という形で退職扱いになった。
鴨志田の事はさて置き、オレは未だに学校に馴染めず、孤立していた。
孤立することには慣れていた。
幼い頃からいつも1人だったオレにはむしろこの方が都合が良かった。
だが、一人になると再び生活が苦しくなり、バイトだけでは食っていけないオレは母を訪ねた。
「あのマンションを売ってしまおうかと思うんだが…」
もう父のマンションは必要ない。売ってしまって、オレは何処かで一人暮らしをしようと考えていた。
「亮輔、あのマンション売ってあなたはどうするつもり?」
それは何も考えなかった。
「亮輔。あなた、ワタシの仕事の後を継がない?」
母はパトロンから援助を受けた資金で店を経営するようになり、今では全国に店舗もの店をもつ経営者として成功した。
「オレはまだ15だぞ!夜の仕事なんて出来るわけないだろ。それに今はバイトだけでは学費も払えないし、食費だってバカにならない。学校に行っても相変わらずつまらない毎日でそんな事してるより、働いて独立したいだけだ」
「わかったわ。あのマンションが売れるようにしてあげるわ。でも、この先何処に住むつもりなの?」
「そこまで考えてない。もうあのマンションはオレには必要ない。先生もあれ以来帰って来ないし、いっそ売ってくれた方がいいよ」
一人で暮らすには、あまりにも広すぎるし、経済的にもキツい。
「そう、あの女はもう帰ってないの…亮輔、しばらくここにいたらどうかしら?」
冗談じゃない。だがイヤと言わずに上手く断る理由を考えていた。
「オレがオフクロの仕事を継ぐとなったら後三年は必要だし、18になったら継ぐからそれまでは独立したいんだ」
母は切れ長の冷たい目付きではなく、慈母のような優しい目でオレを見つめた。
「わかった。そこまで言うならワタシは何も言わない。ただ連絡先だけは教えてね」
「うん、わかった。」
「あのマンションはいつ売れるかわからないけど、当面のお金は大丈夫なの?」
金を出してもらいたかった。
だが、援助を受けたらまた振り出しに戻る。
「多少の蓄えがあるから何とかなる。あのマンションの事はオフクロに任せるよ。オレは学校に退学届けを出して住み込みのある仕事でも探してそこで働いてみるつもりだ」
これでオレは母親の下から離れられると思った。
「亮輔、何か困ったことがあったら遠慮なくお母さんに相談しなさい。何度も言うようだけど、あなたの母親はこのワタシなんだから」
母はオレを抱き寄せた。
でも今はこんなことしてる場合じゃない。
母の腕を振り解く。
「仕事先が見つかったら連絡するから」と告げて部屋を出た。
これからが忙しくなりそうだ。
父親のマンションに戻って退学届けを書いた。
翌日学校に退学届けを渡した。
学年主任の先生は簡単に辞めるな、中卒で雇ってくれる会社なんてそうそう無いぞ、と説得した。
オレは今の状況を事細かに話し、学校に行ってる余裕すらない状況を話した。
それならばせめて定時制か通信制に編入したらどうか?と案を出したが、オレの意思は固く、退学届けは受理された。
僅か数ヶ月の高校生活だ。
オレには何の感慨もなかった。むしろ足枷が無くなり、晴れやかな気分になった。
これから仕事を探そう、と求人情報サイトを開いた。
【型枠大工募集、15才から35才まで見習い可、住居完備】
ここだ!大工って金槌で釘を打ったり、鉋(かんな)で材木を削る仕事だろう、何とかなる!と軽い気持ちで考えていた。
記載してあった番号に電話した。
【はい、こちら灘工務店です。】
「あの、求人募集のホームページを見たのですが。まだ募集してますか?」
【あぁ、募集?ちょっと待って】
ぶっきらぼうなヤツだ。
しばらくして、担当者らしき者が電話に出た
【はい、もしもしお電話変わりました、担当の坂本です。】
さっきとは違い、ハキハキした声だ。
「あ、あのまだ募集してるのかなって電話したんですが、大丈夫でしょうか?」
【ええ、大丈夫ですよ。ところで年齢はいくつかな?】
「じゅ、15です」
【15才?これは随分と若いねー。学校には行かなかったの?】
「いや、色々ありまして中退しました。それで今、独立したくて色々と探したらここがみつかったので電話かけてみました」
【うーん、確かに15から募集してるけどウチの仕事はキツいよ?大丈夫かな?】
「はい、とにかく一日でも早く仕事したいんです」
【あ、そう。それじゃね、明日の10時に履歴書持ってきてくれるかな?】
「はい、わかりました。明日の10時ですね?よろしくお願いします」
よし、独立の第一歩はここだ。
採用されたら即、荷物を持っていけるように荷造りをしないと。
こうしてオレの独り立ちがスタートした。
借金取りから逃げてる為に行方をくらましてるのか、金策に奔走してるのか分からないが、学校にも来ておらず、無断欠勤を続けているようだ。
学校側は、これ以上鴨志田の事を庇う事は出来なくなり、解雇という形で退職扱いになった。
鴨志田の事はさて置き、オレは未だに学校に馴染めず、孤立していた。
孤立することには慣れていた。
幼い頃からいつも1人だったオレにはむしろこの方が都合が良かった。
だが、一人になると再び生活が苦しくなり、バイトだけでは食っていけないオレは母を訪ねた。
「あのマンションを売ってしまおうかと思うんだが…」
もう父のマンションは必要ない。売ってしまって、オレは何処かで一人暮らしをしようと考えていた。
「亮輔、あのマンション売ってあなたはどうするつもり?」
それは何も考えなかった。
「亮輔。あなた、ワタシの仕事の後を継がない?」
母はパトロンから援助を受けた資金で店を経営するようになり、今では全国に店舗もの店をもつ経営者として成功した。
「オレはまだ15だぞ!夜の仕事なんて出来るわけないだろ。それに今はバイトだけでは学費も払えないし、食費だってバカにならない。学校に行っても相変わらずつまらない毎日でそんな事してるより、働いて独立したいだけだ」
「わかったわ。あのマンションが売れるようにしてあげるわ。でも、この先何処に住むつもりなの?」
「そこまで考えてない。もうあのマンションはオレには必要ない。先生もあれ以来帰って来ないし、いっそ売ってくれた方がいいよ」
一人で暮らすには、あまりにも広すぎるし、経済的にもキツい。
「そう、あの女はもう帰ってないの…亮輔、しばらくここにいたらどうかしら?」
冗談じゃない。だがイヤと言わずに上手く断る理由を考えていた。
「オレがオフクロの仕事を継ぐとなったら後三年は必要だし、18になったら継ぐからそれまでは独立したいんだ」
母は切れ長の冷たい目付きではなく、慈母のような優しい目でオレを見つめた。
「わかった。そこまで言うならワタシは何も言わない。ただ連絡先だけは教えてね」
「うん、わかった。」
「あのマンションはいつ売れるかわからないけど、当面のお金は大丈夫なの?」
金を出してもらいたかった。
だが、援助を受けたらまた振り出しに戻る。
「多少の蓄えがあるから何とかなる。あのマンションの事はオフクロに任せるよ。オレは学校に退学届けを出して住み込みのある仕事でも探してそこで働いてみるつもりだ」
これでオレは母親の下から離れられると思った。
「亮輔、何か困ったことがあったら遠慮なくお母さんに相談しなさい。何度も言うようだけど、あなたの母親はこのワタシなんだから」
母はオレを抱き寄せた。
でも今はこんなことしてる場合じゃない。
母の腕を振り解く。
「仕事先が見つかったら連絡するから」と告げて部屋を出た。
これからが忙しくなりそうだ。
父親のマンションに戻って退学届けを書いた。
翌日学校に退学届けを渡した。
学年主任の先生は簡単に辞めるな、中卒で雇ってくれる会社なんてそうそう無いぞ、と説得した。
オレは今の状況を事細かに話し、学校に行ってる余裕すらない状況を話した。
それならばせめて定時制か通信制に編入したらどうか?と案を出したが、オレの意思は固く、退学届けは受理された。
僅か数ヶ月の高校生活だ。
オレには何の感慨もなかった。むしろ足枷が無くなり、晴れやかな気分になった。
これから仕事を探そう、と求人情報サイトを開いた。
【型枠大工募集、15才から35才まで見習い可、住居完備】
ここだ!大工って金槌で釘を打ったり、鉋(かんな)で材木を削る仕事だろう、何とかなる!と軽い気持ちで考えていた。
記載してあった番号に電話した。
【はい、こちら灘工務店です。】
「あの、求人募集のホームページを見たのですが。まだ募集してますか?」
【あぁ、募集?ちょっと待って】
ぶっきらぼうなヤツだ。
しばらくして、担当者らしき者が電話に出た
【はい、もしもしお電話変わりました、担当の坂本です。】
さっきとは違い、ハキハキした声だ。
「あ、あのまだ募集してるのかなって電話したんですが、大丈夫でしょうか?」
【ええ、大丈夫ですよ。ところで年齢はいくつかな?】
「じゅ、15です」
【15才?これは随分と若いねー。学校には行かなかったの?】
「いや、色々ありまして中退しました。それで今、独立したくて色々と探したらここがみつかったので電話かけてみました」
【うーん、確かに15から募集してるけどウチの仕事はキツいよ?大丈夫かな?】
「はい、とにかく一日でも早く仕事したいんです」
【あ、そう。それじゃね、明日の10時に履歴書持ってきてくれるかな?】
「はい、わかりました。明日の10時ですね?よろしくお願いします」
よし、独立の第一歩はここだ。
採用されたら即、荷物を持っていけるように荷造りをしないと。
こうしてオレの独り立ちがスタートした。
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