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忌まわしき過去
次期社長について
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ホテルを出た後、達也は会社に連絡を入れた。
「あ、もしもし…お疲れ様です、達也です。あれから何か進展はありましたか?
…そうですか、まだ連絡がないですか。
ええ、はい。これから僕は警察に行って捜索願いを出してきます。
……はい、大丈夫です。皆さん仕事があるでしょうし。
何せ自分の母親ですから、心配です…
…えぇ、分かってます。
では、何かありましたらまた連絡下さい。僕も連絡しますので。はい、では失礼します」
電話を切り、警察署に出向いた。
捜索願いを出せば、警察は千尋の足取りを調べるだろう。
勿論、会社にも警察が来て、色々と聞かれる。
色々と聞かれても、元々一緒に住んでないし、達也にはアリバイがある。
もうすぐだ…もうすぐでオレの会社になる。
達也は込み上げる笑いを抑えながら警察署に着くと、狼狽えた顔つきに変わり、捜索願いの申請をした。
一刻も早く探して欲しい、朝から全く連絡が取れないのは、母の身に何かあったからに違いない、と役者顔負けの迫真の演技で訴えた。
そして、捜索願いが受理された。
達也は深々と頭を下げ、警察署を出て、再度会社に連絡を入れた。
「あ、もしもし。度々すみません、達也です。全く連絡がないですか?…そうですか…
今、警察署に行って捜索願いを出してきました。
多分、明日には警察が会社に来るかと思います。
お手数ですが、よろしくお願いします。
…ええ、はい大丈夫です。
とにかく後は警察に任せましょう。
皆さんも遅くまで残ってくださってありがとうございます。
今日のところはこれで帰ってください。
母の為に誠に申し訳ありませんでした。
…ええ、大丈夫です。
自分はこのまま帰ります。
明日も会社に来ますので…はい、大丈夫です。
こんな時に学校に行ってる場合じゃありませんから。
…それではまた明日。はい、失礼します」
これでよし、と。
その日は自宅に帰り、眠りについた。
翌朝、達也は起きると、亮輔に連絡を入れた。
亮輔は事の重大さを理解しておらず、いつもの様に夜遊びをして帰ってきたばかりだった。
「もしもし、亮輔?あれから連絡はあったか?」
亮輔はこれから寝ようと、ベッドに入ったばかりだった。
【いや、オレも今帰ってきたばかりで何も…】
「バカヤローっ!こんな時にフラフラ遊び歩いてる場合かっ、いい加減にしろ!!」
激しく叱責した。
【悪かったよ…でも前にもこんな事が何度もあったから、そのうち戻ってくるんじゃないか、と思ってたから】
ここまでは計画通りだ。
いくら探しても千尋は見つからない。
今頃は太平洋上を渡っている最中だ。
「いいか、オレは昨日警察に捜索願いを出した。多分そっちにも警察が来るはずだ。今日一日、何処にも出るなよ、分かったな?」
【う、うん。でも全く連絡つかないって、どこで何やってんだろう…】
いつも一緒にいる亮輔と母親を分断させる作戦は効を奏した。
「オレはこれから会社に行くから何かあったら必ず連絡しろよ、分かったか!?」
達也が語気を強めた。
亮輔はその声に気圧されて、うんと言うしかなかった。
電話切り、達也はスーツに着替えると会社に向かった。
今日は警察が来るはずだ。
オレや幹部連中は事情聴取を受けるだろうが、これも計算通りだ。
会社に着くと、憔悴しきった顔で社長室に入った。
達也は昨晩警察に捜索願いを出した事を伝えた。
この後、警察が来て色々と聞かれるだろうが、ご了承下さいと言って頭を下げた。
しばらくして警察が到着すると、達也を含む数人の幹部連中が聴取された。
達也はその様子を見て、ある人物にターゲットを絞った。
その人物の名は、副社長の沢渡(さわたり)。千尋が全幅の信頼を寄せており、会社を大きくしたのは、彼の功績でもある。
達也は沢渡に話を持ち掛けた。
「沢渡さん、もしこのまま社長が見つからなかったら、次は誰を社長にするのですか?」
心配そうな表情を浮かべながら尋ねてみた。
「いや~、それはまだ先の話でしょう。それより社長の安否が先決です」
彼の年齢は50代前半、千尋とは長い付き合いだ。
元々は千尋がスナックの雇われママをしていた時の常連で、パトロンを利用して会社まで設立した当初、千尋に頼まれ、仕事を手伝った。
「ですが、このままでは業務に支障が…代役でもいいから誰か社長にしないとマズイのでは…」
達也の予想は沢渡が流動的に社長に昇進すると読んでいた。
「当面の間は私が代役を努めます」
読みは当たった。達也のシナリオ通りだ。
「実はその話で、仕事が終わったら僕に少し付き合ってもらいたいのですが、よろしいですか?」
達也はここで鴨志田を使う予定だ。
「今日ですか?しかしこんな状況で…」
沢渡は戸惑いの表情をして、少し渋っていた。
「お願いします、こんな状況だからこそ、こういう話をしないといけないんじゃないですか?社長の行方は警察に任せるしかないでしょう。でも、会社としては社長も決まらずに仕事なんて出来ないのではないですか?だから沢渡さんにこうやってお願いしてるんです」
達也は深々頭を下げた。
「そうですか…わかりました。では終わったらお付き合いします」
誘いに乗った…達也は内心ほくそ笑んだ。
「ありがとうございます!終わりましたら、店にでも…それと沢渡さんに是非とも会っていただきたい人がおりまして…」
「会う?どんな方ですか?」
沢渡は少し考え込んだ。
どんな人物だ?この会社に関係する人物なのか?と。
「実は私の知り合いで、経営コンサルタントをしている女性がいるんです。
いずれ社長にも会う予定だったのですが、こんな事になってしまったもので…だから沢渡さん、社長の代わりとして会っていただけないでしょうか?」
「経営コンサルタントをしていた女性ですか?私でよければ…」
「では後程、店の場所をお教えしますので。失礼します」
達也は部屋を出てトイレの個室に入り、鴨志田にメールを送った。
LINEの方が手っ取り早いのだが、やり取りが見つかった時の事を考えて、敢えてメールにした。
ここから先は鴨志田の出番だ。
「上手くやってくれよな…フフっ」
あまりにも上手く行き過ぎる、だが達也はそんな事はお構い無しに突き進む。
「あ、もしもし…お疲れ様です、達也です。あれから何か進展はありましたか?
…そうですか、まだ連絡がないですか。
ええ、はい。これから僕は警察に行って捜索願いを出してきます。
……はい、大丈夫です。皆さん仕事があるでしょうし。
何せ自分の母親ですから、心配です…
…えぇ、分かってます。
では、何かありましたらまた連絡下さい。僕も連絡しますので。はい、では失礼します」
電話を切り、警察署に出向いた。
捜索願いを出せば、警察は千尋の足取りを調べるだろう。
勿論、会社にも警察が来て、色々と聞かれる。
色々と聞かれても、元々一緒に住んでないし、達也にはアリバイがある。
もうすぐだ…もうすぐでオレの会社になる。
達也は込み上げる笑いを抑えながら警察署に着くと、狼狽えた顔つきに変わり、捜索願いの申請をした。
一刻も早く探して欲しい、朝から全く連絡が取れないのは、母の身に何かあったからに違いない、と役者顔負けの迫真の演技で訴えた。
そして、捜索願いが受理された。
達也は深々と頭を下げ、警察署を出て、再度会社に連絡を入れた。
「あ、もしもし。度々すみません、達也です。全く連絡がないですか?…そうですか…
今、警察署に行って捜索願いを出してきました。
多分、明日には警察が会社に来るかと思います。
お手数ですが、よろしくお願いします。
…ええ、はい大丈夫です。
とにかく後は警察に任せましょう。
皆さんも遅くまで残ってくださってありがとうございます。
今日のところはこれで帰ってください。
母の為に誠に申し訳ありませんでした。
…ええ、大丈夫です。
自分はこのまま帰ります。
明日も会社に来ますので…はい、大丈夫です。
こんな時に学校に行ってる場合じゃありませんから。
…それではまた明日。はい、失礼します」
これでよし、と。
その日は自宅に帰り、眠りについた。
翌朝、達也は起きると、亮輔に連絡を入れた。
亮輔は事の重大さを理解しておらず、いつもの様に夜遊びをして帰ってきたばかりだった。
「もしもし、亮輔?あれから連絡はあったか?」
亮輔はこれから寝ようと、ベッドに入ったばかりだった。
【いや、オレも今帰ってきたばかりで何も…】
「バカヤローっ!こんな時にフラフラ遊び歩いてる場合かっ、いい加減にしろ!!」
激しく叱責した。
【悪かったよ…でも前にもこんな事が何度もあったから、そのうち戻ってくるんじゃないか、と思ってたから】
ここまでは計画通りだ。
いくら探しても千尋は見つからない。
今頃は太平洋上を渡っている最中だ。
「いいか、オレは昨日警察に捜索願いを出した。多分そっちにも警察が来るはずだ。今日一日、何処にも出るなよ、分かったな?」
【う、うん。でも全く連絡つかないって、どこで何やってんだろう…】
いつも一緒にいる亮輔と母親を分断させる作戦は効を奏した。
「オレはこれから会社に行くから何かあったら必ず連絡しろよ、分かったか!?」
達也が語気を強めた。
亮輔はその声に気圧されて、うんと言うしかなかった。
電話切り、達也はスーツに着替えると会社に向かった。
今日は警察が来るはずだ。
オレや幹部連中は事情聴取を受けるだろうが、これも計算通りだ。
会社に着くと、憔悴しきった顔で社長室に入った。
達也は昨晩警察に捜索願いを出した事を伝えた。
この後、警察が来て色々と聞かれるだろうが、ご了承下さいと言って頭を下げた。
しばらくして警察が到着すると、達也を含む数人の幹部連中が聴取された。
達也はその様子を見て、ある人物にターゲットを絞った。
その人物の名は、副社長の沢渡(さわたり)。千尋が全幅の信頼を寄せており、会社を大きくしたのは、彼の功績でもある。
達也は沢渡に話を持ち掛けた。
「沢渡さん、もしこのまま社長が見つからなかったら、次は誰を社長にするのですか?」
心配そうな表情を浮かべながら尋ねてみた。
「いや~、それはまだ先の話でしょう。それより社長の安否が先決です」
彼の年齢は50代前半、千尋とは長い付き合いだ。
元々は千尋がスナックの雇われママをしていた時の常連で、パトロンを利用して会社まで設立した当初、千尋に頼まれ、仕事を手伝った。
「ですが、このままでは業務に支障が…代役でもいいから誰か社長にしないとマズイのでは…」
達也の予想は沢渡が流動的に社長に昇進すると読んでいた。
「当面の間は私が代役を努めます」
読みは当たった。達也のシナリオ通りだ。
「実はその話で、仕事が終わったら僕に少し付き合ってもらいたいのですが、よろしいですか?」
達也はここで鴨志田を使う予定だ。
「今日ですか?しかしこんな状況で…」
沢渡は戸惑いの表情をして、少し渋っていた。
「お願いします、こんな状況だからこそ、こういう話をしないといけないんじゃないですか?社長の行方は警察に任せるしかないでしょう。でも、会社としては社長も決まらずに仕事なんて出来ないのではないですか?だから沢渡さんにこうやってお願いしてるんです」
達也は深々頭を下げた。
「そうですか…わかりました。では終わったらお付き合いします」
誘いに乗った…達也は内心ほくそ笑んだ。
「ありがとうございます!終わりましたら、店にでも…それと沢渡さんに是非とも会っていただきたい人がおりまして…」
「会う?どんな方ですか?」
沢渡は少し考え込んだ。
どんな人物だ?この会社に関係する人物なのか?と。
「実は私の知り合いで、経営コンサルタントをしている女性がいるんです。
いずれ社長にも会う予定だったのですが、こんな事になってしまったもので…だから沢渡さん、社長の代わりとして会っていただけないでしょうか?」
「経営コンサルタントをしていた女性ですか?私でよければ…」
「では後程、店の場所をお教えしますので。失礼します」
達也は部屋を出てトイレの個室に入り、鴨志田にメールを送った。
LINEの方が手っ取り早いのだが、やり取りが見つかった時の事を考えて、敢えてメールにした。
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