快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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忌まわしき過去

マンションを売り飛ばす

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鴨志田をソープから足を洗わせ、千尋を売り飛ばし、亮輔をマンションから追い出し、沢渡を罠にはめて、千尋の会社を乗っ取った。


千尋も野心家だったが、達也はそれ以上の野心家だ。目的の為なら手段を選ばない。

達也は独占欲の塊で、他人を一切信用せず、危険だと思った人物は、石ころの如く蹴飛ばす。


翌日の就業前に沢渡が他の幹部連中や社員を呼び寄せ、達也が新たな社長として就任する事を伝えた。

本来ならば、代表取締役員会議や、株主の承諾が無ければ社長にならないのだが、千尋が株の半数以上を所有するオーナー社長だった。
おまけに、ナンバー2の沢渡は発言力もある為、彼が認めたとなれば誰も不服を申し出る者がいなかった。

達也の社長就任と共に、鴨志田が達也の秘書として就任する事も発表した。

(あの女、まさかこの前の夜の出来事を覚えてるんじゃないのか…)

ふとあの晩の出来事が脳裏をよぎった。

達也も鴨志田も、社員を前に堂々と立ち、挨拶をして、滞りなくお披露目は終了した。

社員達がいなくなった会議室で、達也と鴨志田、沢渡の3人が残り、今後の展開の事について話をしていた。

「沢渡さん。貴方は今まで通り、副社長として私のサポートをお願いします。
私はこれから、鴨志田さんと共に例のワンルームマンションの売却の為に各不動産を回っていく予定です。
元々あのマンションは前社長が家賃収入を目的に建てたらしいのですが、弊社はナイトレジャーがメインの企業なのに、あのマンションは必要ないでしょう。
それよりも店舗拡大の為に、三人で力を合わせていきましょう!
沢渡さん、鴨志田さん、よろしくお願いします」

達也は二人に深々と頭を下げ、ガッチリと握手をかわした。

「では沢渡さん、会社の事はお任せしますので…」

達也は沢渡の顔を見てニヤっと笑みを浮かべた。

約束通り、達也はあのマンションを売却して、その金額を全て沢渡に渡すつもりだ。

あのワンルームマンションは新築で、立地条件も良い。
かなりの額で売却出来るだろうと、計算した。
その金額で沢渡をこっち側に誘い込むなら安いもんだ。

「畏まりました。では達也さん…いや、失礼しました。社長、気をつけていってらっしゃいませ」

沢渡はお辞儀をして会議室を出た。

「とうとう目標を達成できたわね…アナタってホントに凄い人物だわ」

「まだまだ、これからだ。これからが始まりなんだよ。じゃ行こうか」

二人は不動産巡りをした。

すぐに買い手が見つかり、出来るだけ高値で売却できるように。

会社の事は沢渡に任せればいい。自分は鴨志田と共に売却の為に奔走する。

達也は事前に沢渡と打ち合わせをしていた。

「沢渡さん、僕は暫くの間、マンション売却の為に出回ります。なるべく早く、そして高く売却できるような不動産を見つけ出します。
沢渡さんとの約束は必ず守りますので、会社の事をお願いします」

「分かりました。しかし、どうやってそんな都合良く売却できるんですか?」

「鴨志田さんを使います。経営コンサルティングとして優秀ですが、他にも交渉術が大変上手らしく…」


「は、はぁ…あの方はそんな事も出来るのですか?」

「ただの経営コンサルティングだけじゃ秘書にしません。
では、よろしく頼みます」


些か腑に落ちないが、自分は達也の言う通りにこの会社を今まで通りに支えていけばいい。



達也と鴨志田は、国内でも高いシェアを誇る不動産業で有名な会社を訪れた。

「この土地と建物なのですが、売却するとなると、概算で幾らぐらいになるのでしょうか?」

達也はまず、ワンルームマンションの売却がいくらになるか、見積りをして欲しいと頼んだ。

窓口で対応した人物は、それなりの重要なポストに就いていた男だった。

しかし、見積り額は達也の思っていた額より低かった。

「あの築年数で、しかも立地条件が良いのに、たったこれだけですか?」

読みが外れた。

「私どももこれで精一杯な額なんです。多分、他の不動産に行っても、これ以上の額では無理です、むしろもっと低くなるはずです」

達也は考えた。この額でも問題にはならないのだが、出来るだけ希望額に近い額まで交渉したい。

「では、このワンルームマンションと土地。それと、今私が住んでるマンションを売却したらどのくらいになるでしょうか?」

「えっ、あのマンションを?」

鴨志田が思わず声を上げた。

達也は千尋が残したマンションさえも売却する考えだった。

(何考えてんの、この男!あのマンションまで手放したら私は何処へ住めばいいのよ!)

鴨志田は達也の考えが読めなかった。

「となると、今住んでいるマンションも売却するという事ですね?」

「そうです。間取りは3LDK、築三年のマンションです。
新築のワンルームマンションと土地、それに今言ったマンション合わせてどのくらいになりますか?」

千尋が所有していた物は全て売却するつもりなのか。

「失礼ですが、お客様は何故そこまでして売却を?」

不審に思ったのか、対応した男が達也に売却の理由を聞いた。

「実はお恥ずかしい話なんですが…母親が経営している会社の業績が不振なもので…私が後を継ぐ事になったのですが、貧乏クジを引いたというか…まぁ、そんな事がありまして、だったらいっその事、売ってしまおうと。
我々のような小さな会社にはあのマンションは必要ありません。
それを売って、少しでも無駄を省こうとしている最中です」

「成る程。でも、売却しても色々と後が大変ですよ。譲渡所得税の事もありますからね」

そんなものはどうにでもなる。
問題なのは、買取りか仲介にするか。

買取りだと不動産が買い取るから素早く売れるが、不動産の言い値に従うしかない。

仲介だと買取りに比べ、高く売れるが、買い手が現れないまでは売れない。
しかも不動産から仲介手数料としていくらか引かれてしまう。

だが、達也の決断は早かった。

「では、買取りでお願いします。仲介だといつ売れるか分かりませんし、私どもとしては一日でも早く売却したいですから」

「左様でございますか。それならワンルームマンションと今現在お住まいになってる分譲マンションを弊社が買い取るとなると、このぐらいの額になりますね」

見積書に目を通した。

合計で約7千万だ。

やっぱり少ない…達也は奥の手を使うしかないと考えた。

「そうですか。
では、この見積書を持ってもう一度検討してからお返事致しますので」

達也は見積書を手にし、店を出た。

車に乗り込むと、鴨志田に書類を渡した。

「この先は秘書であるアンタの出番だ。やり方は言わなくても理解してるよな?」

「また、同じ事をやれって言うの?アタシはアナタの奴隷なの?」

「奴隷?」

「そうよ!何で他の男に抱かれなきゃならないの?」

「これも作戦の為だ。アンタはそれと引き換えに莫大な金を手にするんだぞ?」

金をチラつかせ、鴨志田を操る。
納得は出来ないが、今は言う通りに従う他ない。

「わ、分かったわよ。その代わり、約束は絶対に守ってよね?」


「あぁ…オレがアンタにウソを付いた事は一度も無いぜ」

バックミラー越しから見る達也の表情は薄ら笑いを浮かべていた。
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