快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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忌まわしき過去

再建

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何故、沢渡は弁護士と手を組んだのか。

それは達也が社長就任の時まで遡る。

二人が初めて会ったのは、達也が社長に就任して間もなくの頃だった。

当時、達也の代わりに沢渡が事務所を訪れて、仕事を依頼した事がきっかけで二人は意気投合した。

沢渡は達也の事を信用してなかった。
達也のワナに引っ掛かった為に、渋々社長の座を譲ったが、達也はいずれボロを出すと読んでいた。

その読み通り、達也は徐々に傲慢な人間に変わっていった。


本音を言えば、千尋の息子で次期社長と言われた達也が会社を継ぐことを賛成していた。

だがそれは、様々な経験を積んでから社長に就任するという条件で、いきなりポンと社長になるのは沢渡じゃなくても異を唱えるのは当然の事だ。


そんな達也に会社を任すワケにはいかない。

そして、弁護士は酒の席で沢渡にこう言った。

「沢渡さん、アンタいつまであの小僧をのさばらせておくつもりなんだい?ヤツは破滅するタイプの人間だ。
ほっといたらアンタんとこの会社、大変な事になるぜ」

この言葉で沢渡は達也を潰す事を決め、その際、力を貸して欲しいと依頼した。

弁護士の客のほとんどは裏社会で生きてる連中で、言わば持ちつ持たれつの関係だ。
その気になれば、達也を消す事など造作もない。

達也はただ己の欲望の為に、邪魔な者は排除して、自分はトップに君臨するという、自己中心的な考えしかなかったのに対し、沢渡は社員あっての会社という考えを持ち、何事も慎重に物事を進め、管理能力に長け、千尋の右腕として会社に貢献していた。

千尋は女性特有のヒステリックでワンマンなところがあったが、全ては会社を良くしたいが為の事で、沢渡には全幅の信頼を寄せていた。

沢渡は表向きでは、達也の忠犬の様にイエスマンを演じたが、独裁者に変貌した達也の態度が最高潮に達した頃を見計らい、消す事を依頼した。

弁護士は顧客の中から、その筋の人間に今回の件を依頼し、達也を事故に見せ掛けるようにして、ホームから突き落とした。

それも端から見えないように、何人かの連中が達也を囲むようにカムフラージュをして、一人がドンと背中を押し、達也は文字通り砕け散った。

「先生。
この件を最後に私どもは、これからは優良企業として邁進していくつもりです。
今までお付き合いいただき誠に感謝しております」

弁護士に礼を述べた。

勿論、弁護士もそのつもりだった。
今回の件を最後に沢渡とは関わりを持たず、互いの道を進めばいいと思っていた。

「勿論だ。もうアンタと会う事は無いだろう。これでオレの役目は終わりだ。
沢渡さん、アンタが立派な会社に成長するのを期待してるよ」

「ありがとうございます」

「ところであのバカの葬儀は会社でやるつもりかい?」

「そのつもりです。まぁ、あちこちに飛び散った部分だけ集めてもらって火葬して遺骨は弟に預けるつもりです」

「そういや、血の繋がってない弟がいたな。鴨志田のオヤジが、養子にした女との間に出来た子供が。そいつは何をしてるんだ?」

「はい。
あの愚かな兄に振り回されて、高校を中退し、今は定時制に通いながら、昼間は肉体労働で真面目に働いてるらしいです」

「まだ15才なのに、天涯孤独の身になったのか…そりゃ気の毒だな」

「ええ、ですから今回の件で鉄道会社から莫大な賠償金を支払わなくてはならないでしょう。ですが、まだ15才。
これ以上、不幸な出来事には巻き込みたくないですね」

「真面目に働いてるヤツにそんな事はさせんよ。その弟の為に、損害賠償が出んように手配はしてある。それにしてもかわいそうな弟だな、アニキがバカなだけに」

「私はその弟を何度か見たことはありますが、あの兄とは比べものにならない程、真面目な子です」

「そうか。バカな兄を持つと弟は苦労するだろな」

「そうです。まだあの年でこの前までビジネスホテル等をを渡り歩き、ようやく住む所を見つけた矢先ですからね」

弁護士が葉巻を咥え、少し考えた。

「遺骨はその弟に預けるのかい?」

「さぁ、遺骨にしようとも、あれだけ派手に身体がバラバラになったぐらいですからね。
でも、戸籍上は兄弟ですから遺骨が見つかれば、弟に返すしかないでしょう」

「それまでの葬儀代は会社でもってやれ。オレは真面目に働いてる人間には一切手を出さない」

「承知致しました」

弁護士は達也の始末を任せれた者たちに連絡を取り、その場を立ち去るよう告げた。

車は弁護士の事務所に到着した。

「それじゃ元気でな。アンタなら上手く会社を立て直せる」

「今までありがとうございました。先生もお元気で」

車はまた発進した。

最大の邪魔者の始末を終え、沢渡は会社に向かった。
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