快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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新たな出発

レンタルボーイ、レンタルガール

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「先生…オレ、まだあのクソヤローのツラが浮かんでくるんだよ。あんな事忘れようとしてもまた思い出してしまうんだ。
なぁ、先生、いや母さんどうしたらいいんだろ?」

オレは鴨志田の墓の前で手を合わせ、墓石に語りかけた。

今日は月命日だからオレは花束と線香をあげ、墓石を綺麗にした。

この墓はオレが建てたもので、他には誰も来ない。
だから月命日には必ずここへ来て、鴨志田に語りかけている。

勿論、墓石から鴨志田の声などするはずもない。
だが、オレはここ最近、兄の幻影に悩まされていた。

ここへ来れば、少しは楽になるのかな、と思い、しばらく墓の中に眠っている鴨志田に語りかけた。

「オレはちゃんと学校にも通ってるし、クラスの連中とは仲良くやってるつもりだ。おまけに隣の席にいる女がいつもオレの事を心配してるんだよ。飯はちゃんと食ってるのか、夜更かししないで早く寝なさいとか…
何かオレの事を弟みたいな感じで接してるみたいだけど、何だかんだ言いながら上手くやってるよ。
だから母さんも安心してくれ。
ただ、今も思うのは、あのアニキの骨をドブ川に捨てたのは後悔してない。
それのせいなのかもしれないが、あのニヤけたツラが頭に浮かんでオレに取り付いてるみたいな感じだよ…
何をやっても、あのツラが脳裏から離れていかないんだ。
なぁ、母さん。オレは一生アイツに付きまとわれながら生きていくのかなぁ?」

今オレが思っている事を全て墓前で話をしていた。

返事なんか返ってこないが、オレはそれでも墓前で鴨志田と会話をした。

ここに来ると、兄の事は忘れてしまう程だ。

鴨志田はオレの事を守ってくれているのだろうか…

「じゃ、また来月ここに来るよ」




家に着くと、テーブルにスマホを置きっぱなしだった事に気づいた。

朝、慌てて出ていったから、スマホを持っていくのを忘れてしまった。

スマホを見ると、凜から何度も着信があった。

何の用だ?
凜に電話をかけた。

【はぁい、もしもし】

「あ、もしもし、古賀だけど。何度も連絡があったから気になって電話したんだけど」

【そうだよ、さっきからLINEしても既読にならないし、電話かけても出ないからさ】

「あぁ、今日オフクロの月命日だから墓参りに行く時に慌てて出たからスマホ忘れてたんだよ、悪ぃな」

【そうなんだ。大した話じゃ無いんだけど、もう夕方になるでしょ?一緒にご飯でも食べようかなって連絡しただけ】

飯の誘いか…

一人で食うよりはマシか。

「あぁ、いいよ。じゃどこで待ち合わせする?」

【駅前にフレンチやイタリアンの料理が出来る居酒屋があってね。そこで待ち合わせしない?】

居酒屋なんてあったかな?
まぁ、行けば分かるだろ。

「わかった。じゃあそこで待ってる」

【うん、私も今から支度してそっちに向かうね】

居酒屋って、オレはまだ未成年だぞ。そんな場所に連れて飯か?

オレは支度して家を出た。

駅前には既に凜が到着しており、その居酒屋へ入った。

洋風居酒屋というだけあって、レンガ造りの建物に、店内は壁に絵画がいくつか飾っていて、白を基調とした、いかにも女子ウケしそうな店だ。

オレと凜は店内に仕切られた個室に入った。

「古賀くん、何飲む?お酒とか飲めるの?」

オレ未成年だぞ、未成年に酒すすめてどうするんだ。

「いや、まだ未成年だからウーロン茶で」

「えぇ~、ウーロン茶?私、古賀くんの年の頃はもうお酒飲んでたよ」

冗談じゃない、オレは酒やタバコなんか絶対にやらない。

「じゃカンパーイ」

「…乾杯」

テーブルには、カルパッチョやガレットの様な洋風のツマミが所狭しと置かれていた。

「古賀くん、今の仕事キツい?」

凛が仕事の事を聞いてきた。

「いや、まぁキツいっちゃキツいけど」

そりゃキツいよ、何せ道路を造るんだから、アスファルトを地ならししたり、残土を運んだりするから、思いっきり肉体労働だ。

気のせいか、肩や腕回りに筋肉が付いてきたような。

「で、給料どのぐらい貰ってるの?あ、すいませーん、赤ワインとカプレーゼ!」

ビールからワインか。
コイツかなり飲む方なんだろうか。

「給料?まだ見習いだからそんなに貰ってないよ」

「そんなにって、どのくらい?」

人の給料に興味あるのか?

「だからそんなに貰ってないって」

「具体的にいくらよ?」

しつこい…給料がいくらなんて関係ないだろ。

「何で給料の話にこだわるの?」

凜は赤ワインを飲んでほろ酔い気分だ。

「ねぇ、いくら貰ってるの?」

「帰る」

不愉快だ!金の話ばかりしやがって!

「待ってよ、実は仕事の話で古賀くんを誘ったんだから」

「人の給料聞く前に、まず自分の給料を言ったらどうなんだ?さっきから給料、給料って何なんだ一体?それ以上この話するならオレは帰る」

オレは席を立った。

「ちょっと座りなさいってば」

凜はオレの袖を掴んで座らせようとした。

「もういいだろ、金の話したきゃ他の人に聞けばいいだろ?オレは他人に給料いくら貰ってるかなんて言うつもりはないから」

オレは一切食べ物に手をつけず、ウーロン茶もちょこっとしか口にしてない。

「悪かったってば!だから座って!ね」

…オレはまた席に着いた。

すると凜は急に身を乗りだし、小声でオレに話を始めた。

「実はね、レンタルガール、レンタルボーイっていう仕事があるんだけど、古賀くん知ってる?」

レンタル?それ女子高生とかが、彼女の代わりにデートとかするヤツだろ。

下手したら淫行でパクられるじゃないか。

「要はデートの相手をするだけだろ。ニュースでもやってんじゃないか。売春とかで摘発された店もかなりあるヤツじゃないか。それがどうしたって言うんだ」


レンタルなんてバカバカしい!


凜はフフっと軽く鼻で笑い、話を続けた。

「それは一般人向けのヤツでしょ。JKがモテない男の相手してデートする事を言ってるでしょ?」

ん、何だ一般人向けってのは。

「レンタル倶楽部…文字通り、レンタルされる仕事なんだけどね」

「一緒だろ、それは」

「違うの。いい、古賀くん。世の中には決して表には知られない仕事っていっぱいあるの」

「そんな事は分かってるよ。大体裏の人間が仕切ってるような危ない橋渡る仕事だろ」

凛は赤ワインをもう一杯注文して、詳しく話を始めた。

「私が言ってるレンタルボーイ、レンタルガールって、実はセレブ対象の高級な仕事なの」

ん?セレブ相手…どういう事だ。

「で、セレブがどうするんだ?」

「セレブって、財閥の人や政治家、芸能人の事なんだけど、その人達を相手にしてる仕事なの」

世の中には色んな仕事があるんもんだ、と妙に感心してしまった。

「でね、レンタルの期間は客によってバラバラだけど、一日という人もいれば、一週間もいるし、中には一ヶ月レンタルする人もいるの。その期間中はその客と寝食を共にするってワケ」

一ヶ月も人をレンタルして、何をしようっていうんだ。

その間は一緒に過ごすって…

「もし、そこに登録すると、今働いてる仕事の何倍ものお金が稼げるの」

沢渡さんから貰った1000万を使いきるために、毎晩風俗や飲食に使っているが、中々金が減らない。

今のオレには必要無い。
それに、見ず知らずの人に買われるなんて、ゴメンだ。

「その期間何すんだよ?まさかアッチの方の相手もするのかよ?」

「客によってはね。取り分は6:4で、100万だとしたら、40万は元締めが貰って、残りの60万はこっちが貰えるってシステムなの。
相手は金持ちだから、お小遣いとかくれるから、相手次第では100万ぐらいあっという間に稼げる仕事なの。どう、興味ない?」

そういう事か…それが目的でオレに近づいてきたワケだ。

という事は、凜もそこに登録して金持ちのオヤジ相手に股開いてるのか。

とんだビッチだな、コイツは。

「オレは何も聞かなかった、何も知らなかった。そういう事にしておいて。悪いけどそういう話に全く興味ないから」

テーブルにバン!と一万円札を叩きつけ、店を後にした。

やっぱり他人は信用出来ない。

やけに親しげに近づいてきたと思ったら、こんなウラがあったって事か。

これからは凜が何を話し掛けてきても無視しよう。

他人なんて所詮、そんなもんだ。

何だか気分が悪い。
満足に射精出来るはずもないのに、ソープランドに足を運んだ。
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