快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

sky-high

文字の大きさ
86 / 189
新たな出発

麻薬中毒者(ジャンキー)となって

しおりを挟む
凜は廃人になった。
オレは凜とは恋愛をするつもりは無かったが、長く付き合える間柄になるんじゃないかと思っていた。
だが、蓋を開ければ、オレをセレブのレンタル要員に誘い込む為に近づいただけだった。

ガラの悪い三人組を使い、オレを脅し、無理矢理レンタル要員の会員にさせようとしたのが凜の間違いだった。
そしてオレは報復として、その倍、いや何十倍もの仕返しをした。

その結果が廃人だ。


誰だって金に目が眩む。それは当然の事だ。
しかし、クズは金で裏切る。
中にはそうじゃないヤツもいるだろう。
だが、そんなヤツはいまだにお目にかかった事はない。


年が明け、オレは初詣の帰りに鴨志田が眠る墓に行った。
ここでは必ず、オレの近況を報告する。

ただそれだけなのだが、墓石を前に色々と自分の事を話すと、黙って聞いてくれるような感じがするのだ。


正月休みが終わり、日常の生活に戻り、オレは仕事に学校にと行く日々を送った。

そんな休日、沢渡さんから連絡があった。

【もしもし、亮輔くんか?お母さんが見つかったらしい】

母が見つかった?
ホントなのか?

「ホントですか?で、母は今どこに」

【…】

沢渡さんは無言だった。

「沢渡さん、どこにいるんですか、母は?」

やや間があって沢渡さんは重い口を開いた。

【コロンビアで見つかったらしい。かなり衰弱して、日本大使館の付近で倒れていたのを発見されたみたいだ】

衰弱?身体は大丈夫なんだろうか?

「衰弱ってのはどういう意味ですか?」

【…亮輔くん。残念だが、お母さんはもう以前のお母さんじゃなくなってる。
どうやら向こうでタチの悪いマフィアの連中相手に売春をしてたみたいだが、問題なのはドラッグ漬けにされて、ほぼ廃人同然らしい】

廃人!まさか凜のようになったのか?

「で、母は日本に帰ってこれるんですか?」

【…うん、だがかなりのドラッグの量を使ったせいか、麻薬中毒者になってしまったらしい。
帰国しても、すぐに面会という訳にはいかないみたいなんだ】

そんな!麻薬中毒なんて…

「で、母は帰国したら逮捕されるんですか?」

【それはまだ分からない。とにかく今はドラッグ漬けになった身体を治療させないと】

「あの、…母は元に戻る事は出きるんでしょうか?」

【…何せドラッグは人を滅ぼすクスリだからね。今の状況では何とも…】

「そんな…」

【亮輔くん、とにかくこれから空港へ行くのだが、君も来れるか?】

「勿論、行きます、行かせてください!」

母が見つかったという知らせより、ドラッグ浸けで変わり果てた姿になった事の方がショックだった。

南米に飛ばされて売春を強いられてたのか…

あの男のせいで!

オレは沢渡さんが迎えに来てくれた車に乗り込んだ。

「お母さんはいわゆる逃亡犯罪人引渡法にはならないから犯罪者という扱いはされないと思うんだが、ただ麻薬中毒という事もあって、どうなるかは警察の判断に任せるしかないみたいだ」

「だってオフクロは、兄にはめられて海外に飛ばされたんですよ!これって人身売買の被害者じゃないですか!沢渡さん、何とかならないですか?」

オレは沢渡さんに頼るのは止めようと誓ったのだが、オフクロの件となれば話は別だ。

「亮輔くん…」

「はい」

沢渡さんの顔がバックミラー越しに沈痛な表情を浮かべ話をした。

「もう1つ君に伝えなければならない事があるんだが」

「何ですか?」

「…実は会社が…つまりお兄さんが社長だった時に、あちこちに店舗を構えたのはいいんだが、どれもこれも業績が悪化して、今や大赤字で会社は倒産寸前なんだ」

会社が?

「それ、ホントなんですか?」

「…亮輔くん、私は君にウソはつかない。いくら私が社長になってその穴埋めをしようと努力したんだが…時すでに遅しで。
仕方なく民事再生法を申請して、大手のグループに吸収される形となってしまった。全く、あんな事さえなければ…」

あんな事っていうは兄の事だろう。
あのクズ、死んでも人に迷惑かけやがって!

「で、沢渡さんはどうなるんですか?」

「…まぁ私は社長としてあの会社にいたが、吸収されたら私はお払い箱だ…せいぜい何の意味もない肩書きの役員になるしかないだろう」

「…そうだったんですか」

「亮輔くん、すまない。君をサポートすると言いながらこんな結果になってしまうとは…」

「…はい」

その間は無言のまま、空港に着いた。

ロビーでは母の帰国を今か今かと待っていた。

「あの便かもしれない」 

沢渡さんは窓の外に着陸しようとしている飛行機を指した。

あの便にオフクロが…

しばらく待っていると、車椅子姿の女性が何人かの警察に囲まれるようにして現れた。

…!あれが母か?

オレは絶句した。

あの妖艶で豊満な肉体の面影は無く、痩せこけ、老婆のように変わり果ててしまった。

「オフクローっ!」

「社長!」

オレも沢渡さんも母に声をかけたが、全く反応は無かった。

母は警察に身柄を拘束され、衰弱しきった身体の治療が先決の為、救急車に乗せられて行った。

…あれが母だと?
ウソだろ?

オレは呆然と立ち尽くしていた。
隣で沢渡さんが目を潤ませ、母が出ていった方向を見つめていた。

まさか、凜を廃人にしたオレに対する因果応報なのか。
それとも兄の怨念なのか。

また頭の中で兄の幻影が浮かび上がった…
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...