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不毛な同棲生活
生きて一生苦しめ!
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「もう、お願いだから止めて…そんな話聞きたくないから…」
ナツのすすり泣く声を遮るかのように、オレは話を止めなかった。
「…オレは、お前の姉ちゃんと知り合ったのは高校へ入学して、担任になったのがきっかけだ…はぁ、はぁ…その頃オレは、育ての母から逃れる為に、別れた父の所に身を寄せ、そこから学校に通っていた…くそっ!また息苦しい、何でだ!何ですぐそう息が苦しくなるんだ!…はぁ、はぁ…辛い」
頓服薬を飲んでも、すぐには効かない。
また鼓動が速くなる。
だけど、ここで話を止めるワケにはいかないんだ。
「ねぇ、もうそんなに苦しいなら喋らないで!それだけ苦しいんだから、辛い過去だという事は分かったから…」
「…その父も、出張先の海外で強盗に遭い、銃で撃たれて死んだ。その報せを受けて、オレは初めて兄と会った。
さっきも言ったが、全く血の繋がってないアニキだ。
ソイツ、初対面のオレに向かって、何て言ったと思う?【お前がオレの弟らしいが、オヤジとは血の繋がりが無いから、財産は全てオレが貰う】だとよ…父親が殺されたのにもかかわらず、いきなり金の話だ。
こんなクズがアニキだったとは、思いもよらなかった。
オレは財産とか、そんな事はどうでもいい。
何故、父親が死んだのに、涙の一つもこぼさないで金だ…そして、このクソッタレなアニキが…はぁ、はぁ、…あぁ~っ!くそっ!何でオレの身体はこんなになっちまったんだよっ!」
喋れば喋る程、どんどん息が荒くなった。
いつから、こんなヤワな身体になったんだ?
ベッドでバタバタともがき苦しんだ。
「ねぇ、亮ちゃん。亮ちゃんがお姉ちゃんの子供だという事は分かったから!だからもう、今日はこれぐらいにして少し休もう?」
ナツは泣きながらオレにしがみつく。
でも、ここで言わなきゃ…
全部喋って、楽になりたい。
「じゃ、これだけは伝えとくよ…お前の姉ちゃんは…もう、この世にいない…はぁ、はぁ」
ナツが一瞬固まった。
でも、言わなきゃならない。
「ちょっと…それ…何?死んだってウソつかないでよ!いい加減にしてよ!」
ナツは認めたくない。
まだ、一度も会った事の無い姉が、既にこの世を去っている事実を。
オレはベッドから起き上がり、リビングにあった、ノート型のパソコンを開いた。
オレは鴨志田の遺言とも言える、あのメールを保存していた。
「ここに全て書いてある…」
オレはナツに、鴨志田のメールの内容を見せた。
ナツは食い入るように、パソコンの画面を見た。
そして、声を上げて泣きじゃくった。
「お姉ちゃん…殺された…うゎぁぁぁ~っ!」
オレにとっても、一番辛いとこを見せ、ナツに掛ける言葉さえ無い。
ナツは泣いた。泣いて泣きまくった。
そしてようやく、薬の効き目が効いてきたのか、徐々に息苦しいのは治まりつつある。
もう、ここを出よう。
リビングにある荷物をまとめ、服を着た。
「…ちょっと、どこ行くのよ?人殺しの弟!」
今まで聞いたことの無い、腹の底から怒りに満ちた、ナツの言葉が突き刺さった。
人殺しの弟…
そうだ、血は繋がってないが、オレは人殺しの弟なんだ。
改めて言われ、実感した。
「そう、オレは人殺しの弟だ…だからもう、ここには居られない。今まで隠して悪かった…いつ言おうか、ずっと迷っていた。でも今、ここで言えて、オレは出ていく…今までありがとうな…」
また、住む場所を探しに出よう。
あの時みたいに、しばらくはホームレス状態になるだろう。
「待ちなさいよ!アンタ、出ていけば済むと思ってるの?ねぇ!」
「そうは思ってない。だけど、ここにいちゃいけないんだ、オレは」
そう。そもそも、ここに来る事自体間違ってたんだ。
沢渡さんの言うとおりだった。
「人殺しの弟のクセに、勝手に出ていかないでよ!」
ナツの目は、明らかにオレに対する、憎しみと怒りの目をしていた。
殺意すら感じた。
そうか…オレ、ここで死ぬのか。
ナツに刺されるのか、首を絞められるのか分からないが、ここで死ぬんだ…
いつも思っていた。誰か、オレを消してくれ、と。
自殺だけはしたくなかった。
それは、自分に負けると思って、それだけは、堪えて生きてきた。
どうせこの先、ろくな事が無い。
だったら、ここで人生を終わらせて欲しい。
死に逝く事への憧れなのか…
オレはキッチンにあった包丁を手にし、ナツに渡した。
「ここを思いきって刺してくれよ。オレが死んでも、姉ちゃんは戻ってこないけど、それで少しでも気が晴れるなら刺してくれよ…もういいや。楽になりたい…」
オレは上半身裸になり、左胸を指した。
ここ目掛けて、刺せと。
ナツは両手で包丁を持ち、構えた。
もうすぐだ、もうすぐで、あの世へ逝ける。
あの世で母親や鴨志田に会えるかな…
いや、会うのはあのクズの兄だろう。あの世で会ったら、思いっきりぶん殴ってやろう。
「早く刺せ!さぁ!オレを殺してくれ。オレは人殺しの弟だ!ナツ!何も考えずに、それをここに突き刺しゃいいんだよ」
ナツは包丁を持ちながら、手が震えていた。
「この、人殺しの弟…人殺しの弟…」
うわ言のように、何度もその言葉を繰り返していた。
オレは左胸を差し出し、ナツは包丁を握ったまま、時間が過ぎていった。
「ねぇ、アンタのアニキは今何してるの?」
「姉ちゃんが亡くなった数日後に、電車に轢かれて死んだよ…しかも肉の塊になって。無様な死に方だよ。バラバラになってな…出来ればオレが殺したかったのに…オレは姉ちゃんの墓を建てた。だが、あのヤローに墓なんて必要ない。
骨をドブ川に投げ捨てたよ。
クズに相応しい場所で眠ってりゃいいんだ」
「…お姉ちゃんのお墓あるの?」
「ある。死ぬ前に場所を教えてやるよ」
オレはメモ帳に、鴨志田の墓がある寺の住所を書いた。
「オレを刺して、その後姉ちゃんの墓前で報告してやれ。人殺しの弟を消してやった、と」
ナツは躊躇してる。
「死んで楽になりたいって言ったよね?死んだら楽になるの、ねぇ」
「うん。もう、この世に未練も何もない。だから死んで楽になるんだよ」
ナツは持っていた包丁を放り投げた。
「…?」
「…だったら。だったら、生きて苦しめ!死ぬのが楽ならば、生きて苦しむのよ!生き地獄になりなさい!」
…死ぬ事すら、許されないのか…
死が幸せだと思っていたオレは、また絶望の淵に堕ちていくのか…
まだ苦しめっ、て事なのだろう。
「ここから抜け出そうだなんて、ムシが良すぎる!ここで…この部屋でずーっと苦しめ!一生苦しめ!それが私の答えよ!」
…そうだよな。今オレを殺しても、ナツは殺人罪で捕まるだけだ。
オレごときのヤツを殺す代わりに、ムショ行きなんて気の毒だしな。
これも天罰なのか、オレは生きる希望を失ったまま、生き続けなきゃならなくなった。
ナツのすすり泣く声を遮るかのように、オレは話を止めなかった。
「…オレは、お前の姉ちゃんと知り合ったのは高校へ入学して、担任になったのがきっかけだ…はぁ、はぁ…その頃オレは、育ての母から逃れる為に、別れた父の所に身を寄せ、そこから学校に通っていた…くそっ!また息苦しい、何でだ!何ですぐそう息が苦しくなるんだ!…はぁ、はぁ…辛い」
頓服薬を飲んでも、すぐには効かない。
また鼓動が速くなる。
だけど、ここで話を止めるワケにはいかないんだ。
「ねぇ、もうそんなに苦しいなら喋らないで!それだけ苦しいんだから、辛い過去だという事は分かったから…」
「…その父も、出張先の海外で強盗に遭い、銃で撃たれて死んだ。その報せを受けて、オレは初めて兄と会った。
さっきも言ったが、全く血の繋がってないアニキだ。
ソイツ、初対面のオレに向かって、何て言ったと思う?【お前がオレの弟らしいが、オヤジとは血の繋がりが無いから、財産は全てオレが貰う】だとよ…父親が殺されたのにもかかわらず、いきなり金の話だ。
こんなクズがアニキだったとは、思いもよらなかった。
オレは財産とか、そんな事はどうでもいい。
何故、父親が死んだのに、涙の一つもこぼさないで金だ…そして、このクソッタレなアニキが…はぁ、はぁ、…あぁ~っ!くそっ!何でオレの身体はこんなになっちまったんだよっ!」
喋れば喋る程、どんどん息が荒くなった。
いつから、こんなヤワな身体になったんだ?
ベッドでバタバタともがき苦しんだ。
「ねぇ、亮ちゃん。亮ちゃんがお姉ちゃんの子供だという事は分かったから!だからもう、今日はこれぐらいにして少し休もう?」
ナツは泣きながらオレにしがみつく。
でも、ここで言わなきゃ…
全部喋って、楽になりたい。
「じゃ、これだけは伝えとくよ…お前の姉ちゃんは…もう、この世にいない…はぁ、はぁ」
ナツが一瞬固まった。
でも、言わなきゃならない。
「ちょっと…それ…何?死んだってウソつかないでよ!いい加減にしてよ!」
ナツは認めたくない。
まだ、一度も会った事の無い姉が、既にこの世を去っている事実を。
オレはベッドから起き上がり、リビングにあった、ノート型のパソコンを開いた。
オレは鴨志田の遺言とも言える、あのメールを保存していた。
「ここに全て書いてある…」
オレはナツに、鴨志田のメールの内容を見せた。
ナツは食い入るように、パソコンの画面を見た。
そして、声を上げて泣きじゃくった。
「お姉ちゃん…殺された…うゎぁぁぁ~っ!」
オレにとっても、一番辛いとこを見せ、ナツに掛ける言葉さえ無い。
ナツは泣いた。泣いて泣きまくった。
そしてようやく、薬の効き目が効いてきたのか、徐々に息苦しいのは治まりつつある。
もう、ここを出よう。
リビングにある荷物をまとめ、服を着た。
「…ちょっと、どこ行くのよ?人殺しの弟!」
今まで聞いたことの無い、腹の底から怒りに満ちた、ナツの言葉が突き刺さった。
人殺しの弟…
そうだ、血は繋がってないが、オレは人殺しの弟なんだ。
改めて言われ、実感した。
「そう、オレは人殺しの弟だ…だからもう、ここには居られない。今まで隠して悪かった…いつ言おうか、ずっと迷っていた。でも今、ここで言えて、オレは出ていく…今までありがとうな…」
また、住む場所を探しに出よう。
あの時みたいに、しばらくはホームレス状態になるだろう。
「待ちなさいよ!アンタ、出ていけば済むと思ってるの?ねぇ!」
「そうは思ってない。だけど、ここにいちゃいけないんだ、オレは」
そう。そもそも、ここに来る事自体間違ってたんだ。
沢渡さんの言うとおりだった。
「人殺しの弟のクセに、勝手に出ていかないでよ!」
ナツの目は、明らかにオレに対する、憎しみと怒りの目をしていた。
殺意すら感じた。
そうか…オレ、ここで死ぬのか。
ナツに刺されるのか、首を絞められるのか分からないが、ここで死ぬんだ…
いつも思っていた。誰か、オレを消してくれ、と。
自殺だけはしたくなかった。
それは、自分に負けると思って、それだけは、堪えて生きてきた。
どうせこの先、ろくな事が無い。
だったら、ここで人生を終わらせて欲しい。
死に逝く事への憧れなのか…
オレはキッチンにあった包丁を手にし、ナツに渡した。
「ここを思いきって刺してくれよ。オレが死んでも、姉ちゃんは戻ってこないけど、それで少しでも気が晴れるなら刺してくれよ…もういいや。楽になりたい…」
オレは上半身裸になり、左胸を指した。
ここ目掛けて、刺せと。
ナツは両手で包丁を持ち、構えた。
もうすぐだ、もうすぐで、あの世へ逝ける。
あの世で母親や鴨志田に会えるかな…
いや、会うのはあのクズの兄だろう。あの世で会ったら、思いっきりぶん殴ってやろう。
「早く刺せ!さぁ!オレを殺してくれ。オレは人殺しの弟だ!ナツ!何も考えずに、それをここに突き刺しゃいいんだよ」
ナツは包丁を持ちながら、手が震えていた。
「この、人殺しの弟…人殺しの弟…」
うわ言のように、何度もその言葉を繰り返していた。
オレは左胸を差し出し、ナツは包丁を握ったまま、時間が過ぎていった。
「ねぇ、アンタのアニキは今何してるの?」
「姉ちゃんが亡くなった数日後に、電車に轢かれて死んだよ…しかも肉の塊になって。無様な死に方だよ。バラバラになってな…出来ればオレが殺したかったのに…オレは姉ちゃんの墓を建てた。だが、あのヤローに墓なんて必要ない。
骨をドブ川に投げ捨てたよ。
クズに相応しい場所で眠ってりゃいいんだ」
「…お姉ちゃんのお墓あるの?」
「ある。死ぬ前に場所を教えてやるよ」
オレはメモ帳に、鴨志田の墓がある寺の住所を書いた。
「オレを刺して、その後姉ちゃんの墓前で報告してやれ。人殺しの弟を消してやった、と」
ナツは躊躇してる。
「死んで楽になりたいって言ったよね?死んだら楽になるの、ねぇ」
「うん。もう、この世に未練も何もない。だから死んで楽になるんだよ」
ナツは持っていた包丁を放り投げた。
「…?」
「…だったら。だったら、生きて苦しめ!死ぬのが楽ならば、生きて苦しむのよ!生き地獄になりなさい!」
…死ぬ事すら、許されないのか…
死が幸せだと思っていたオレは、また絶望の淵に堕ちていくのか…
まだ苦しめっ、て事なのだろう。
「ここから抜け出そうだなんて、ムシが良すぎる!ここで…この部屋でずーっと苦しめ!一生苦しめ!それが私の答えよ!」
…そうだよな。今オレを殺しても、ナツは殺人罪で捕まるだけだ。
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