快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体

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シリアルキラー

殺しのテクニック

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二人はバラック小屋に戻った。

「何だよ…まだ夕方前だってのに、もう帰るのかよ?」

時計は四時前だ。

「そうだが、それが何か?」

ソンヒョクはコートを脱ぐと、壁に掛けた。

「いや…だってまだ、陽も暮れてないのに…普通繁華街って言ったら、夜の街じゃないか?これから賑やかになるっていうのに」

達也が想像していたのは、深夜まで繁華街で遊びまくる事で、すぐに帰ってしまったので、やや拍子抜けだ。

「用事が無い以外は、外出しないからな。遊び足りないなら、遊びに行ってくればいいじゃないか」

ソンヒョクは夜の繁華街に興味が無いらしい。

「一人でウロウロしても、つまんねえよ…ところで、普段どうやって暮らしてんだ?」

薄暗く、埃まみれの中で、どうやって寝泊まりしてるんだろう?飯はどうしてるんだろう?

ソンヒョクに対して疑問だらけだ。

「まさか、このリングでオレが寝泊まりしてると思ったのか?」

ソンヒョクはそう言うと、奥にある床下の扉を開けた。

「ついてこいよ」

ソンヒョクの後を付いて、床下の階段を下りていった。

「…な、何だこの部屋?地下室か?」

地下の間取りは、和室と洋室にダイニングキッチンと、ちょっとした、マンションの一室みたいになっている。

「あの和室でオレは寝てるんだ」

階段の脇にある、六畳程の和室は障子扉になっており、開けると、掛け軸や骨董品、日本刀と純和風の部屋になっていた。

「じゃあ、風呂は?」

「後ろ見てみろよ」

達也は後ろを振り返った。

移動式のバスタブに、シャワーが完備されている。

達也がいる場所は、ダイニングキッチン兼浴室となっている。
中央に階段があって、下りた右側に和室、左側に洋室となっていて、冷蔵庫や調理器具、IH式のコンロが設置してある。

「階段が真ん中にあるのが邪魔なんだが…でも、住んで不便と思った事はないかな」

「バスタブの隣のドアは?」

「ありゃ、トイレだ。しかもウォシュレット式だぞ」

ダイニングキッチンとバスタブが一緒にあるなんて、どうやって風呂入って、料理するのだろうか。

「この地下室から、お湯が出たりするのか?」

「当たり前だろ!ちゃんと蛇口も付いてるだろうが」

「でも、ここで風呂入ったら床が水浸しにならないのか?」

よく見ると、バスタブの下に排水口があった…

「どうだ、達也。ここの地下室?」

どうって言われても、返答に困る。

「ここは欧米じゃないから、部屋に入る時は靴脱ぐだろ。換気扇もあるし、エアコンもある。浴槽はカーテン閉めてりゃ問題ないし、湿気対策もバッチリだ」

一階の埃だらけの地下に、こんな綺麗な部屋があるとは。

「さっき、どうやって相手を仕留めたか?って聞いてきたよな?ちょっと、こっちの洋室に上がってくれ」

ソンヒョクは反対側のドアを開けた。

アンティーク風の棚にコーヒーカップ、本がズラッと並んでいる使い込まれた木目調の本棚、そして壁にはナイフや、見たこともない二股に別れている長い刀、テレビと机が置いてあり、机の上にはパソコンが設置していた。

全体的に明るく、掃除が行き届いた綺麗な部屋だ。
LEDの蛍光灯に、白い壁紙とレンガ調の壁紙が半々に別れていた。

「さっき仕留めたのはコイツだ」

ソンヒョクは机の引き出しから、長さ20㌢程の細い針を達也に見せた。

「随分と細い針だな…裁縫用の針と同じぐらいの細さじゃねえか?」

あまりの細さに、少し離れて見ると針が見えない。

「達也、さっきの殺り方だ。オレとすれ違うように歩いてくれ」

「…?」

達也は言われた通り、ソンヒョクとすれ違うように歩いた。

そして肩がぶつかる。

「…っ!!」

達也は青ざめた。

「な、これを瞬時に行う。しかも、バレないように。あんな場所で刃物振り回すなんて、イカれた通り魔のやる事だ。オレはこれで飯を食ってるから、自然に分からないようにして、仕留める。しかも、失敗は許されない」

ソンヒョクは達也とすれ違った際、左手首を外側に返し、ぶつかったと同時に、相手の左脇辺りに針を刺し込む。
しかも、ポケットに手を入れた状態で…

ソンヒョクは直前にターゲットの左側に移り、わざと肩がぶつかるようにした…

「これがその仕組みだ」

関節の柔らかいソンヒョクだからこそ出来る、手首の返しだけで、的確に心臓の近くにある左脇を刺す。

この長さなら、脇腹から刺しても心臓には十分届く。

ソンヒョクは手首を返したまま、針を達也に向けている。

こうやって瞬時に仕留めるんだ、とジェスチャーしていた。

「…スゲー…何だ、その殺り方?これなら、バレずに殺せる…ソンヒョク、他にも殺り方はあるんだろ?」

「そりゃ、殺り方のバリエーションが豊富じゃないと殺し屋なんて出来っこ無いからな。あの安全靴から刃物が出るようになってるし…どうだ達也、オレの仕事手伝ってみないか?報酬は折半、これでどうだ?」

(殺れるのか、オレに…今のままじゃ、ソンヒョクの足手まといになるだけじゃ…)

「オレ、アンタみたいに上手く出来ねえよ…しかも、人混みの中で狙うなんて…」

達也は躊躇った。
人を殺す事だ、良い気分はしない。
だが、いずれ沢渡と亮輔を殺るつもりだ。達也はしばし考え込んだ。

「最初は、ここでトレーニングから始めればいい。後はオレが仕留める時に、気を引くような行為をして、油断させたりする役目なら問題ないだろ?」

断るべきか?
いや、あの二人を殺る為に、殺しのスキルをアップすればいいんだ。
達也の肚は決まった。

「分かった!ソンヒョクやろうぜ」

この瞬間、達也が殺人鬼へと変貌していった。
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