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第17話 森雪さん部屋に来る
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俺は断ることが出来ないまま森雪さんを連れて自宅であるアパートに向かった。
出来ればこんなところに住んでいるのを知られたくはなかったが、校長室を出た後、水木さんに森雪さんのことを言われ、やりたいようにさせざるを得なくなった。
・
・
・
「ギルドマスターじゃないけど、彼女の精神衛生上、貴方の手が治るまで世話を焼くと言うのを断らないであげて欲しいの。市河さんは森雪さんは悪くないと言うけど、罪悪感はそう簡単に抜けないのよ。特に彼女の場合、必要以上に責任感が強いから、世話を焼くことで精神のバランスを保っていると思うの。取得したスキルから手は再生するはすだと言っていたけど、確証がないからだと思うわ。でもね、それを良いことに酷いことをしたらさすがの私も黙っていないからね・・・」
もちろん水木さんが言っているようなことをしないし、するつもりもない。そのことを言うと、がっかりさせないでねと言って別れた。
普段は表情を変えず淡々と話をし、人によっては能面女と言っているが、そんな水木さんが熱く話しているのに少し驚いた。感情を出せる人なんだと感心し、美人だが近寄りがたい人だったけど、森雪さんのことになるとムキになっていた気がする。
そしてアパートに着いた俺は、包帯が巻かれ、まだ不自然に短い左腕を気にしながら着替えをすることになった。
森雪さんは俺の住まいを見ても何も言わなかったが、カバンを床に置いて、タンスから着替えを出すと森雪さんが「手伝うわね」と言ってくれた。
「いや、そんなことしなくても・・・・」
俺は言いかけたが、彼女は真剣な表情で俺の上着を脱がせるのを手伝ってくれた。
「・・・あっ!すごい、鍛えてるんだね。」
森雪さんは半袖のシャツ姿になった俺の体を見て驚いた様子で言い、その顔が一気に真っ赤になった。
「まぁ、ダンジョンとかもあるし、少しはね・・・底辺の俺には体を鍛える以外強くなれないし・・・」
俺も少し照れながら答えるが、なんとなくいい雰囲気が漂い始めた。彼女はまだ赤くなった顔を伏せつつ、少しの間沈黙が流れる。
その時、不意に俺のスマホが鳴り響いた。画面を見ると母親からの電話だった。
「スーパーで買い物してて、後30分ほどで帰るけど何か欲しいものある?」
母親の少し疲れた様子が、電話越しに伝わってきた。
「いや、特にないよ。気をつけて帰ってきて」
俺は母親にそう答えた後、森雪さんに目を向ける。
「ごめんね。そろそろ母さんが帰ってくるから・・・今日はここまでで大丈夫だよ。」
俺が申し訳なさそうに言うと、森雪さんは少し寂しそうに微笑みながら頷いた。
「うん、わかった。また明日ね。」
そう言って彼女は帰って行った。
彼女の姿が見えなくなるのを確認すると、俺はすぐに武器とスルメイラのカードを手に取り、ダンジョンへ向かう準備を始めた。
母親にダンジョンに行き、夜中になるかもとメールを送るとアパートを出た。
・
・
・
そして何事もなくダンジョンに到着し、直ぐに中へ足を踏み入れる。
足元の床は少しガタガタしていてなんだか嫌な予感がするが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
ダンジョンに入ると、周囲には人の気配がなく静寂が広がっていた。
俺は、手に持ったスルメイラのカードを見つめ、深呼吸をしてから召喚の儀式を行った。
と言いたいが、出でよスルメイラと発するだけだ。
その瞬間、淡い光が広がり、目の前にスルメイラが現れた。
彼女の姿はドレスアーマーをまとった、まるで戦乙女のように凛々しい美人だった。肩には金属の光沢があり、腰のあたりには細かい装飾が施された鎧が見事に輝いている。彼女の顔も端正で、金色の瞳が少し鋭く俺を見つめている。
フルフェイスのヘルメット越しにもろに顔が見えていて、顔が見えるよと言いたいが、そこは黙っておく。
「・・やっぱりカッコいいな。」
俺は思わず声に出していたが、俺の姿を確認した途端にスルメイラは口を開いた・・・
出来ればこんなところに住んでいるのを知られたくはなかったが、校長室を出た後、水木さんに森雪さんのことを言われ、やりたいようにさせざるを得なくなった。
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「ギルドマスターじゃないけど、彼女の精神衛生上、貴方の手が治るまで世話を焼くと言うのを断らないであげて欲しいの。市河さんは森雪さんは悪くないと言うけど、罪悪感はそう簡単に抜けないのよ。特に彼女の場合、必要以上に責任感が強いから、世話を焼くことで精神のバランスを保っていると思うの。取得したスキルから手は再生するはすだと言っていたけど、確証がないからだと思うわ。でもね、それを良いことに酷いことをしたらさすがの私も黙っていないからね・・・」
もちろん水木さんが言っているようなことをしないし、するつもりもない。そのことを言うと、がっかりさせないでねと言って別れた。
普段は表情を変えず淡々と話をし、人によっては能面女と言っているが、そんな水木さんが熱く話しているのに少し驚いた。感情を出せる人なんだと感心し、美人だが近寄りがたい人だったけど、森雪さんのことになるとムキになっていた気がする。
そしてアパートに着いた俺は、包帯が巻かれ、まだ不自然に短い左腕を気にしながら着替えをすることになった。
森雪さんは俺の住まいを見ても何も言わなかったが、カバンを床に置いて、タンスから着替えを出すと森雪さんが「手伝うわね」と言ってくれた。
「いや、そんなことしなくても・・・・」
俺は言いかけたが、彼女は真剣な表情で俺の上着を脱がせるのを手伝ってくれた。
「・・・あっ!すごい、鍛えてるんだね。」
森雪さんは半袖のシャツ姿になった俺の体を見て驚いた様子で言い、その顔が一気に真っ赤になった。
「まぁ、ダンジョンとかもあるし、少しはね・・・底辺の俺には体を鍛える以外強くなれないし・・・」
俺も少し照れながら答えるが、なんとなくいい雰囲気が漂い始めた。彼女はまだ赤くなった顔を伏せつつ、少しの間沈黙が流れる。
その時、不意に俺のスマホが鳴り響いた。画面を見ると母親からの電話だった。
「スーパーで買い物してて、後30分ほどで帰るけど何か欲しいものある?」
母親の少し疲れた様子が、電話越しに伝わってきた。
「いや、特にないよ。気をつけて帰ってきて」
俺は母親にそう答えた後、森雪さんに目を向ける。
「ごめんね。そろそろ母さんが帰ってくるから・・・今日はここまでで大丈夫だよ。」
俺が申し訳なさそうに言うと、森雪さんは少し寂しそうに微笑みながら頷いた。
「うん、わかった。また明日ね。」
そう言って彼女は帰って行った。
彼女の姿が見えなくなるのを確認すると、俺はすぐに武器とスルメイラのカードを手に取り、ダンジョンへ向かう準備を始めた。
母親にダンジョンに行き、夜中になるかもとメールを送るとアパートを出た。
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そして何事もなくダンジョンに到着し、直ぐに中へ足を踏み入れる。
足元の床は少しガタガタしていてなんだか嫌な予感がするが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
ダンジョンに入ると、周囲には人の気配がなく静寂が広がっていた。
俺は、手に持ったスルメイラのカードを見つめ、深呼吸をしてから召喚の儀式を行った。
と言いたいが、出でよスルメイラと発するだけだ。
その瞬間、淡い光が広がり、目の前にスルメイラが現れた。
彼女の姿はドレスアーマーをまとった、まるで戦乙女のように凛々しい美人だった。肩には金属の光沢があり、腰のあたりには細かい装飾が施された鎧が見事に輝いている。彼女の顔も端正で、金色の瞳が少し鋭く俺を見つめている。
フルフェイスのヘルメット越しにもろに顔が見えていて、顔が見えるよと言いたいが、そこは黙っておく。
「・・やっぱりカッコいいな。」
俺は思わず声に出していたが、俺の姿を確認した途端にスルメイラは口を開いた・・・
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