イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

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第28話 森雪の決断

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 土曜日、俺は森雪さんとのダンジョン探索をすることになったが、霧ヶ崎ダンジョンのすぐ近くにあるハンターたちがよく集合場所に使う広場で待ち合わせをしていた。
 ここ霧ヶ崎市にはダンジョンが一つある。また、殆どの市町村にはダンジョンが無いか一つある程度で、2つ以上あるのは少ない。もちろん政令指定都市都市は区での話だ。

 いつもダンジョンに入る時は少し緊張するんだけど、今日は特に緊張感が強かった。

 森雪さんと一緒にダンジョンで戦うのは初めてだし、彼女に俺の強さを見せるなんて、今まで考えたこともなかった。
 この前は戦うために入ったのではないから制服のままだった。

 広場にはすでに10人程のハンターたちが集まっていて、メンバーが揃うのを待っている。
 それぞれのパーティーは作戦を練ったり、準備運動や装備を確認したりしていた。

 俺はそれを横目で見ながら、落ち着かない気持ちでその場に立っていた。ダンジョンに慣れているはずなのに、なんだか今日は特別な気がして心臓が早鐘のように打っていた。

 ふと視線を感じて振り返ると、森雪さんがゆっくりとこちらに歩いてきた。彼女の格好はいつもの制服とは違い、少し動きやすそうな服装をしていて、ハンターとしての準備は万端といった様子だ。

 でも・・・彼女の表情を見るとはやっぱり心配になる。

「おはよう。もう大丈夫なの?」

 森雪さんから声をかけられる前に、俺は先に声をかけた。

「うん、銀治君おはよう。今日はもう大丈夫だから。この前は心配かけたけど、気持ちを切り替えたから」

 森雪さんは慌てて答え、自分に言い聞かせるかのように小さく頷く。

「今日は頑張ろうね。スルメイラさんに会えるのを楽しみにしているの!」

 ふと微笑んだ姿にどきりとした。
 その笑顔に少しだけ心が落ち着いたが、同時に本当に大丈夫なのかな?という不安が胸をよぎった。
 先日はレイド戦での恐怖から足が震え、まともに歩けなかったから・・・

 とはいえ、もう引き返せないし、俺は覚悟を決めて彼女と一緒にダンジョンへ向かうことにした。

「じゃあ、行こうか。」
 
 俺が声をかけると、森雪さんは少し緊張した様子で頷き、俺の隣に並んで歩き始めた。

 そうそう、待ち合わせ場所に現れた森雪さんを見て、俺は少しだけがっかりした。

「そうですよねぇ・・・」

 つい呟いたが、これから何をするのかを思い出すと、その姿に納得した。
 彼女はザッツ女子ハンターの格好をしていて、色気というよりは機能性重視の服装だった。
 ビキニアーマー?そんなものは小説やアニメの中の話でしかない。実際にダンジョンで魔物を倒すハンターがそんな格好をしているわけがない。もちろん、世の中にはセクシー系の配信者がいるらしいけど、俺はその手の配信を見たことがない。うちはネット回線を契約していないから、配信なんて夢のまた夢。できれば生で見てみたいが、現実はこんなもんだ。
 ただ、ドロップ品の中には露出を強いられるのがあるらしいけど、ネタ装備だとクラスのやつと話していたことがある。
 ロマン装備とも言う。

 女子ハンターの人数は、人気の配信系女子やアイドルの影響から年々増え、今ではハンターの半分は女子だと言われている。
 一般的な話として、男より女の方が慎重と言われており、死亡率が違うらしい。
 高校生でハンターを始める男女比は6対4で男が多いと言われているが、無謀だったり、力量を見誤る男が多く死ぬので、30台のハンターの男女比はほぼ半々になると、統計が出ているそうだ。

 森雪さんは前回のトラウマで一度ダンジョンに入れなくなったが、でも今回は違うと言っていたが、少し緊張した様子だ。

 だけど、覚悟を決めているのが伝わってきた。ただ、1階層の奥に進むのにはまだ躊躇があるようで、足取りが少し重い気がする。

 人が少ないところまで進んだ俺たちは、ひと息ついて周りを確認した。
 1階層は成りたての者がダンジョンに慣れるためや、装備を変えた時に試し斬りをする者がくる程度で、ほとんど見向きもされない。
 今日は珍しく他のハンターがいたので、当初の予定より奥に進んだ。
 10分ほど進めば階段がある辺りにまで来ていた。

 ここまで来ればもう大丈夫そうだと判断した俺は、スルメイラを召喚することにした。

「そろそろファミリアを出すよ」

「いよいよなのね。ちょっとドキドキするわ」
  
 俺は森雪さんに向かって頷くと、スルメイラのカードを手に取る。

「出でよスルメイラ!」

 俺が召喚したスルメイラが現れると、森雪さんは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに表情を引き締めて前を向いた。

「スルメイラ、準備はいいか?」

 俺が声をかけると、スルメイラはいつものようにクールな顔で頷いた。森雪さんもスルメイラの実力をこの目で確かめるつもりだろう。
 そうそう、ヘルメットのことは森雪さんへ事前に伝えてある。決してフェイス部分から顔が丸見えだと伝えないでねと。
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