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第74話 死んだダンジョン
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俺は着ぐるみ……いや、魔物らしきその存在にゆっくりと近づいた。
「ねえ、ほんとにやるの?」
浅香が低い声で呟く。
「大丈夫だよ。何かあってもすぐ逃げるから。」
俺はそう答えながら、両手をゆっくりと上げて武器を持たないことをアピールした。
魔物――いや、あの奇妙な存在は、鋭い視線を俺に向けてきたが、襲いかかってくる様子はない。
「……頼むから大人しくしててくれよ。」
俺はそいつの肩にそっと手を置き、矢を抜くジェスチャーをしてみせた。すると、魔物は小さく頷くような仕草を見せた。おっ!手振り身振りでコミュニケーションが取れたっぽい?
「え、通じてるのか?」
疑問を口に出しつつも、俺は意を決して矢に手を伸ばした。指先に触れた矢は思った以上に固く、深く刺さっている。
「これ、抜くの結構キツそうだな……」
力を込めると、魔物は小さく唸り声を上げた。
「ごめん、ごめん!もう少しだけ我慢してくれ!」
紆余曲折ありながら、ようやく矢が抜けた瞬間――その体が淡い光を放ち始めた。
「……え?」
光に包まれた魔物は、ゆっくりと片手を差し出してきた。その手には、小さな輝くオーブが握られている。
「これって……オーブ?」
俺がオーブを受け取ると、魔物はまた小さく頷いた。そして、俺たちを一瞥しふっと姿を消したかと思うと、周囲の景色が突然歪み始めた。
「え、ちょ、待て待て待て!何が起きて――」
次の瞬間、俺の視界が一変した。
目の前には見慣れた景色――生まれ育った家の敷地。だが、そこには家はなく、ただの空き地が広がっていた。
「……ここ、俺の家の跡地……?」
混乱する俺の背後から、仲間たちの声が聞こえてきた。
「これ、どういうこと!?転移したの!?」
友理奈が驚きの声を上げる。
「いや、そもそもあの着ぐるみ、何者だったのよ!」
浅香が憤るように叫ぶ。
弘美が辺りを見回しながら冷静に言った。
「でも、ここが安全な地上なのは確かみたいね。」
俺は未だ手に握られたオーブを見つめながら、静かに息を吐いた。
「……あいつ、俺たちを助けるためにこれを託したのかもしれないな。」
スルメイラが少し不満げに眉をひそめながら言った。
「ですが、ご主人様。この先、また何か試練が待っているような気配がします。慎重に進めるべきです。」
「そうだな……これがただの偶然だとは思えない。あの着ぐるみが何者だったのか、いつか確かめる必要がある。」
俺たちは不安を抱えながらも、この不思議な体験を胸に、新たな冒険の幕開けを感じていた。それと何故スルメイラがダンジョンの外にいるのにカードに戻っていないのか誰も不思議に思わなかった。
視界が一変し、地上に戻った俺はため息をつきつつ見上げると、そこには青空が広がり、周囲には見覚えのある景色が広がっている。
「……ここ、俺たちの知っている地上だよな?」
俺は呆然としながら呟いた。
目の前にはダンジョンの入り口が以前と変わらず存在している。しかし、どこか違和感があった。
「なんか……変よね?」
浅香が険しい顔で言った。
「確かに、何かがおかしい。」
友理奈が入り口を指差しながら続けた。
「魔力の流れが感じられない。こんなの、今までなかったわ。」
「まさか、これ……死んだダンジョン?」
弘美が驚きと戸惑いを交えた声で言った。
「死んだダンジョン?」
俺が聞き返すと、弘美が小さく頷きながら説明してくれた。
「ダンジョンは基本的に無限に広がり続けるって言われてるけど、極稀にコアが破壊されたりして、魔力が失われるとこうなることがあるの。そして1時間ほどでなくなるそうよ。」
「……つまり、もうあの中には入れないってことか?」
「そうね。」友理奈が肩をすくめる。
「魔力がないから、もう魔物も生まれないし、冒険者が入る価値もない。ただの洞窟になったって感じかな。」
浅香が呆れたように言った。
「でもさ、こんな話聞いたことある?ダンジョンのコアなんて触ることすら普通できないのに。」
俺はしばらく黙って考えた後、手に持っていた矢とオーブを見つめたが、浅香の言うことは正確には違う。自らの意思でコアに触れることを禁止されているだけであり、触れようと思えば触れられるのだ。
「……もしかして、あの着ぐるみみたいなやつが関係してるのか?」
スルメイラが静かに頷いた。
「可能性は高いです、ご主人様。先ほどの転移も、ただの偶然ではないはずです。」
俺たちはしばらくその場で立ち尽くし、変わらないように見えるダンジョンの入り口を見つめ続けた。しかし、その奥にはもう何もない。俺たちが見つけたオーブと、この「死んだダンジョン」。それらの関係は謎のままだった。
「……まぁ、とりあえず帰るか。」
俺は静かに言った。
「それがいいかもね。結局、ここで立ち止まってても何もわからないし。」
友理奈が同意する。
浅香が小さくため息をつきながら付け加えた。
「でもさ、ほんとに何だったんだろうね、あの着ぐるみみたいなやつ。」
弘美がふっと笑った。
「そのうち、また何かの形で答えが出るかもしれないわ。」
しかし俺たちは首を振り再び歩き出した。空は青く澄んでいるが、俺たちの胸にはまだ晴れない疑問が渦巻いていており、その答えを求めてやまなかった。
「ねえ、ほんとにやるの?」
浅香が低い声で呟く。
「大丈夫だよ。何かあってもすぐ逃げるから。」
俺はそう答えながら、両手をゆっくりと上げて武器を持たないことをアピールした。
魔物――いや、あの奇妙な存在は、鋭い視線を俺に向けてきたが、襲いかかってくる様子はない。
「……頼むから大人しくしててくれよ。」
俺はそいつの肩にそっと手を置き、矢を抜くジェスチャーをしてみせた。すると、魔物は小さく頷くような仕草を見せた。おっ!手振り身振りでコミュニケーションが取れたっぽい?
「え、通じてるのか?」
疑問を口に出しつつも、俺は意を決して矢に手を伸ばした。指先に触れた矢は思った以上に固く、深く刺さっている。
「これ、抜くの結構キツそうだな……」
力を込めると、魔物は小さく唸り声を上げた。
「ごめん、ごめん!もう少しだけ我慢してくれ!」
紆余曲折ありながら、ようやく矢が抜けた瞬間――その体が淡い光を放ち始めた。
「……え?」
光に包まれた魔物は、ゆっくりと片手を差し出してきた。その手には、小さな輝くオーブが握られている。
「これって……オーブ?」
俺がオーブを受け取ると、魔物はまた小さく頷いた。そして、俺たちを一瞥しふっと姿を消したかと思うと、周囲の景色が突然歪み始めた。
「え、ちょ、待て待て待て!何が起きて――」
次の瞬間、俺の視界が一変した。
目の前には見慣れた景色――生まれ育った家の敷地。だが、そこには家はなく、ただの空き地が広がっていた。
「……ここ、俺の家の跡地……?」
混乱する俺の背後から、仲間たちの声が聞こえてきた。
「これ、どういうこと!?転移したの!?」
友理奈が驚きの声を上げる。
「いや、そもそもあの着ぐるみ、何者だったのよ!」
浅香が憤るように叫ぶ。
弘美が辺りを見回しながら冷静に言った。
「でも、ここが安全な地上なのは確かみたいね。」
俺は未だ手に握られたオーブを見つめながら、静かに息を吐いた。
「……あいつ、俺たちを助けるためにこれを託したのかもしれないな。」
スルメイラが少し不満げに眉をひそめながら言った。
「ですが、ご主人様。この先、また何か試練が待っているような気配がします。慎重に進めるべきです。」
「そうだな……これがただの偶然だとは思えない。あの着ぐるみが何者だったのか、いつか確かめる必要がある。」
俺たちは不安を抱えながらも、この不思議な体験を胸に、新たな冒険の幕開けを感じていた。それと何故スルメイラがダンジョンの外にいるのにカードに戻っていないのか誰も不思議に思わなかった。
視界が一変し、地上に戻った俺はため息をつきつつ見上げると、そこには青空が広がり、周囲には見覚えのある景色が広がっている。
「……ここ、俺たちの知っている地上だよな?」
俺は呆然としながら呟いた。
目の前にはダンジョンの入り口が以前と変わらず存在している。しかし、どこか違和感があった。
「なんか……変よね?」
浅香が険しい顔で言った。
「確かに、何かがおかしい。」
友理奈が入り口を指差しながら続けた。
「魔力の流れが感じられない。こんなの、今までなかったわ。」
「まさか、これ……死んだダンジョン?」
弘美が驚きと戸惑いを交えた声で言った。
「死んだダンジョン?」
俺が聞き返すと、弘美が小さく頷きながら説明してくれた。
「ダンジョンは基本的に無限に広がり続けるって言われてるけど、極稀にコアが破壊されたりして、魔力が失われるとこうなることがあるの。そして1時間ほどでなくなるそうよ。」
「……つまり、もうあの中には入れないってことか?」
「そうね。」友理奈が肩をすくめる。
「魔力がないから、もう魔物も生まれないし、冒険者が入る価値もない。ただの洞窟になったって感じかな。」
浅香が呆れたように言った。
「でもさ、こんな話聞いたことある?ダンジョンのコアなんて触ることすら普通できないのに。」
俺はしばらく黙って考えた後、手に持っていた矢とオーブを見つめたが、浅香の言うことは正確には違う。自らの意思でコアに触れることを禁止されているだけであり、触れようと思えば触れられるのだ。
「……もしかして、あの着ぐるみみたいなやつが関係してるのか?」
スルメイラが静かに頷いた。
「可能性は高いです、ご主人様。先ほどの転移も、ただの偶然ではないはずです。」
俺たちはしばらくその場で立ち尽くし、変わらないように見えるダンジョンの入り口を見つめ続けた。しかし、その奥にはもう何もない。俺たちが見つけたオーブと、この「死んだダンジョン」。それらの関係は謎のままだった。
「……まぁ、とりあえず帰るか。」
俺は静かに言った。
「それがいいかもね。結局、ここで立ち止まってても何もわからないし。」
友理奈が同意する。
浅香が小さくため息をつきながら付け加えた。
「でもさ、ほんとに何だったんだろうね、あの着ぐるみみたいなやつ。」
弘美がふっと笑った。
「そのうち、また何かの形で答えが出るかもしれないわ。」
しかし俺たちは首を振り再び歩き出した。空は青く澄んでいるが、俺たちの胸にはまだ晴れない疑問が渦巻いていており、その答えを求めてやまなかった。
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