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第21話 DIYアーマー計画(安物の悲哀)
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快適な朝食で(炭水化物!)心身ともに充実した俺は、すぐさま次の作業に取り掛かった。
今日やることは決まっている。「鎧作り」だ。
昨日のホーンラビットとの戦闘で、防具の重要性は骨身に染みた。脛(すね)と太ももはプロテクターで守ったが、急所である胴体がガラ空きだ。
俺はノートに書き出した計画案を眺め、まずは主となる素材の選定から始めた。
【胸当て素材候補】
A. 『合成ゴムマット(厚さ5mm)』:100 PT
B. 『鉄板(厚さ1.6mm)』:300 PT
ゴムは衝撃吸収に優れているが、突き刺す攻撃には弱いかもしれない。これより厚いものは、重すぎて実用性がなくなる。鉄は硬いが、重く、加工が難しい。
俺はまず、解体作業の反省から、新たな刃物を購入することにした。
当然、「武器」なんてカテゴリはない。探すのは「実用品」だ。
「キャンプ・アウトドア」カテゴリを見る。薪割り(バトニング)に使うための、極厚のナイフや斧が並んでいる。
俺が選んだのはこれだ。
『薪割り用 ブッシュクラフトナイフ(フルタング・極厚刃)』:4,000 PT
刃厚が5mmもある鉄の塊だ。
本来は薪を割るための道具だが、これならハンマーで叩いても折れないし、岩のように頑丈だ。実質的な武器として十分通用する。
4,000ポイントは痛い出費だが、命には代えられない。
実験開始。
届いたばかりのゴムマットを、カマドの壁に立てかける。
俺は数メートル離れ、真新しいナイフを、えい、と投げてみた。
ブスリ。
厚みのある刃が、音もなくゴムマットを貫通し、深々と突き刺さった。
「……ダメだな」
5mmのゴムなど、紙同然か。ホーンラビットの角なら、もっと容易く貫くだろう。
次に、鉄板を同じように立てかける。同じように、ナイフを投げる。
カキン!
甲高い音を立てて、ナイフは弾かれた。鉄板には小さな傷がついた程度だ。
「……まあ、そうだよな」
結果は明白だった。防御力は、圧倒的に鉄板だ。
俺は胸当ての主素材を鉄板に決定した。
次に、防御範囲の拡大。
一枚の板で胸だけ守っても、脇腹をやられたら終わりだ。可動域を確保しつつ、防御力を上げたい。
俺は「荷役・運搬用品」カテゴリから『吊り下げ用スチールチェーン(10m)』を購入した。これを脇腹に垂らせば、簡易的な鎖帷子(くさりかたびら)になるはずだ。
チェーンを切断するための『ボルトクリッパー』と、固定用の『革紐』もカートに入れる。
材料は揃った。次は、最大の難関である「加工」だ。
鉄板に、鎖と革紐を通すための穴を開けなければならない。相手は1.6mmの鉄板だ。キリや釘で開く相手ではない。
俺はショッピング画面の「電動工具」カテゴリを開いた。
狙うは、信頼と実績のプロ用ブランド。
現場の職人が愛用する、あの独特のティールブルー(青緑色)のボディ。
『MAKOTA(マコタ)』だ。
ハイパワー、高耐久、そして急速充電。漢(おとこ)の憧れ。
価格は25,000ポイント。高いが、これからの長いサバイバルを考えれば安い投資だ。
俺は意気揚々と、[カートに入れる] ボタンをタップした。
ブブーッ。
無機質な拒絶音が響き、赤い警告ウィンドウがポップアップした。
『※現在のランクでは「プロ用・業務用機材」は未開放(ロック)のため購入できません』
「……はぁぁぁっ!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
嘘だろ。ここでも制限かよ!
商品は表示されているのに、システムが「お前にはまだ早い」と弾くのだ。
どうやら俺のランクでは、ホームセンターの中でも「家庭用(DIY用)」のグレードまでしか解放されていないらしい。
「くそっ、マコタはお預けかよ!」
文句を言ってもロックは解除されない。
俺は渋々、検索条件を「価格の安い順」に並べ替えた。
トップに出てきたのは、聞いたこともないメーカーの、安っぽいオレンジ色のドリルだった。
『家庭用 充電式ドリルドライバー(バッテリー1個・ACアダプター付)』:3,980 PT
スペックを見る。トルク(回転力)もバッテリー容量も、マコタの半分以下。
付属品には「ACアダプター」とある。本体のジャックに直接挿して充電するタイプだ。
「……ACアダプター、か」
俺はため息をついた。
付属はしている。だが、今の俺には「充電器」としての意味がない。
この洞窟にコンセント(商用電源)なんて気の利いたものはないし、俺はまだ『ポータブル電源』や『発電機』を買っていないからだ。
つまり、一度バッテリーが切れたら、再充電は不可能。
頼みの綱は、メーカーが出荷時に行う『品質保持のための充電』のみだ。
リチウムイオン電池は、空っぽ(過放電)の状態で放置すると著しく劣化し、使い物にならなくなる。
だから通常、メーカーは在庫保管中にバッテリーが死なないよう、ある程度の充電――一般的には60~90%程度を充電して出荷するはずだ。
「頼む……半分とかやめてくれよ。せめて7割、定石通り入っていてくれ……!」
安物メーカーだから管理が適当で、放電しきっている可能性もある。俺は祈るような気持ちでカートに入れた。
「……予備も買っておくか。あと、肝心の『刃』もな」
俺は関連商品にあった『専用スペアバッテリーパック』(1,000 PT)を追加する。
そして、工具コーナーから『鉄工用ドリルビットセット(チタンコーティング)』を選択した。安物のドリルに付属している木工用の刃では、鉄板に穴を開ける前に折れるのがオチだ。ここはケチれない。
「……ポチっとな」
ドサリと荷物が届く。
俺は緊張した手つきで、届いたばかりの安物ドリルに、付属のバッテリーを装着した。
トリガーを引いてみる。
ウィ……ン……。
どこか頼りない、弱々しい回転音が響く。軸も少しブレている気がする。
俺は恐る恐る、バッテリー残量のインジケーターを見た。
3つの目盛りのうち、2つが点灯している。
「……7割、か」
よかった。セオリー通りだ。このメーカー、品質管理はまともらしい。
だが、安堵と同時に、厳しい現実も突きつけられる。
「たった7割しかない」のだ。
手元には、今装着している「本体付属」と、追加で買った「予備」の計2個。
どちらも7割程度の残量だとすれば、実質バッテリー1.4個分でこの作業をやり切らなければならない。
「……念のため、もう一個買っておくか」
保険だ。途中で電気が尽きたら、全てが水の泡になる。
俺は再びショッピング画面を開き、さっきの『専用スペアバッテリーパック』をカートに入れようとした。
ブブーッ。
無機質な拒絶音が響き、赤い警告ウィンドウがポップアップした。
『在庫切れ(Sold Out)』
『※在庫数不足のため、購入できません』
「……は?」
画面を更新すると、商品ページには無情な【Sold Out】の文字。
まさか、さっき俺が買ったのが、ラスイチ(最後の一つ)だったのか?
こんな無名メーカーの、いつ廃盤になっても不思議じゃない製品の在庫……再入荷なんて期待できない。
「……マジかよ」
背筋が凍りついた。
つまり、俺の手持ちは、この「7割残量のバッテリー」がたったの2個。
これだけで、分厚い鉄板との勝負を決めなければならない。
失敗は許されない。途中でバッテリーが尽きれば、ドリルはただの文鎮と化し、鎧は完成せず、俺は裸同然で戦うことになる。
「ふう、やるしかないな」
俺は覚悟を決めて、鉄板に向き直った。
総力戦だ。俺の知識と多少の無理にて、残り少ないバッテリーの、ギリギリの戦いが始まった。
今日やることは決まっている。「鎧作り」だ。
昨日のホーンラビットとの戦闘で、防具の重要性は骨身に染みた。脛(すね)と太ももはプロテクターで守ったが、急所である胴体がガラ空きだ。
俺はノートに書き出した計画案を眺め、まずは主となる素材の選定から始めた。
【胸当て素材候補】
A. 『合成ゴムマット(厚さ5mm)』:100 PT
B. 『鉄板(厚さ1.6mm)』:300 PT
ゴムは衝撃吸収に優れているが、突き刺す攻撃には弱いかもしれない。これより厚いものは、重すぎて実用性がなくなる。鉄は硬いが、重く、加工が難しい。
俺はまず、解体作業の反省から、新たな刃物を購入することにした。
当然、「武器」なんてカテゴリはない。探すのは「実用品」だ。
「キャンプ・アウトドア」カテゴリを見る。薪割り(バトニング)に使うための、極厚のナイフや斧が並んでいる。
俺が選んだのはこれだ。
『薪割り用 ブッシュクラフトナイフ(フルタング・極厚刃)』:4,000 PT
刃厚が5mmもある鉄の塊だ。
本来は薪を割るための道具だが、これならハンマーで叩いても折れないし、岩のように頑丈だ。実質的な武器として十分通用する。
4,000ポイントは痛い出費だが、命には代えられない。
実験開始。
届いたばかりのゴムマットを、カマドの壁に立てかける。
俺は数メートル離れ、真新しいナイフを、えい、と投げてみた。
ブスリ。
厚みのある刃が、音もなくゴムマットを貫通し、深々と突き刺さった。
「……ダメだな」
5mmのゴムなど、紙同然か。ホーンラビットの角なら、もっと容易く貫くだろう。
次に、鉄板を同じように立てかける。同じように、ナイフを投げる。
カキン!
甲高い音を立てて、ナイフは弾かれた。鉄板には小さな傷がついた程度だ。
「……まあ、そうだよな」
結果は明白だった。防御力は、圧倒的に鉄板だ。
俺は胸当ての主素材を鉄板に決定した。
次に、防御範囲の拡大。
一枚の板で胸だけ守っても、脇腹をやられたら終わりだ。可動域を確保しつつ、防御力を上げたい。
俺は「荷役・運搬用品」カテゴリから『吊り下げ用スチールチェーン(10m)』を購入した。これを脇腹に垂らせば、簡易的な鎖帷子(くさりかたびら)になるはずだ。
チェーンを切断するための『ボルトクリッパー』と、固定用の『革紐』もカートに入れる。
材料は揃った。次は、最大の難関である「加工」だ。
鉄板に、鎖と革紐を通すための穴を開けなければならない。相手は1.6mmの鉄板だ。キリや釘で開く相手ではない。
俺はショッピング画面の「電動工具」カテゴリを開いた。
狙うは、信頼と実績のプロ用ブランド。
現場の職人が愛用する、あの独特のティールブルー(青緑色)のボディ。
『MAKOTA(マコタ)』だ。
ハイパワー、高耐久、そして急速充電。漢(おとこ)の憧れ。
価格は25,000ポイント。高いが、これからの長いサバイバルを考えれば安い投資だ。
俺は意気揚々と、[カートに入れる] ボタンをタップした。
ブブーッ。
無機質な拒絶音が響き、赤い警告ウィンドウがポップアップした。
『※現在のランクでは「プロ用・業務用機材」は未開放(ロック)のため購入できません』
「……はぁぁぁっ!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
嘘だろ。ここでも制限かよ!
商品は表示されているのに、システムが「お前にはまだ早い」と弾くのだ。
どうやら俺のランクでは、ホームセンターの中でも「家庭用(DIY用)」のグレードまでしか解放されていないらしい。
「くそっ、マコタはお預けかよ!」
文句を言ってもロックは解除されない。
俺は渋々、検索条件を「価格の安い順」に並べ替えた。
トップに出てきたのは、聞いたこともないメーカーの、安っぽいオレンジ色のドリルだった。
『家庭用 充電式ドリルドライバー(バッテリー1個・ACアダプター付)』:3,980 PT
スペックを見る。トルク(回転力)もバッテリー容量も、マコタの半分以下。
付属品には「ACアダプター」とある。本体のジャックに直接挿して充電するタイプだ。
「……ACアダプター、か」
俺はため息をついた。
付属はしている。だが、今の俺には「充電器」としての意味がない。
この洞窟にコンセント(商用電源)なんて気の利いたものはないし、俺はまだ『ポータブル電源』や『発電機』を買っていないからだ。
つまり、一度バッテリーが切れたら、再充電は不可能。
頼みの綱は、メーカーが出荷時に行う『品質保持のための充電』のみだ。
リチウムイオン電池は、空っぽ(過放電)の状態で放置すると著しく劣化し、使い物にならなくなる。
だから通常、メーカーは在庫保管中にバッテリーが死なないよう、ある程度の充電――一般的には60~90%程度を充電して出荷するはずだ。
「頼む……半分とかやめてくれよ。せめて7割、定石通り入っていてくれ……!」
安物メーカーだから管理が適当で、放電しきっている可能性もある。俺は祈るような気持ちでカートに入れた。
「……予備も買っておくか。あと、肝心の『刃』もな」
俺は関連商品にあった『専用スペアバッテリーパック』(1,000 PT)を追加する。
そして、工具コーナーから『鉄工用ドリルビットセット(チタンコーティング)』を選択した。安物のドリルに付属している木工用の刃では、鉄板に穴を開ける前に折れるのがオチだ。ここはケチれない。
「……ポチっとな」
ドサリと荷物が届く。
俺は緊張した手つきで、届いたばかりの安物ドリルに、付属のバッテリーを装着した。
トリガーを引いてみる。
ウィ……ン……。
どこか頼りない、弱々しい回転音が響く。軸も少しブレている気がする。
俺は恐る恐る、バッテリー残量のインジケーターを見た。
3つの目盛りのうち、2つが点灯している。
「……7割、か」
よかった。セオリー通りだ。このメーカー、品質管理はまともらしい。
だが、安堵と同時に、厳しい現実も突きつけられる。
「たった7割しかない」のだ。
手元には、今装着している「本体付属」と、追加で買った「予備」の計2個。
どちらも7割程度の残量だとすれば、実質バッテリー1.4個分でこの作業をやり切らなければならない。
「……念のため、もう一個買っておくか」
保険だ。途中で電気が尽きたら、全てが水の泡になる。
俺は再びショッピング画面を開き、さっきの『専用スペアバッテリーパック』をカートに入れようとした。
ブブーッ。
無機質な拒絶音が響き、赤い警告ウィンドウがポップアップした。
『在庫切れ(Sold Out)』
『※在庫数不足のため、購入できません』
「……は?」
画面を更新すると、商品ページには無情な【Sold Out】の文字。
まさか、さっき俺が買ったのが、ラスイチ(最後の一つ)だったのか?
こんな無名メーカーの、いつ廃盤になっても不思議じゃない製品の在庫……再入荷なんて期待できない。
「……マジかよ」
背筋が凍りついた。
つまり、俺の手持ちは、この「7割残量のバッテリー」がたったの2個。
これだけで、分厚い鉄板との勝負を決めなければならない。
失敗は許されない。途中でバッテリーが尽きれば、ドリルはただの文鎮と化し、鎧は完成せず、俺は裸同然で戦うことになる。
「ふう、やるしかないな」
俺は覚悟を決めて、鉄板に向き直った。
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