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第36話 生活の再構築と「共有」の仕様
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俺たち二人のサバイバルが本格的に始まる。
だが、その前に解決しなければならない問題が山積みだった。
「よし、まずは必要なものを買うぞ。破れ、汚れたセーラー服のままというわけにはいかないからな。着替えを揃えよう」
俺は意気揚々と『異世界ショッピング』のウィンドウを開いた。だが、雫ちゃんはきょとんとした顔で、何もない空間を見つめているだけだ。
「……困ったな。やっぱり俺が操作している画面、君には見えないんだな」
「は、はい……えっと……」
雫ちゃんは少し言いにくそうに口を開いた。
「あの……その画面を、佐東さんのスマホで写したりとか……スクリーンショット、とかは、できませんか?」
「……! おお、そうか、それがあるか!」
俺は膝を打った。スマホの画面を画像として保存する機能。一ヶ月、この不可思議なシステムと格闘してきた俺にとって、それは盲点だった。品証マンとして「そうか、それがあったか!」と、今の若い子の発想の柔軟さに感心しながら、俺は期待を込めてスマホのボタンを操作した。
カシャッ!
軽快なシャッター音が響く。だが、保存された画像を確認した俺は、思わず眉をひそめた。
「……ダメだ。何も写ってない。ただの真っ白な画像だ。それ以前にギフトの画面を写し出せない」
「えっ……ダメ、なんですか?」
「どうやらこのシステム、徹底して秘匿性を守ってるらしいな。カメラを通したキャプチャは弾かれる『仕様』のようだ。ユーザー本人以外には視覚情報すら渡さない。徹底してるよ」
品証マンとしては納得のセキュリティだが、今はそれが恨めしい。俺が唸りながらスマホをいじっていた、その時だった。
雫ちゃんがおずおずと手を伸ばし、膝の上に置いていた俺の左手に、そっと自分の手を重ねた。
「あっ……! 見えます! 佐東さん、見えますよ!」
「えっ!? 何が?」
「画面です! さっきまで何もなかったところに、青い光の板が……!ひょっとしたら触れている人ならと思ったんです」
驚いて彼女を見ると、手が触れ合っているその瞬間だけ、彼女の瞳がモニターの光を反射してキラキラと揺れていた。俺が驚いてパッと手を離すと、「あ、消えました」と雫ちゃんが残念そうに言う。
「……なるほど。触れている間だけ、認識が共有される仕組みか」
俺は検証のために、今度は作業着の袖越しに彼女の腕を軽く叩いてみた。「どうだ?」と聞くが、彼女は首を横に振る。「見えません」。
再び、俺の左手の甲に、彼女がそっと指先を滑らせる。すると「あ、映りました!」と彼女の顔が明るくなった。
布越しは不可。接触の場所や仕方は問わないが、直接の肌への接触限定。
どうやらこれが、このシステムにおける「パーティ共有」の厳密な仕様らしい。
(……いや、仕様なのは分かったが。ずっと触れてなきゃいけないのか)
俺が右指で画面を操作する間、雫ちゃんは俺の左手に自分の手を重ね、真剣な表情でウィンドウを覗き込んでいる。
五十歳のおっさんと、十七歳の女子高生。俺が猛烈な気恥ずかしさに襲われている間にも、難関大学を狙える賢さを持つ彼女は「じゃあ、失礼します。これなら両手が使えますね」と、事務的な手つきで俺の左手をホールドした。彼女にとって、今は羞恥心よりも情報の共有と、生きるためのリソース確保の方が優先順位が高いらしい。
「よし、じゃあ……今のうちに選んでくれ。必要なものは全部買おう」
俺たちは三段脚立に並んで座り、肌が触れ合ったまま、俺がスワイプする画面を二人で覗き込む。
ポイントは今のところ潤沢にある。なにせブルールボアを撃破したところだからな!
ポイントで買った冷たい金属やプラスチックの製品が、俺たちの拠点に少しずつ「生活」の色を取り戻していく。それは、ただ生き延びるためだけのサバイバルから、共に「人間らしく生きる」ためのサバイバルへと、俺たちの関係が進化し始めた、確かな証だった。
【如月 雫:ステータス】
レベル: 10
筋力: 115
賢さ: 120
敏捷: 135
体力: 120
魔力: 340
ギフト: 『聖女の祈り』『異世界言語』
スキル: 聖魔法(中)、浄化、光の盾
【佐東 柾:ステータス】
レベル: 20
筋力: 380
賢さ: 83
敏捷: 228
体力: 221
魔力: 65
ギフト: 『異世界ショッピング』
スキル: 毒耐性(小)、聖魔法(小)、風魔法(小)、シールドバッシュ、索敵
だが、その前に解決しなければならない問題が山積みだった。
「よし、まずは必要なものを買うぞ。破れ、汚れたセーラー服のままというわけにはいかないからな。着替えを揃えよう」
俺は意気揚々と『異世界ショッピング』のウィンドウを開いた。だが、雫ちゃんはきょとんとした顔で、何もない空間を見つめているだけだ。
「……困ったな。やっぱり俺が操作している画面、君には見えないんだな」
「は、はい……えっと……」
雫ちゃんは少し言いにくそうに口を開いた。
「あの……その画面を、佐東さんのスマホで写したりとか……スクリーンショット、とかは、できませんか?」
「……! おお、そうか、それがあるか!」
俺は膝を打った。スマホの画面を画像として保存する機能。一ヶ月、この不可思議なシステムと格闘してきた俺にとって、それは盲点だった。品証マンとして「そうか、それがあったか!」と、今の若い子の発想の柔軟さに感心しながら、俺は期待を込めてスマホのボタンを操作した。
カシャッ!
軽快なシャッター音が響く。だが、保存された画像を確認した俺は、思わず眉をひそめた。
「……ダメだ。何も写ってない。ただの真っ白な画像だ。それ以前にギフトの画面を写し出せない」
「えっ……ダメ、なんですか?」
「どうやらこのシステム、徹底して秘匿性を守ってるらしいな。カメラを通したキャプチャは弾かれる『仕様』のようだ。ユーザー本人以外には視覚情報すら渡さない。徹底してるよ」
品証マンとしては納得のセキュリティだが、今はそれが恨めしい。俺が唸りながらスマホをいじっていた、その時だった。
雫ちゃんがおずおずと手を伸ばし、膝の上に置いていた俺の左手に、そっと自分の手を重ねた。
「あっ……! 見えます! 佐東さん、見えますよ!」
「えっ!? 何が?」
「画面です! さっきまで何もなかったところに、青い光の板が……!ひょっとしたら触れている人ならと思ったんです」
驚いて彼女を見ると、手が触れ合っているその瞬間だけ、彼女の瞳がモニターの光を反射してキラキラと揺れていた。俺が驚いてパッと手を離すと、「あ、消えました」と雫ちゃんが残念そうに言う。
「……なるほど。触れている間だけ、認識が共有される仕組みか」
俺は検証のために、今度は作業着の袖越しに彼女の腕を軽く叩いてみた。「どうだ?」と聞くが、彼女は首を横に振る。「見えません」。
再び、俺の左手の甲に、彼女がそっと指先を滑らせる。すると「あ、映りました!」と彼女の顔が明るくなった。
布越しは不可。接触の場所や仕方は問わないが、直接の肌への接触限定。
どうやらこれが、このシステムにおける「パーティ共有」の厳密な仕様らしい。
(……いや、仕様なのは分かったが。ずっと触れてなきゃいけないのか)
俺が右指で画面を操作する間、雫ちゃんは俺の左手に自分の手を重ね、真剣な表情でウィンドウを覗き込んでいる。
五十歳のおっさんと、十七歳の女子高生。俺が猛烈な気恥ずかしさに襲われている間にも、難関大学を狙える賢さを持つ彼女は「じゃあ、失礼します。これなら両手が使えますね」と、事務的な手つきで俺の左手をホールドした。彼女にとって、今は羞恥心よりも情報の共有と、生きるためのリソース確保の方が優先順位が高いらしい。
「よし、じゃあ……今のうちに選んでくれ。必要なものは全部買おう」
俺たちは三段脚立に並んで座り、肌が触れ合ったまま、俺がスワイプする画面を二人で覗き込む。
ポイントは今のところ潤沢にある。なにせブルールボアを撃破したところだからな!
ポイントで買った冷たい金属やプラスチックの製品が、俺たちの拠点に少しずつ「生活」の色を取り戻していく。それは、ただ生き延びるためだけのサバイバルから、共に「人間らしく生きる」ためのサバイバルへと、俺たちの関係が進化し始めた、確かな証だった。
【如月 雫:ステータス】
レベル: 10
筋力: 115
賢さ: 120
敏捷: 135
体力: 120
魔力: 340
ギフト: 『聖女の祈り』『異世界言語』
スキル: 聖魔法(中)、浄化、光の盾
【佐東 柾:ステータス】
レベル: 20
筋力: 380
賢さ: 83
敏捷: 228
体力: 221
魔力: 65
ギフト: 『異世界ショッピング』
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