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第65話 真夜中の来訪者と高難度のDIY
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ささやかで、そして最高に贅沢な俺と雫の祝勝会は、温かい湯気と共に続いていた。
食事が終わり、片付けも済んだ後、さすがに疲労がピークに達したのだろう。雫は、あくびを噛み殺しながら、少し名残惜しそうに、自分のテントへと向かった。
「おやすみなさい、佐東さん」
「ああ、おやすみ」
俺は一人になった拠点で、カマドの残り火を眺めていた。
勝った。
あのミノタウロスに。
だが、それ以上に、今日の宴が、雫のあの嬉しそうな笑顔が、俺の心を温めていた。
俺もベッドに潜り込み、心地よい疲労感に身を任せるが、その安息は、長くは続かなかった。
テントのジッパーが、そろりと開く音。
そして小さな足音が、俺のベッドへと近づいてくる。
俺はいつものことながら、気が付いていないふりをした。
「あの……佐東さん……」
か細い、伺うような声。
「……今日だけ……一緒に寝ても、よいですか?」
いつも勝手に入ってくるくせに、今夜は、やけにしおらしい。
俺は、ため息をついた。朝、あれだけ自分の感情と葛藤したというのに。
だが、断れるはずもなかった。
「……ダメだと言っても、どうせ入ってくるんだろ?」
俺がそう言うと、彼女は「はい……」と、正直に、しかし申し訳なさそうに頷いた。
俺は背中を向けたまま場所を空ける。
シーツがめくれ、心地よいぬくもりが、再び俺の背中に寄り添ってきた。
「ただし」
釘を刺すのを忘れない。
「服は、ちゃんと整えてから寝ろよ。今朝、前がかなりはだけていたぞ」
「あっ! み、見たんですか!?」
背後で、彼女が息を呑む気配がする。
「色気のない肌着が見えたくらいだ。だが、流石に目の遣り場に困るから、気をつけるんだぞ」
俺がそう言うと、彼女は「はい……すみません……」と、消え入りそうな声で答えた。
そして、少しの間を置いて、彼女は、もっと深刻な声で、ぽつりと呟いた。
「あの……それなんですけど……。日中着ているのは、この世界に来た時に身につけていたものなんです。でも、これしかなくて……。いずれボロボロになったらって思うと……」
その、あまりにも切実な、しかし俺にとっては完全に想定外の問題に、俺は言葉を失った。
「……普通のブラジャーって……作れないですよね……?」
作る?
ブラジャーを?
俺のDIYスキルは、そんな領域までカバーしているのか?
ワイヤー、ホック、伸縮性のある布地……。無理だ。専門的すぎる。
だが、俺の口から出たのは、自分でも驚くほど、冷静な言葉だった。
「……今度、それを見せてみろ。分解はできないが、構造を調べるために、かなり触ることになるが良いのか?」
俺の、あまりにも真剣な問いかけに、彼女は少しだけ間を置いた。
そして、悪戯っぽい、しかし真剣な声で、こう返してきた。
「……くんすかとか、しないですよね?」
「俺をなんだと思ってるんだ!」
俺は思わず声を荒らげた。その信頼のなさに、少しだけ傷ついて。
すると、背後で、くすくす、と楽しそうな笑い声が聞こえた。
「かっこよくて、頼りになる、おじさまです」
「……からかわれたか」
俺は完全に一本取られた。
その事実になんだかなと、どうでもよくなってきた。
「ほら早く寝ろ。明日は、血抜きが終わったミノタウロスの解体で、大変なんだからな」
俺の背中に、彼女の顔が、ぎゅっと、押し付けられた。
感謝と安堵、そして、絶対的な信頼がその温もりから伝わってくる。
俺はただ黙って、その重みを受け止めていた。
どうやら俺は、この世界に来てから一番難易度の高いDIYプロジェクトに、挑むことになったようだ。
食事が終わり、片付けも済んだ後、さすがに疲労がピークに達したのだろう。雫は、あくびを噛み殺しながら、少し名残惜しそうに、自分のテントへと向かった。
「おやすみなさい、佐東さん」
「ああ、おやすみ」
俺は一人になった拠点で、カマドの残り火を眺めていた。
勝った。
あのミノタウロスに。
だが、それ以上に、今日の宴が、雫のあの嬉しそうな笑顔が、俺の心を温めていた。
俺もベッドに潜り込み、心地よい疲労感に身を任せるが、その安息は、長くは続かなかった。
テントのジッパーが、そろりと開く音。
そして小さな足音が、俺のベッドへと近づいてくる。
俺はいつものことながら、気が付いていないふりをした。
「あの……佐東さん……」
か細い、伺うような声。
「……今日だけ……一緒に寝ても、よいですか?」
いつも勝手に入ってくるくせに、今夜は、やけにしおらしい。
俺は、ため息をついた。朝、あれだけ自分の感情と葛藤したというのに。
だが、断れるはずもなかった。
「……ダメだと言っても、どうせ入ってくるんだろ?」
俺がそう言うと、彼女は「はい……」と、正直に、しかし申し訳なさそうに頷いた。
俺は背中を向けたまま場所を空ける。
シーツがめくれ、心地よいぬくもりが、再び俺の背中に寄り添ってきた。
「ただし」
釘を刺すのを忘れない。
「服は、ちゃんと整えてから寝ろよ。今朝、前がかなりはだけていたぞ」
「あっ! み、見たんですか!?」
背後で、彼女が息を呑む気配がする。
「色気のない肌着が見えたくらいだ。だが、流石に目の遣り場に困るから、気をつけるんだぞ」
俺がそう言うと、彼女は「はい……すみません……」と、消え入りそうな声で答えた。
そして、少しの間を置いて、彼女は、もっと深刻な声で、ぽつりと呟いた。
「あの……それなんですけど……。日中着ているのは、この世界に来た時に身につけていたものなんです。でも、これしかなくて……。いずれボロボロになったらって思うと……」
その、あまりにも切実な、しかし俺にとっては完全に想定外の問題に、俺は言葉を失った。
「……普通のブラジャーって……作れないですよね……?」
作る?
ブラジャーを?
俺のDIYスキルは、そんな領域までカバーしているのか?
ワイヤー、ホック、伸縮性のある布地……。無理だ。専門的すぎる。
だが、俺の口から出たのは、自分でも驚くほど、冷静な言葉だった。
「……今度、それを見せてみろ。分解はできないが、構造を調べるために、かなり触ることになるが良いのか?」
俺の、あまりにも真剣な問いかけに、彼女は少しだけ間を置いた。
そして、悪戯っぽい、しかし真剣な声で、こう返してきた。
「……くんすかとか、しないですよね?」
「俺をなんだと思ってるんだ!」
俺は思わず声を荒らげた。その信頼のなさに、少しだけ傷ついて。
すると、背後で、くすくす、と楽しそうな笑い声が聞こえた。
「かっこよくて、頼りになる、おじさまです」
「……からかわれたか」
俺は完全に一本取られた。
その事実になんだかなと、どうでもよくなってきた。
「ほら早く寝ろ。明日は、血抜きが終わったミノタウロスの解体で、大変なんだからな」
俺の背中に、彼女の顔が、ぎゅっと、押し付けられた。
感謝と安堵、そして、絶対的な信頼がその温もりから伝わってくる。
俺はただ黙って、その重みを受け止めていた。
どうやら俺は、この世界に来てから一番難易度の高いDIYプロジェクトに、挑むことになったようだ。
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