忘却の艦隊

KeyBow

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第1話 プロローグ

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 ダレン・ブレイクは航宙軍工廠部隊所属の大佐で、28歳の誕生日を迎えたばかりだ。
 細身で引き締まった体つきでやや端正な顔立ちをしているが、人によっては好みが分かれるかもしれない。
 いわゆる2枚目といった感じで気が弱そうな顔つきだ。

 裕福なブレイク家の3男として生まれたダレンだが、異星人との戦争で家族や平穏を奪われ・・・孤児となった。
 孤児院や親戚の家を渡り歩き、暴力や虐待に晒された幼少期を過ごす。 
 しかし、10歳の時に武術の達人である叔父に引き取られてからは、正しい生活を送ることができるようになった。 
 筋トレオタクになったのもその頃からだ。 普通の学校に進学したかったが、貧しい叔父一家に迷惑をかけられないと思ったダレンは、奨学金制度で航宙軍士官学校に入学した。
 そこでは無料で教育を受けられる代わりに、卒業後10年間兵役に就く義務がある制度だった。

 士官学校時代、シュミレーターを使った艦隊戦の模擬戦では全戦全勝という天才的な成績を収めたが、一般教養は及第点とぱっとしなかった。
 売られた喧嘩は全て買い、その全てに勝利しており【朱の狂犬】と言われた。
 こんな奴に俺が負けるはずがない!と、顔つきから腕っぷしは強くないと誤解されていたのだ。
 いじめられっ子の見た目だが、本来決して絡んではいけない狂犬だった。

 素行も軽く上司に靡かず、武術と筋トレにしか興味がなかったから評価は低かった。
 そのせいで、28歳にして大佐に留まっている。
 異星人との戦争にて同期の殆どは死んでおり、生き残ったのはかなり運が良い者か実力者だ。
中将や大将までいるが、能力があれば遅くても少将になっている年齢だ。
 しかし、ダレンは大佐に留まっている。

 上司からは面白味がないと思われているが、その心は熱くて正義感が強い。 
 根は親切でお人好し、仲間からは2枚目のマスクもあって人気がある。 ただし、女性に対しては鈍感で、細マッチョの体に惹かれる女性の視線に気づかない。
 これまで付き合った女性とはろくな別れ方をしておらず、大抵はすぐに死別したり、喧嘩別れしたりしていた・・・

 転機が訪れたのは数年前、ロッテンウルという名の男と知己を得た事だ。
 当時は少将だったが、今では工廠部門のトップをしており、大将になっている。

 休暇中に旅行先で暴漢に襲われている人を助けたのだが、それがロッテンウルだった。
 歳は離れていたが、意気投合し友人となる。
 彼は自分が率いる新造艦の設計部門にダレンを引き入れてくれた。
 彼はかつて第1艦隊の司令官として名を馳せた猛将だったが、年齢制限で後方勤務に回されていた。 
 ダレンはその部署で才能を発揮し、新型砲艦の基本設計を担当し、試験的に0号艦として建造された。 
 その巨艦は全長699mと、宇宙港へ入港可能な限界ギリギリのサイズだった。

 そして今はこの人類最大の戦闘艦を引き渡す為の輸送任務に就いている。
 その艦の名前はフェニックスクラウンという。

 ダレン大佐は総勢140艦を率いて本星を出立した。 
 配置換えで転任してきた人員と、新造艦の人員がおり、艦の運用に必要な最低限プラスアルファの人員を率いている。 
 それとは別に陸軍の兵士や士官の輸送、休暇帰り、配置転換等で駐留艦隊に戻る人員、配属される女子の新兵でほぼ輸送艦の定員に達していた。

 今ダレンの指揮下にある艦数は、20の星系に進出した人類の実に2%を誇る。

 そこに入れ替わりの老朽艦が110艦が加わり、数だけなら駐留艦隊に引けを取らない陣容だ。
 入れ替え艦となる新造艦は戦艦40、重巡航艦20、軽巡航艦20、駆逐艦30と入れ替え対象の旧艦と同じ構成で、更に増強される戦艦10艦だ。
 残りは輸送艦兼工作艦が3、補給艦3、強襲揚陸艦2(駆逐艦相当)
そしてフェニックスクラウンを入れて140艦。
 新造艦のうち20艦はフェニックスクラウンの護衛艦(戦艦)となる。
 装甲が通常の戦艦の20%上で、武装の数を減らす代わりにシールド生成器の数を増やした【盾艦】となる特殊仕様の艦だ。
 武装が少ないとは言っても重巡航艦よりは強力な武器を備える。
 分厚い装甲により、居室スペースが減らされ、定員も戦艦より少ないが、扱いは戦艦。

 フェニックスクラウンは全長699mと人類最大の戦闘艦。
 その殆どがエネルギーを放つ砲身部分となる。後半100mの艦の軸となる部分に居住スペースやブリッジ、エネルギー生成装置、推進装置などがある。
 楕円形で砲身が閉じている時の最大経は300m、短い側は150m。
 攻撃時には砲身を4分割して外側に50mずつ開く。

その主砲は変則型だが、超陽子共鳴ビームの一種。
フェニックスクラウンの主砲はビーム兵器の一種だが、それは特殊調整された超陽子共鳴源を使用している。超陽子共鳴源は、通常の陽子よりも高いエネルギー状態にあり、特別な手法で制御されている。4枚の砲身に間に特殊なフィールドが生成され、その中に大量の電力を注ぎ込むことにより生成された超陽子共鳴源から超陽子共鳴ビームが放射され、射程は約1光分。

ビームは目標に命中すると、超陽子の特性により、地球サイズの惑星であればその地表を破壊し尽くす力を持つエネルギー放射を生成する。さらに、ビームは超陽子の振動パターンによって調整され、際だ威力で放たれた場合、地球程の体積範囲内にいる敵艦を粒子レベルで崩壊させ、握りこぶし大位にまで細かく破壊し尽くす。
握りこぶし大なのは、振動パターンが握りこぶし大の網目な為である。

但し、範囲を少しでも外れると影響は全くない。

 新造艦の戦艦は全長は450mで、駆逐艦は250m。
 旧艦の戦艦は400mで駆逐艦は230mだった。
 巡洋艦クラスはその間のサイズだ。
 戦艦、巡洋艦、駆逐艦の構成比率は2:3:4だ。
 それと偵察艦や補給艦などの支援艦で構成される。

 輸送任務を率いている最先任士官を大佐が担っているのは、 直接新造砲艦の設計に関わった士官の中でダレンが最先任だった、ただそれだけだ。いや、設計を指揮していた。
 
 旗艦の引き渡しのついでに、他の艦の指揮も執り行っていたが、 本来艦隊の指揮は少将以上が行う。
 戦闘任務ではない輸送任務であり、設計に関わった大佐であるダレンが適任とされ、面倒な輸送任務の指揮を任命された経緯がある。
 人はそれを押し付けという。

「お前が設計したのだから最後まで責任を全うしろ!帰るまでが遠足じゃからな!あまり羽目をはずすなよ!お前にご褒美だ。輸送艦の8割は女だからな」

「大将!そりゃあ無いっすよ?俺は引き渡し前日まで提督室から出られないんすっからね!」
 
「ああ。フェニックスクラウンの人員は精鋭で揃えておいたからな」

 項垂れるダレンだが、話し相手はロッテンウル大将。
 2人だけの時は敬語はない。
 大将!というのも、階級ではなく、人を呼ぶのに大将というときがあるが、それだった。

 また、引き渡し前は製造した工廠部門の所属であり、入れ替えで引き渡された旧艦の指揮権もダレンにあった。 
  更に高級将官を駐留艦隊に送り届ける任務もある。
 星系防衛の指揮官として少将達、退役間近の大将とその副官や副長等が数名等々、視察の為や配置換えの為に便乗していた。

 戦争は約150年前、宇宙暦746年にその異星人と遭遇してから始まった。
 人類が初めて他の星系に住居可能な星を発見したことを機に、それまでの暦を廃止して世界共通の暦となる宇宙歴となった。

 そしてこの第3惑星の衛星、つまり月に着陸して物資と人員の入れ替えを行い始めて2日ほどした所から物語は始まる。


 本格SFの開幕!
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