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第10話 フェニックスクラウンの初陣
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新造砲艦フェニックスクラウンを筆頭に、総勢250艦からなる混成艦隊が敵に向かって飛び出した。
飛び出したと言っても、まずは衛星からの離陸だ。
何故衛星にいるか?
航宙艦は地球規模以上の大気密度がある惑星への離着陸は出来ないが、僅かでも重力があった方が人員と物資の行き来が楽で効率が良いからだ。
それにより離着陸や荷物の運搬に支障のない、弱い重力程度しかない月を選んだのだ。
ミズリア少尉は心臓が高鳴るのを感じながら、ビデオをオンにするとダレン大佐の隣に座った。
小さな腕時計のような端末がその約を担う。
そしてこれから始まる戦闘を、少尉は自分の目と耳で記録することになった。
彼女は恐怖と興奮、期待と不安、希望という複雑な感情を抱きながら、ダレン大佐の顔を見た。
彼は冷静で落ち着いているように見えたが、彼はこの戦闘に勝つ自信があるのだろうか?
彼はこの戦闘で生き残ることができるのだろうか?この戦闘で何を思うのだろうか?
彼女は別の意味でも彼に興味を持ち始めた。
いや、探し人が目の前のダレンだと分かり、恋心に舞い上がっていた。
フェニックスクラウンは順調に加速しており、最大戦速で加速しながら敵本隊と駐留艦隊の交戦地点へ向かっていた。
新造艦、旧艦、共に全艦脱落せずに随伴している。
新造艦はフェニックスクラウンの性能を引き出すために設計された艦であり、旧艦はそれに比べて劣っているが、これまでの戦闘に耐えてきた。
それにかつての主力艦であり、退役間近とはいえども今からの戦闘を十分に行えるだけの装備とクルーを持っていた。
性能を引き出すといっても、攻撃力と引き換えに防御力が極端に低いフェニックスクラウンを守り抜く為に作られた艦だ。
最新の設計によって、従来の艦の後継艦となる性能と、製造コストの面でも改良された新世代艦の初ロット艦だった。
新造艦の性能は、引退予定の旧艦よりも殆どの項目で概ね2割上となっている。
ただし楯の役目を担う20艦は設計思想が違う。
ダレン大佐はフェニックスクラウンのブリッジで指揮を執っているが、 彼は各部署と連携して敵の動きや味方の状況を把握し、作戦を逐一修正していった。
また、マクスロイ艦長とも協力し、現状と照らし合わせていく。
マクスロイ艦長はフェニックスクラウンの艦長であるが、これまでダレン大佐とはほとんど面識がなかった。
だが、彼の履歴から全幅の信頼を寄せていた。
それとミズリア少尉はダレン大佐の指示で、2人の士官学校時代の成績を全艦に送った。
それによりダレンが士官学校創立以来唯一の模擬戦全勝者であり、ミズリア少尉は実質的な首席だったと知ることになる。
先程のホログラム会議を見るに、不安を抱いている者が多く見受けられ、実戦経験はともかく、少なくとも士官学校での成績は自分達のそれよりも上だと伝えたかった。
ダレンが持つ本来の性格ならば、文句のある奴は掛かってこい!なのだが、そうも言っていられず、出来る手を打とうとしたのだ。
ダレン大佐は元々戦術の専門家で、戦略も得意だった。
彼は新造砲艦フェニックスクラウンの設計にも深く関わり、その性能や特徴を最もよく知っている人物の1人だった。
フェニックスクラウンは人類の叡智の結晶であり、戦艦100隻分以上のコストが掛かっている。
しかし、その高火力は必殺の決戦兵器となり、人類の切り札となる予定だ。
人類はラジカルと呼ばれる異星人と戦争をしていた。
敵はコミュニケーションが不可能な存在であり、人類の領域に侵入して惑星や宇宙基地を破壊し、人々を殺害していった。
人類は敵に対抗するため、様々な技術や兵器を開発した。
その中でもフェニックスクラウンは最高傑作だった。
その主砲は敵艦隊を一撃で粉砕することができる。
艦ではなく艦隊をだ。
しかし、フェニックスクラウンが主砲を発射するのには時間がかかり、発射した直後は全電力が落ちてしまう。
予備電力に切り替わるまで艦内は真っ暗となり、センサー式の非常用照明が僅かに灯るだけだ。
また、発射後は冷却に時間が掛かり、全システムを再起動しなければならない。
更にほぼ全てのエネルギーを冷却に注ぎ込まなければならず、その間は無防備になる。
そのため、フェニックスクラウンは他の艦からの支援を必要とした。
他の艦が敵からの攻撃を引きつけ、フェニックスクラウンが主砲を発射する。
そのタイミングと位置づけが重要だった。
ダレン大佐はそのタイミングと位置づけを決めることができると自負していた。
艦長にそのタイミングを伝授し、今のクルーにて主砲の試射を行うのはもう少し先で、座学やシュミレーターでしか経験がなかった。
恒星の重力圏内にあると、重力ドライブを使える。
これにより最大で光速の30%まで加速できる。
何か纏まっだ質量があれば、それを犠牲にすることで光速の1%程にまで加速でき、減速するのも重力ドライブを利用する。
現在は星系内で使われる通常航法である重力ドライブにて移動していた。
フルパワーで加速すると、人は耐えられずにミンチになる。
1%に加速するのに14時間もの間、ずっと6Gという凄まじいGに絶えねばならない。
実際にはそレほどの時間絶えられないので、それを解決する方法を人類は模索し、やがて発見した。
加速度に対する補正装置が働くから、リミッターが作動していれば安全だった。
慣性補正装置の恩恵により光速の1%に加速するまで1時間程で済む。
減速もまた同じく、1時間を要する。
そうして敵と味方が戦闘を行なっている宙域へと向かっていた。
隊形は、まず新造艦1番艦から20番艦がフェニックスクラウンを全包囲する。
これらは防御特化の艦で、装甲が厚くフェニックスクラウンの盾としての役目を担う艦だ。
他の新造艦はフェニックスクラウンを囲むように防水陣形を取り、内側にフェニックスや輸送艦等の支援艦を配置している。
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飛び出したと言っても、まずは衛星からの離陸だ。
何故衛星にいるか?
航宙艦は地球規模以上の大気密度がある惑星への離着陸は出来ないが、僅かでも重力があった方が人員と物資の行き来が楽で効率が良いからだ。
それにより離着陸や荷物の運搬に支障のない、弱い重力程度しかない月を選んだのだ。
ミズリア少尉は心臓が高鳴るのを感じながら、ビデオをオンにするとダレン大佐の隣に座った。
小さな腕時計のような端末がその約を担う。
そしてこれから始まる戦闘を、少尉は自分の目と耳で記録することになった。
彼女は恐怖と興奮、期待と不安、希望という複雑な感情を抱きながら、ダレン大佐の顔を見た。
彼は冷静で落ち着いているように見えたが、彼はこの戦闘に勝つ自信があるのだろうか?
彼はこの戦闘で生き残ることができるのだろうか?この戦闘で何を思うのだろうか?
彼女は別の意味でも彼に興味を持ち始めた。
いや、探し人が目の前のダレンだと分かり、恋心に舞い上がっていた。
フェニックスクラウンは順調に加速しており、最大戦速で加速しながら敵本隊と駐留艦隊の交戦地点へ向かっていた。
新造艦、旧艦、共に全艦脱落せずに随伴している。
新造艦はフェニックスクラウンの性能を引き出すために設計された艦であり、旧艦はそれに比べて劣っているが、これまでの戦闘に耐えてきた。
それにかつての主力艦であり、退役間近とはいえども今からの戦闘を十分に行えるだけの装備とクルーを持っていた。
性能を引き出すといっても、攻撃力と引き換えに防御力が極端に低いフェニックスクラウンを守り抜く為に作られた艦だ。
最新の設計によって、従来の艦の後継艦となる性能と、製造コストの面でも改良された新世代艦の初ロット艦だった。
新造艦の性能は、引退予定の旧艦よりも殆どの項目で概ね2割上となっている。
ただし楯の役目を担う20艦は設計思想が違う。
ダレン大佐はフェニックスクラウンのブリッジで指揮を執っているが、 彼は各部署と連携して敵の動きや味方の状況を把握し、作戦を逐一修正していった。
また、マクスロイ艦長とも協力し、現状と照らし合わせていく。
マクスロイ艦長はフェニックスクラウンの艦長であるが、これまでダレン大佐とはほとんど面識がなかった。
だが、彼の履歴から全幅の信頼を寄せていた。
それとミズリア少尉はダレン大佐の指示で、2人の士官学校時代の成績を全艦に送った。
それによりダレンが士官学校創立以来唯一の模擬戦全勝者であり、ミズリア少尉は実質的な首席だったと知ることになる。
先程のホログラム会議を見るに、不安を抱いている者が多く見受けられ、実戦経験はともかく、少なくとも士官学校での成績は自分達のそれよりも上だと伝えたかった。
ダレンが持つ本来の性格ならば、文句のある奴は掛かってこい!なのだが、そうも言っていられず、出来る手を打とうとしたのだ。
ダレン大佐は元々戦術の専門家で、戦略も得意だった。
彼は新造砲艦フェニックスクラウンの設計にも深く関わり、その性能や特徴を最もよく知っている人物の1人だった。
フェニックスクラウンは人類の叡智の結晶であり、戦艦100隻分以上のコストが掛かっている。
しかし、その高火力は必殺の決戦兵器となり、人類の切り札となる予定だ。
人類はラジカルと呼ばれる異星人と戦争をしていた。
敵はコミュニケーションが不可能な存在であり、人類の領域に侵入して惑星や宇宙基地を破壊し、人々を殺害していった。
人類は敵に対抗するため、様々な技術や兵器を開発した。
その中でもフェニックスクラウンは最高傑作だった。
その主砲は敵艦隊を一撃で粉砕することができる。
艦ではなく艦隊をだ。
しかし、フェニックスクラウンが主砲を発射するのには時間がかかり、発射した直後は全電力が落ちてしまう。
予備電力に切り替わるまで艦内は真っ暗となり、センサー式の非常用照明が僅かに灯るだけだ。
また、発射後は冷却に時間が掛かり、全システムを再起動しなければならない。
更にほぼ全てのエネルギーを冷却に注ぎ込まなければならず、その間は無防備になる。
そのため、フェニックスクラウンは他の艦からの支援を必要とした。
他の艦が敵からの攻撃を引きつけ、フェニックスクラウンが主砲を発射する。
そのタイミングと位置づけが重要だった。
ダレン大佐はそのタイミングと位置づけを決めることができると自負していた。
艦長にそのタイミングを伝授し、今のクルーにて主砲の試射を行うのはもう少し先で、座学やシュミレーターでしか経験がなかった。
恒星の重力圏内にあると、重力ドライブを使える。
これにより最大で光速の30%まで加速できる。
何か纏まっだ質量があれば、それを犠牲にすることで光速の1%程にまで加速でき、減速するのも重力ドライブを利用する。
現在は星系内で使われる通常航法である重力ドライブにて移動していた。
フルパワーで加速すると、人は耐えられずにミンチになる。
1%に加速するのに14時間もの間、ずっと6Gという凄まじいGに絶えねばならない。
実際にはそレほどの時間絶えられないので、それを解決する方法を人類は模索し、やがて発見した。
加速度に対する補正装置が働くから、リミッターが作動していれば安全だった。
慣性補正装置の恩恵により光速の1%に加速するまで1時間程で済む。
減速もまた同じく、1時間を要する。
そうして敵と味方が戦闘を行なっている宙域へと向かっていた。
隊形は、まず新造艦1番艦から20番艦がフェニックスクラウンを全包囲する。
これらは防御特化の艦で、装甲が厚くフェニックスクラウンの盾としての役目を担う艦だ。
他の新造艦はフェニックスクラウンを囲むように防水陣形を取り、内側にフェニックスや輸送艦等の支援艦を配置している。
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