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第47話 ビーコルク
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現在の艦隊は経済速度で移動している。
最大戦速ならば半日で重力ジャンプ可能な所まで行けるが、エネルギー消費が無視できなくなる。
最大戦速で加減速するのは経済速度に比べ、10倍はエネルギーを食うのだ。
今はエネルギーを節約する必要から非戦闘時は0.01光速辺りが適切だ。
その為に、次の重力ジャンプが可能な軌道まで数日掛けて移動する。
輸送艦にあるエネルギー源しか補給物資がない、つまり減る一方だから戦闘時は別としてエネルギー消費を押さえる必要がある。
その間に全艦会議を開く事になった。
・
・
・
会議では、休眠している中で今必要としている者達の何名かを起こす事を、全会一致で採用した。
全てをダレンの決定のみで行うのは危険だと、ダレンが判断して会議の場で有用な案の検討をしていた。
今回は偶々輸送艦より主に兵站関連の事務処理能力のある者がコールドスリープしている者の中にいて、起こしてはどうかとの意見が出たのだ。
そしてその時に修理の終わった駐留艦隊所属だった戦艦の艦長ジルテット中佐が質問した。
「ダレン司令、何故敵を追わないのですか!?どの星系にジャンプしたか誰の目にも明らかなのに、避けている理由がわかりかねます!理由をお聞かせ願いませんか?人類の星系への早道ではないのかと小官は愚考いたしますが!」
何人かの艦長が首を縦に振り、逆に横に振る者もいた。
そんなの戦うのが面倒くさいからだよ!
つい本音を口に出すところだったが、もちろん他にも理由がある。
「ジルテット艦長、敵を追わなかったのにはいくつか理由がある。1つは人員の問題だ。人の問題については配置変えなどが進み、配属された艦に不慣れな者の数が多過ぎる。これでは練度不足で足並みが揃わず負けなくても、不用意に傷つく数が無視できなくなると思われる。また、現在地がまだ把握出来ていない。あれらが向かった先の予測は中佐の読み通りだと俺も思う。しかしな、敵の大規模拠点や艦隊がいないとも限らないんだ。今はそのリスクを避けるべきだと判断した」
「狂犬の二つ名にしては随分慎重なのですね。怖いのですか?」
にたりと笑う。
「ジルテット中佐!司令に失礼ではないですか?補給もできないから無闇に戦うのを避けるのは司令部としては真っ当な判断だと小官は思いますが」
ダレンと共に来た盾艦の3番艦であるバニッシュ艦長が苦言した。
「何、最近3人の美女を侍らしたと聞きます。あの氷の魔女を手懐けたと。巡洋艦の艦長から参謀長に抜擢し、しっぽりやるのに骨抜きになったのでは?」
「中佐!女性に対する軽視的な発言に抗議します!」
「黙れ!高々中尉が出しゃばるな!お前も司令の女だろ?体で籠絡したのか?」
抗議の声を上げたミズリアを抑え込もうとした。
「中佐!ダレン司令は女性に敬意を払い、人として尊敬に値する人です。彼が選んだ女性達も尊敬に値し、立場を使って関係を強要するようなことはない。それに司令はまだ独身だ。先日女性会の方で決められた範囲で節度ある交際をされている。艦隊の運営にプラスになる関係であっても、マイナスになるような事はないし、勤務中に表に出されることはない。誇りと敬意を払い、職務を遂行されているに過ぎない。旗艦の艦長としてミズリア中尉とノリコ大佐に対し謝罪を求める。それに貴官は人のことを言える節度をお持ちなのでしょうね!?」
「これまでだ。仲間内でいがみ合っても仕方がない。話を勧めたいが、中佐、私に対しては良いが、この艦隊の男女比を考えるに、女性を敵に回して得るものはないぞ!」
ダレンは暗に2人に謝れと言っている。
何人がニタニタし、匿名チャットでノリコ大佐がダレンに取られたのがショックだったんだね!Wと発信されていた。それを見た者達がニタニタとしたり、クスクスいった笑いが起こる。それを見た中佐の顔がピクピクとなったが、自分のコンソールを見て素直に言い過ぎたと謝罪をし、一段落した。
「アプローチの仕方はともかく、中佐が言わんとする事は分かった。先ずは練度を上げる為にこれからジャンプするまで、みっちりと模擬戦を計画する。都度艦内の問題点を克服するように。いずれは避けられない事態故、これより敵との本格的な戦闘を前提として航路を考える」
鹵獲艦の艦長が挙手した。
「スベルク艦長、どうぞ」
「横から失礼します。今の話ですと敵のいる所に踏み入るとの事ですが、もちろん我々は軍人であり敵を倒す事に何の迷いもありません。個人的に思うところはありますが、命じられれば戦うのが役目。で、質問ですが、敵との邂逅はいつくらい先を想定されているのでしょうか?」
もっともな質問だ。
現在主に3つの派閥が出来ている。
ダレンを旗印にし、何の疑いもなく従うダレン派。
先日の反乱者のように、ダレンを良しとしない反ダレン派、そしてそのどちらでもなく、ダレンを正当な指揮権を有する指揮官として従う中立派。
このスベルク艦長は、旧艦の艦長として戦艦隊分隊を率いるまとめ役の1人だ。
艦隊内でも一目置かれ、その意見には皆が耳を傾ける。
「訓練の進捗次第だが、早くて次かその次の星系辺りからを考えている。もちろん準備不足と判断すれば先延ばしになるが、選択した場合、司令部が十分な練度があると判断したと思ってくれ」
「了解しました。ところで司令、サニー艦長の偵察艦の修復が終わったと聞いたのですが?」
「ああ。あの艦は最優先で修復させた。もうロールアウトするので、そろそろ試運転をするところだ。この艦隊の唯一の純粋な偵察艦だからな」
「ええ。他の偵察艦はジャンプ出来ませんでしたから」
「スベルク艦長?君の質問の意図は?」
「はい。単なる確認です。知っての通り、我が艦隊は構成がイレギュラーで、特に目が弱い。そこで偵察艦の状態が知りたかったのです。それとサニーは私の後輩でして」
「うむ。輸送艦のメンバーが良い仕事をしたはずだ。他はないな?よし、これより2時間後に最初の模擬戦を行う。各艦準備せよ!」
そうして解散となった。
最大戦速ならば半日で重力ジャンプ可能な所まで行けるが、エネルギー消費が無視できなくなる。
最大戦速で加減速するのは経済速度に比べ、10倍はエネルギーを食うのだ。
今はエネルギーを節約する必要から非戦闘時は0.01光速辺りが適切だ。
その為に、次の重力ジャンプが可能な軌道まで数日掛けて移動する。
輸送艦にあるエネルギー源しか補給物資がない、つまり減る一方だから戦闘時は別としてエネルギー消費を押さえる必要がある。
その間に全艦会議を開く事になった。
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会議では、休眠している中で今必要としている者達の何名かを起こす事を、全会一致で採用した。
全てをダレンの決定のみで行うのは危険だと、ダレンが判断して会議の場で有用な案の検討をしていた。
今回は偶々輸送艦より主に兵站関連の事務処理能力のある者がコールドスリープしている者の中にいて、起こしてはどうかとの意見が出たのだ。
そしてその時に修理の終わった駐留艦隊所属だった戦艦の艦長ジルテット中佐が質問した。
「ダレン司令、何故敵を追わないのですか!?どの星系にジャンプしたか誰の目にも明らかなのに、避けている理由がわかりかねます!理由をお聞かせ願いませんか?人類の星系への早道ではないのかと小官は愚考いたしますが!」
何人かの艦長が首を縦に振り、逆に横に振る者もいた。
そんなの戦うのが面倒くさいからだよ!
つい本音を口に出すところだったが、もちろん他にも理由がある。
「ジルテット艦長、敵を追わなかったのにはいくつか理由がある。1つは人員の問題だ。人の問題については配置変えなどが進み、配属された艦に不慣れな者の数が多過ぎる。これでは練度不足で足並みが揃わず負けなくても、不用意に傷つく数が無視できなくなると思われる。また、現在地がまだ把握出来ていない。あれらが向かった先の予測は中佐の読み通りだと俺も思う。しかしな、敵の大規模拠点や艦隊がいないとも限らないんだ。今はそのリスクを避けるべきだと判断した」
「狂犬の二つ名にしては随分慎重なのですね。怖いのですか?」
にたりと笑う。
「ジルテット中佐!司令に失礼ではないですか?補給もできないから無闇に戦うのを避けるのは司令部としては真っ当な判断だと小官は思いますが」
ダレンと共に来た盾艦の3番艦であるバニッシュ艦長が苦言した。
「何、最近3人の美女を侍らしたと聞きます。あの氷の魔女を手懐けたと。巡洋艦の艦長から参謀長に抜擢し、しっぽりやるのに骨抜きになったのでは?」
「中佐!女性に対する軽視的な発言に抗議します!」
「黙れ!高々中尉が出しゃばるな!お前も司令の女だろ?体で籠絡したのか?」
抗議の声を上げたミズリアを抑え込もうとした。
「中佐!ダレン司令は女性に敬意を払い、人として尊敬に値する人です。彼が選んだ女性達も尊敬に値し、立場を使って関係を強要するようなことはない。それに司令はまだ独身だ。先日女性会の方で決められた範囲で節度ある交際をされている。艦隊の運営にプラスになる関係であっても、マイナスになるような事はないし、勤務中に表に出されることはない。誇りと敬意を払い、職務を遂行されているに過ぎない。旗艦の艦長としてミズリア中尉とノリコ大佐に対し謝罪を求める。それに貴官は人のことを言える節度をお持ちなのでしょうね!?」
「これまでだ。仲間内でいがみ合っても仕方がない。話を勧めたいが、中佐、私に対しては良いが、この艦隊の男女比を考えるに、女性を敵に回して得るものはないぞ!」
ダレンは暗に2人に謝れと言っている。
何人がニタニタし、匿名チャットでノリコ大佐がダレンに取られたのがショックだったんだね!Wと発信されていた。それを見た者達がニタニタとしたり、クスクスいった笑いが起こる。それを見た中佐の顔がピクピクとなったが、自分のコンソールを見て素直に言い過ぎたと謝罪をし、一段落した。
「アプローチの仕方はともかく、中佐が言わんとする事は分かった。先ずは練度を上げる為にこれからジャンプするまで、みっちりと模擬戦を計画する。都度艦内の問題点を克服するように。いずれは避けられない事態故、これより敵との本格的な戦闘を前提として航路を考える」
鹵獲艦の艦長が挙手した。
「スベルク艦長、どうぞ」
「横から失礼します。今の話ですと敵のいる所に踏み入るとの事ですが、もちろん我々は軍人であり敵を倒す事に何の迷いもありません。個人的に思うところはありますが、命じられれば戦うのが役目。で、質問ですが、敵との邂逅はいつくらい先を想定されているのでしょうか?」
もっともな質問だ。
現在主に3つの派閥が出来ている。
ダレンを旗印にし、何の疑いもなく従うダレン派。
先日の反乱者のように、ダレンを良しとしない反ダレン派、そしてそのどちらでもなく、ダレンを正当な指揮権を有する指揮官として従う中立派。
このスベルク艦長は、旧艦の艦長として戦艦隊分隊を率いるまとめ役の1人だ。
艦隊内でも一目置かれ、その意見には皆が耳を傾ける。
「訓練の進捗次第だが、早くて次かその次の星系辺りからを考えている。もちろん準備不足と判断すれば先延ばしになるが、選択した場合、司令部が十分な練度があると判断したと思ってくれ」
「了解しました。ところで司令、サニー艦長の偵察艦の修復が終わったと聞いたのですが?」
「ああ。あの艦は最優先で修復させた。もうロールアウトするので、そろそろ試運転をするところだ。この艦隊の唯一の純粋な偵察艦だからな」
「ええ。他の偵察艦はジャンプ出来ませんでしたから」
「スベルク艦長?君の質問の意図は?」
「はい。単なる確認です。知っての通り、我が艦隊は構成がイレギュラーで、特に目が弱い。そこで偵察艦の状態が知りたかったのです。それとサニーは私の後輩でして」
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