忘却の艦隊

KeyBow

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第83話 暗雲

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 会議室に包まれた静寂を、ダレン司令官の重いため息が切り裂いた。彼の心は、ハインリッヒ艦長やルシアナ少尉との対話を反芻することで重く沈んでいた。上級士官の能力への疑念、提督の不在に等しい戦術、そしてハインリッヒの猪突猛進的指揮スタイルは、艦隊を始め人類の未来にとって解決すべき重要な課題として立ちはだかっていた。

「マクスロイ艦長、君の見解はどうだ?」とダレンが問いかけた。彼の声は落ち着いていたが、その目には懸念が宿っていた。

 マクスロイは、遺憾の意を込めて頭を振る。

「残念ながら、ハインリッヒ艦長との模擬戦での彼の戦術には進歩が見られませんでした。彼のやり方では、私たちの艦隊にはそぐわないでしょう」

 ダレンは遠くを見るようにモニターに映る画像を見つめながらつぶやいた。

「33年前ならば、彼は艦長になれなかった。時代が変わろうとも、基本的な戦術的判断力は不変のはずだ。」

 そのとき、艦橋からの通信が入った。

「司令官、60分後に重力ジャンプから離脱します。すべての乗組員はスペーススーツを着用し、即時の戦闘対応可能な状態にしています。司令もスーツに着替えてください。」

 ダレンは迅速に立ち上がり、着替えを済ませてからブリッジへと向かうことにした。彼のスーツのチェックを手伝っていたのは、宙兵隊のミカだった。彼女の手際の良さに感謝し、ダレンはブリッジにいるミズリア少尉に通信を投げかけた。

「ミズリア、乗組員の準備はどうだ?」

「全員が指示に従っています。スペーススーツのチェックも完了しており、いつ戦闘が始まっても大丈夫です。」

 ミズリアの声は冷静で、確かな自信が感じられた。

 ダレンはハインリッヒ艦長の方を向き、「ハインリッヒ、君も準備はいいだろう?」と尋ねた。

 ハインリッヒは不満げに頷き疑問を投げ掛けた。

「はい、司令官。しかし、このような急造の準備が本当に役立つのかどうか…」

「戦場では予期せぬことが常だ。準備があれば、生き残る可能性がぐっと高まる。それが分からないか?」

 ダレンの言葉には重みがあった。

 ルシアナはそんなやり取りを静かに聞いていたが、不安を隠せず、小さな声で尋ねてしまう。

「でも、司令官、私たちは本当に勝てるのでしょうか?」

 ダレンは彼女の肩に手を置き、その目を見つめながら力強く言った。

「ルシアナ、信じる者は勝つ。我々が一致団結すれば、どんな敵にも勝つことができる。勝利への信念が、勝利をもたらすのだ」

 艦橋からのカウントダウンが始まり、フェニックスクラウンの乗組員は、戦いに備えて固唾を飲んだ。重力ジャンプからの離脱の瞬間が迫る中、新たな局面への幕開けとなった。フェニックスクラウンは未知の戦いへと舵を切り、乗組員たちは未来への希望を胸に戦闘の準備を整えたのだった。
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