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第84話 要塞
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フェニックスクラウンのブリッジにいる者たちは、通信士の告げるカウントダウンの緊迫したテンポと共に、緊張感を高めていた。
フェニックスクラウンのブリッジは、旗艦のため首脳陣を含め通常の艦よりも多くの者が集まっており、全員の目は一点の疑いもなく前方の大型ホロモニターに集中していた。
艦自体のブリッジクルーは忙しく担当する範囲の数値に注視している。
先行する撤退した味方と、それを追う敵艦を追いかけている形だ。
ジャンプアウトした先がどうなっているか未知な状態でジャンプアウトするのだ。
敵艦が射程圏内にいるのかいないのか?味方がまだ集団として機能しているのか?その敵も味方もこちらの存在に気がついていない。そして、ついにカウントゼロが告げられる。
「ジャンプアウトします!」
通信士の声がブリッジに響いた。
船体が通常空間に戻った瞬間、慣性補正が最大限に働き、乗組員は座席に押し付けられた。
衝突及び敵が射程内にいることによる警報鳴り響き、ジャンプアウトした全ての艦は、緊急の衝突回避を開始した。
そして突如として、僚艦も一斉に動き出す。
これは予めAIに出されていた指示に従い、艦隊は手近な敵を次々と屠っていく。人間の意識が重力ジャンプからの離脱による朧とした状態から回復する間も、AIは冷静に戦況判断し、射程内の敵を自動的に攻撃していた。
形とすれば奇襲攻撃だ。
こちらの姿を認識してから攻撃を開始するのだろうが、こちらが相手を先に発見するなり間髪入れずに攻撃をしたならば、数光秒程度の距離にしる敵であれば、認識した途端に放たれたレーザー系の光線兵器の攻撃にて避ける間もなく倒していくのは道理だ。
「AIに操艦を任せたのは正解だったな。人間の反応速度では間に合わない。」
マクスロイ艦長が感嘆した。
ジャンプ前に初期バージョンがようやく完成したところだった。
「そうだな。AIは我々の頼もしい味方だ。開発チームには1杯奢らないとな」
ダレン司令官は同意したが、混乱から目覚めると、3光秒先にいた敵25艦が瞬殺される様子がモニターに映し出された。
3秒のアドバンテージがあったので、敵がこちらの艦隊の出現に気づいたときには既に猛烈な攻撃が回避不能な距離まで迫っていたのだ。
ブリッジにいるハインリッヒ大佐は、前の星系で見方を逃がすため犠牲になり大破した艦の艦長で、脱出ポットにて漂っているのを偵察艦が拾い、フェニックスクラウンに届けられていた。
僚艦に34年前に失われたはずのフェニックスクラウンに助けられたと通信を開始した。
「こちらは新たにジャンプアウトした艦隊の旗艦フェニックスクラウンに救助されたハインリッヒ大佐だ。34年前に行方不明になった伝説の艦隊に私は今いる。しかも、約250艦からなる戦闘艦を引き連れてきてくれた。そして・・・その中には伝説のフェニックスクラウンが存在している。艦隊司令のダレン提督の指示に従ってほしい。古い型式の艦が多いが精鋭揃いだ」
また、通信士は通信状況の確認に入るが、回復の早い測定士が報告を始めた。
「報告します。ここは敵の移動前線基地の可能性が高いです。50光秒先には地球の月ほどのきさを持つ要塞が見えます。味方艦との激しい交戦が繰り広げられているので適度認定します」
ダレンはモニターを睨みつけた。
「了解した。我々はその要塞を破壊する。それが我々の責務だ。」
ダレンはモニター上の要塞の位置が確定されたことを確認し、直ちにフェニックスクラウンを主砲発射シーケンスへ移行させる。
「砲撃手目標をロックせよ!」
ダレンの声は冷酷ほどに静かで、命令は明確だったが、まだ突っ伏しているのを見てやれやれと言った感じで司令席にある照準桿を見つめる。
一応艦長、提督席には艦のフルコントロール可能な操縦システムが備わっており、いざというときに備えていたのだ。
「了解。フェニックスクラウンの主砲はいつでも放てますが、操縦士も私もまだ動けませんので、司令に操縦を引き渡します」
マクスロイ艦長は即答した。
「目標ロック完了、司令官。発射準備が整いました。」
本来ならば砲手がこのように報告するが、ジャンプから30秒ほどの段階でジャンプ酔から完全に覚めていたのはわずか四人だけだった。
「発射!」
ダレンがフェニックスクラウンの操縦桿を兼ねた主砲の照準桿の引き金を引くと、フェニックスクラウンの主砲は宇宙の静寂を引き裂くかのような猛烈なエネルギーを発射した。
フェニックスクラウンの主砲は砲塔に照準の為に稼働する部分がなく、前方に放つしかできない。
感じ体の方向を変えるしかないのだ。
主砲が要塞に当たると、瞬く間に明るい閃光に包まれ、数秒後には暗闇が戻った。
しかし、そこにあったはずの要塞はもはや以前の姿をとどめていなかった。フェニックスクラウンの攻撃が命中すると要塞は激しい爆発を起こして握りこぶし大の破片に分解され、要塞の残骸が周囲に散らばった。
呆気ないものである。
「敵要塞撃破確認しました!提督おめでとうございます!」
観測士が歓声を上げた。
「これで敵の前線基地は壊滅だ。」
ダレンは満足げに微笑む。
「しかし、まだ油断はできない。星系内には敵艦が400を超えて存在しているようだぞ!我々は味方艦と合流し、敵艦を一掃する。」
「了解しました。」
一息遅れで復活した副官のミズリアが答えた。
ダレンはブリッジの乗組員の様子に気を配りながら既に次の戦略を練り始めていた。
段々復活する者の数が増えてきてAIからコントロールを引き継ぐ。
ダレンの冷静さと迅速な判断が、フェニックスクラウンや艦隊の乗組員、未知の味方艦を、戦場で生き残らせるための鍵だった。
フェニックスクラウンのブリッジは、旗艦のため首脳陣を含め通常の艦よりも多くの者が集まっており、全員の目は一点の疑いもなく前方の大型ホロモニターに集中していた。
艦自体のブリッジクルーは忙しく担当する範囲の数値に注視している。
先行する撤退した味方と、それを追う敵艦を追いかけている形だ。
ジャンプアウトした先がどうなっているか未知な状態でジャンプアウトするのだ。
敵艦が射程圏内にいるのかいないのか?味方がまだ集団として機能しているのか?その敵も味方もこちらの存在に気がついていない。そして、ついにカウントゼロが告げられる。
「ジャンプアウトします!」
通信士の声がブリッジに響いた。
船体が通常空間に戻った瞬間、慣性補正が最大限に働き、乗組員は座席に押し付けられた。
衝突及び敵が射程内にいることによる警報鳴り響き、ジャンプアウトした全ての艦は、緊急の衝突回避を開始した。
そして突如として、僚艦も一斉に動き出す。
これは予めAIに出されていた指示に従い、艦隊は手近な敵を次々と屠っていく。人間の意識が重力ジャンプからの離脱による朧とした状態から回復する間も、AIは冷静に戦況判断し、射程内の敵を自動的に攻撃していた。
形とすれば奇襲攻撃だ。
こちらの姿を認識してから攻撃を開始するのだろうが、こちらが相手を先に発見するなり間髪入れずに攻撃をしたならば、数光秒程度の距離にしる敵であれば、認識した途端に放たれたレーザー系の光線兵器の攻撃にて避ける間もなく倒していくのは道理だ。
「AIに操艦を任せたのは正解だったな。人間の反応速度では間に合わない。」
マクスロイ艦長が感嘆した。
ジャンプ前に初期バージョンがようやく完成したところだった。
「そうだな。AIは我々の頼もしい味方だ。開発チームには1杯奢らないとな」
ダレン司令官は同意したが、混乱から目覚めると、3光秒先にいた敵25艦が瞬殺される様子がモニターに映し出された。
3秒のアドバンテージがあったので、敵がこちらの艦隊の出現に気づいたときには既に猛烈な攻撃が回避不能な距離まで迫っていたのだ。
ブリッジにいるハインリッヒ大佐は、前の星系で見方を逃がすため犠牲になり大破した艦の艦長で、脱出ポットにて漂っているのを偵察艦が拾い、フェニックスクラウンに届けられていた。
僚艦に34年前に失われたはずのフェニックスクラウンに助けられたと通信を開始した。
「こちらは新たにジャンプアウトした艦隊の旗艦フェニックスクラウンに救助されたハインリッヒ大佐だ。34年前に行方不明になった伝説の艦隊に私は今いる。しかも、約250艦からなる戦闘艦を引き連れてきてくれた。そして・・・その中には伝説のフェニックスクラウンが存在している。艦隊司令のダレン提督の指示に従ってほしい。古い型式の艦が多いが精鋭揃いだ」
また、通信士は通信状況の確認に入るが、回復の早い測定士が報告を始めた。
「報告します。ここは敵の移動前線基地の可能性が高いです。50光秒先には地球の月ほどのきさを持つ要塞が見えます。味方艦との激しい交戦が繰り広げられているので適度認定します」
ダレンはモニターを睨みつけた。
「了解した。我々はその要塞を破壊する。それが我々の責務だ。」
ダレンはモニター上の要塞の位置が確定されたことを確認し、直ちにフェニックスクラウンを主砲発射シーケンスへ移行させる。
「砲撃手目標をロックせよ!」
ダレンの声は冷酷ほどに静かで、命令は明確だったが、まだ突っ伏しているのを見てやれやれと言った感じで司令席にある照準桿を見つめる。
一応艦長、提督席には艦のフルコントロール可能な操縦システムが備わっており、いざというときに備えていたのだ。
「了解。フェニックスクラウンの主砲はいつでも放てますが、操縦士も私もまだ動けませんので、司令に操縦を引き渡します」
マクスロイ艦長は即答した。
「目標ロック完了、司令官。発射準備が整いました。」
本来ならば砲手がこのように報告するが、ジャンプから30秒ほどの段階でジャンプ酔から完全に覚めていたのはわずか四人だけだった。
「発射!」
ダレンがフェニックスクラウンの操縦桿を兼ねた主砲の照準桿の引き金を引くと、フェニックスクラウンの主砲は宇宙の静寂を引き裂くかのような猛烈なエネルギーを発射した。
フェニックスクラウンの主砲は砲塔に照準の為に稼働する部分がなく、前方に放つしかできない。
感じ体の方向を変えるしかないのだ。
主砲が要塞に当たると、瞬く間に明るい閃光に包まれ、数秒後には暗闇が戻った。
しかし、そこにあったはずの要塞はもはや以前の姿をとどめていなかった。フェニックスクラウンの攻撃が命中すると要塞は激しい爆発を起こして握りこぶし大の破片に分解され、要塞の残骸が周囲に散らばった。
呆気ないものである。
「敵要塞撃破確認しました!提督おめでとうございます!」
観測士が歓声を上げた。
「これで敵の前線基地は壊滅だ。」
ダレンは満足げに微笑む。
「しかし、まだ油断はできない。星系内には敵艦が400を超えて存在しているようだぞ!我々は味方艦と合流し、敵艦を一掃する。」
「了解しました。」
一息遅れで復活した副官のミズリアが答えた。
ダレンはブリッジの乗組員の様子に気を配りながら既に次の戦略を練り始めていた。
段々復活する者の数が増えてきてAIからコントロールを引き継ぐ。
ダレンの冷静さと迅速な判断が、フェニックスクラウンや艦隊の乗組員、未知の味方艦を、戦場で生き残らせるための鍵だった。
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