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本編
10:アルフレッドの初夜(1)
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初夜。それは新妻を抱かねばならぬ夜。
シャロンに罪はないし、彼女が亡き前妻を思う旦那ごと優しく受け入れる懐の深い女性だということは、この一日で十分に理解できた。アルフレッドにはもったいないくらいによく出来た嫁なのは間違いない。
しかし、未だエミリアを思うアルフレッドはどうしても彼女と肌を重ねる事が出来そうにない。
「どうしたものか…」
もうすぐ、メイド達に連れられてシャロンがこの部屋にやってくる。
真っ黒な夜着に身を包んだアルフレッドは、額を抑えて項垂れた。
すると、コンコンと扉を叩く音がする。
(ああ、本当にどうしたら良いのだろうか)
とうとうこの時が来てしまった。
仕方なく入室を許可したが、まだ彼女を抱く覚悟は出来ていないアルフレッドは眉間の皺を抑えた。
「旦那様、奥様をお連れしました」
「ああ、ありがとう…」
恐る恐る扉の前に立つシャロンに目を向けると、彼女は布の少ない夜着を身に纏い、ふわふわのガウンを羽織っていた。
(あ、抱けるかも)
本能的にそう思ってしまったアルフレッドは、ハッと我に帰り彼女から目を逸らせた。
こんなことを思うなどエミリアに対する冒涜だと、アルフレッドは心の中でただひたすらに自分を責めた。
微妙に気まずい空気が流れる。
しかしそんなことはお構いなしに、メイド達は「ごゆっくり」と言い残し、シャロンを置いて去ってしまった。
ごゆっくりと言われても、ごゆっくりできる心境ではない。
「その格好、大丈夫か?」
大丈夫でないのは本能のままに反応する自分の股間だが、それを勘づかれるわけにはいかないのでとりあえず話題を振るアルフレッド。
シャロンは困惑した様子で雑な振り方をされた話題に応える。
「…大丈夫とは?」
「寒くないか?その、かなり薄着だろう?」
「ああ、大丈夫です。このガウン温かいので」
「そ、そうか…」
会話が終わってしまった。やはり気まずい。
火照る体をどうにかしたいが、視線が自然とシャロンの豊満な白い胸元に向いてしまう。
(ああ、ダメだ!浮気者!私の浮気者!)
アルフレッドが一人で無駄に自己嫌悪に陥っていると、シャロンがそばに行っても良いかと提案してきた。
「え!?」
「え?」
予想外の展開に無駄に動揺したアルフレッドは声が裏返ってしまい、咄嗟に口元を押さえた。
(恥ずかしい)
いい歳したおじさんなのに、初夜で動揺しているなんて恥ずかしい。
アルフレッドの顔はみるみる赤くなる。
(そうだよな、そりゃ側に来たいよな)
なんせ初夜だ。シャロンだって可愛らしい夜着に身を包んだ自分を見てもらいたいに決まっている。
覚悟を決めなければ、とアルフレッドはこちらに来るように言おうとした。
しかし、
「あのー。私、自分の部屋に戻りましょうか?」
シャロンの方が先にそう言った。
アルフレッドにはその表情が少し悲しそうに見えた。
きっと彼女は自分の覚悟が足りないことを察して気を使ったのだろう。
その通りだ。アルフレッドにはシャロンを真の意味で妻にする覚悟などない。
彼がどうしたものかと答えに迷っていたら、シャロンの方から核心をついてきた。
「…どうしましょう?」
「…どうする、とは?」
「私は後継を産むために公爵様に嫁いだようなものですから、正直なところ子を産まないという選択肢はないんですよね…」
申し訳なさそうに、真に夫婦となることを求めるシャロン。
彼女との婚姻で周囲に求められているのは子を作ることだ。この国の公爵としてそれはとても重要なことであるが、それだけを理由に結婚を強いられたシャロンを思うと申し訳ない気持ちになる。
これではまるで彼女は子を産むための道具だ。
「…でもやっぱり、私とそういうことするの、嫌ですよね?」
そう言って、モジモジと上目遣いで見てくるシャロンがどれだけ可愛かろうが、アルフレッドはエミリア以外の女を抱きたくはない。
…いや、嘘だ。多分本能に従えば余裕で抱ける。だが、この複雑な心境を正直に伝えるのは彼女にもエミリアにも失礼な気もする。
アルフレッドはどう答えるのが正解なのかわからず言葉を詰まらせた。
すると、
「一応、公爵様と髪色と瞳の色が同じ男性から子種をもらってくるのも一つの手段としてあるのですが」
どうでしょうか、と顔色を伺うように首を傾げるシャロンに、アルフレッドは一瞬固まってしまった。
シャロンに罪はないし、彼女が亡き前妻を思う旦那ごと優しく受け入れる懐の深い女性だということは、この一日で十分に理解できた。アルフレッドにはもったいないくらいによく出来た嫁なのは間違いない。
しかし、未だエミリアを思うアルフレッドはどうしても彼女と肌を重ねる事が出来そうにない。
「どうしたものか…」
もうすぐ、メイド達に連れられてシャロンがこの部屋にやってくる。
真っ黒な夜着に身を包んだアルフレッドは、額を抑えて項垂れた。
すると、コンコンと扉を叩く音がする。
(ああ、本当にどうしたら良いのだろうか)
とうとうこの時が来てしまった。
仕方なく入室を許可したが、まだ彼女を抱く覚悟は出来ていないアルフレッドは眉間の皺を抑えた。
「旦那様、奥様をお連れしました」
「ああ、ありがとう…」
恐る恐る扉の前に立つシャロンに目を向けると、彼女は布の少ない夜着を身に纏い、ふわふわのガウンを羽織っていた。
(あ、抱けるかも)
本能的にそう思ってしまったアルフレッドは、ハッと我に帰り彼女から目を逸らせた。
こんなことを思うなどエミリアに対する冒涜だと、アルフレッドは心の中でただひたすらに自分を責めた。
微妙に気まずい空気が流れる。
しかしそんなことはお構いなしに、メイド達は「ごゆっくり」と言い残し、シャロンを置いて去ってしまった。
ごゆっくりと言われても、ごゆっくりできる心境ではない。
「その格好、大丈夫か?」
大丈夫でないのは本能のままに反応する自分の股間だが、それを勘づかれるわけにはいかないのでとりあえず話題を振るアルフレッド。
シャロンは困惑した様子で雑な振り方をされた話題に応える。
「…大丈夫とは?」
「寒くないか?その、かなり薄着だろう?」
「ああ、大丈夫です。このガウン温かいので」
「そ、そうか…」
会話が終わってしまった。やはり気まずい。
火照る体をどうにかしたいが、視線が自然とシャロンの豊満な白い胸元に向いてしまう。
(ああ、ダメだ!浮気者!私の浮気者!)
アルフレッドが一人で無駄に自己嫌悪に陥っていると、シャロンがそばに行っても良いかと提案してきた。
「え!?」
「え?」
予想外の展開に無駄に動揺したアルフレッドは声が裏返ってしまい、咄嗟に口元を押さえた。
(恥ずかしい)
いい歳したおじさんなのに、初夜で動揺しているなんて恥ずかしい。
アルフレッドの顔はみるみる赤くなる。
(そうだよな、そりゃ側に来たいよな)
なんせ初夜だ。シャロンだって可愛らしい夜着に身を包んだ自分を見てもらいたいに決まっている。
覚悟を決めなければ、とアルフレッドはこちらに来るように言おうとした。
しかし、
「あのー。私、自分の部屋に戻りましょうか?」
シャロンの方が先にそう言った。
アルフレッドにはその表情が少し悲しそうに見えた。
きっと彼女は自分の覚悟が足りないことを察して気を使ったのだろう。
その通りだ。アルフレッドにはシャロンを真の意味で妻にする覚悟などない。
彼がどうしたものかと答えに迷っていたら、シャロンの方から核心をついてきた。
「…どうしましょう?」
「…どうする、とは?」
「私は後継を産むために公爵様に嫁いだようなものですから、正直なところ子を産まないという選択肢はないんですよね…」
申し訳なさそうに、真に夫婦となることを求めるシャロン。
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これではまるで彼女は子を産むための道具だ。
「…でもやっぱり、私とそういうことするの、嫌ですよね?」
そう言って、モジモジと上目遣いで見てくるシャロンがどれだけ可愛かろうが、アルフレッドはエミリア以外の女を抱きたくはない。
…いや、嘘だ。多分本能に従えば余裕で抱ける。だが、この複雑な心境を正直に伝えるのは彼女にもエミリアにも失礼な気もする。
アルフレッドはどう答えるのが正解なのかわからず言葉を詰まらせた。
すると、
「一応、公爵様と髪色と瞳の色が同じ男性から子種をもらってくるのも一つの手段としてあるのですが」
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