【完結】仕方がないので結婚しましょう

七瀬菜々

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「『アメリア・サザーランド侯爵令嬢!今この瞬間を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!』」

 宙を指差し、静かな部屋で婚約者相手にそう宣言するは、アメリア・サザーランド。
 由緒正しきサザーランド侯爵家のご令嬢である。

「なんだそれ」

 自身の名を呼び、高らかに婚約破棄を告げるアメリアに怪訝な視線を送るのは、エドワード。
 金髪碧眼に整った顔立ちをした、この国の王太子である。

「巷で流行りの恋愛小説ですわ!『平民の主人公と王子様の身分差の恋』を描いた物語なんですけど、これはその物語終盤のシーンのセリフです。主人公を虐めていた王子の婚約者を、学園の卒業パーティーの場で王子やその側近たちが断罪するんです。で、婚約者は国外追放されるんです。」
「たかだか学生のいじめくらいで国外追放とか、罪が重すぎないか?」

 キラキラと目を輝かせ語る婚約者に、エドワードはど正論を突きつける。 
 そしてノリの悪い彼は、はしたないから取り敢えず座れ、と促す。
 アメリアは不貞腐れた顔をして、大人しくソファに腰掛けた。

「まあ、そこは物語なので」
「そもそも王子は婚約者がいるのに、平民と恋仲になったのか?それ、浮気じゃないのか?」
「そこはまあ、物語なので」
「公衆の面前で婚約者を断罪するような阿呆が王子の国とか、絶対住みたくないな」
「そりゃあ現実的に考えたら、卒業パーティーをぶち壊してまでする事ではないですけれど、まあ物語なので」

 正論しか言わないエドワードに、頬を膨らませながら『物語だから』と連呼するアメリア。
 そんなアメリアを可愛いと思いつつも、エドワードは当然の疑問をぶつける。

「で、どうしてそんな話が出てきたんだ?」

 自分とのお茶会の時間のために、新しいネタでも仕入れてきたのかと一瞬思った。
 しかし、婚約者同士の逢瀬の場にはあまり相応しくない話題だ。
  幾度となく、この手の話題を提供されてきたエドワードは、今回も同様の理由からきた話だとわかりつつも、一応確かめる。

「もしかして例のアレ?」
「そうです!私たちの婚約破棄もこれにのっとれば良いのではないかと!」

 アメリアはずいっと前に出て、妙案でしょう?とにっこり笑う。
 幾度目かの婚約破棄の提案に、エドワードは深いため息をついた。

「…俺に婚約者を公衆の面前で辱めるような愚かな王子になれと?」

 そう言うエドワードの顔は、口角は上がっているが、目は笑っていない。
 流石にそこまで落ちぶれたくはない、と彼は当然のごとく拒否した。
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