3 / 7
3
しおりを挟む
「ローズ商会の息子か?」
「はい」
アメリアが一目惚れしたのは、輸入菓子や茶葉をメインに取り扱う商会の息子、ダグラス・ローズ。
歳はアメリアより10も上の優しく朗らかな好青年だ。
「あの歳で未婚なんて、訳ありじゃないのか?」
ジトっとした目で、エドワードは向かいの婚約者を見た。
「まあ、一目惚れするほどの容姿ではありませんし、人畜無害のいい人止まりタイプの男性なので何だかんだと婚期を逃しているのかもしれません」
「…お前、好きなんだよな?」
想い人に対して、辛辣すぎる評価をするアメリア。
エドワードはその恋心を疑いたくなる。
「一応好きですよ?ただ現実を見ているだけです。それに結婚出来ないのは妹がまだ幼いというのもあるでしょう」
ローズ家には母親がいない。 数年前に儚くなったそうだ。
ダグラスの妹は、まだ10歳。
しっかり者と噂だが、それでもまだ子どもだ。母親代わりの兄がそばにいてやらねばと彼は思っているらしい。
エドワードは「ふーん」と、その話を興味なさげに聞く。
「やる気出してください!殿下だってミアと結婚したいでしょ?」
「…できるもんならな」
エドワードは自嘲するように答えた。
エドワードもまた、お忍びで訪れた城下で気になる少女を見つけたらしい。
その娘の名はミア。ダグラス・ローズの妹である。
そう、2人はローズ商会が経営するカフェでお忍びデートをし、そこでローズ兄妹と出会ったのだ。
「ミア、美しい子ですよね」
「…そうだな」
エドワードは、ローズ商会の紅茶を啜りながら考える。
何がどうなって、彼女の中での自分の想い人が10歳の小娘になってしまったのかと。
「しかし、いくら美しいからといえど10歳の女の子に目をつけるなんて思いませんでしたわ。実は幼女趣味ですか?」
アメリアは疑惑の目を向ける。
「そこは青田買いと言ってくれ。美人を愛でるのに年齢は関係ない」
「物は言いようですね」
「大体、幼女と言うが別に幼女ほど幼くはないだろう。まあ見てろ、アレはあと3年もすれば大輪を咲かせるぞ?」
エドワードはなぜか得意げに言う。
女を見る目には自信があるらしい。
そういう所がアメリアの誤解を招く原因でもあるのだが、男の性か、やめられない。
「あと3年してもまだ13ですけどね」
やはり幼女趣味か、とアメリアは目の前の婚約者を半眼で見た。
エドワードは態とらしく咳払いする。
「あのな、アメリア。何度も言うが本当に違うからな?あの時だって数年後が楽しみだと言っただけだからな?」
「でも、ダグラスさんに『嫁にしたいか』と聞かれたとき、『そうだな』と答えいらっしゃいましたわ」
「そう答える雰囲気だったからだ」
幼女趣味ではないと一応念押しする。
真面目で快活で善良だが、思慮の浅いアメリアはいつ口を滑らせるかわからない。
王宮に『王太子幼女趣味疑惑』が広まるのも時間の問題だろう。
「まあ、兎に角!当たって砕けろですわ、殿下!」
「砕けたくはないなぁ」
「そこは言葉の綾というやつです」
砕けたくはないけれど、エドワードは一応婚約者としてアメリアの話に耳を傾ける。
「それで、婚約破棄宣言?」
「そうなんですけど、実際に参考としたいのはそこではなく、その前の段階です」
「前段階?」
「はい。私たちの目的は私たちの婚約を破棄し、新たに想い人と結ばれることです。しかし、王命であるこの婚約を破棄させるためにはそれ相応の理由が必要。なので巷で話題の恋愛小説を参考に、私が嫉妬に狂ってミアに嫌がらせをしたするのです。そうすれば次期王妃としての資質がないとされ、婚約を破棄できるという流れです!」
完璧な計画だろうとでも言いたげに胸を張って主張するアメリア。
しかし、エドワードの反応は微妙だ。
「それは無理だ。たとえお前との婚約を破棄できたとしても、俺にはまた別の令嬢をあてがわれるだけだ」
的確にアメリアの作戦の穴をつく。
流石に、次期王妃に平民の娘を据えるわけにはいかない。
「それに、してもいない嫌がらせなんてすぐにバレるぞ」
周囲はアメリアが平民の小娘に嫌がらせをするような女ではない事も、そもそも嫉妬に狂うほどエドワードに恋情など抱いていない事も知っている。
この案を実行しても、すぐに全てを明らかにされてしまうのは目に見えている。
「…あと、そもそもだ。お前に冤罪をかけてまで欲しいと思うものなど、俺にはない」
「そこはお気になさらずとも」
「気にするさ。お前はダグラス・ローズが初恋かもしれんが、俺はお前が初恋だからな」
「はい」
アメリアが一目惚れしたのは、輸入菓子や茶葉をメインに取り扱う商会の息子、ダグラス・ローズ。
歳はアメリアより10も上の優しく朗らかな好青年だ。
「あの歳で未婚なんて、訳ありじゃないのか?」
ジトっとした目で、エドワードは向かいの婚約者を見た。
「まあ、一目惚れするほどの容姿ではありませんし、人畜無害のいい人止まりタイプの男性なので何だかんだと婚期を逃しているのかもしれません」
「…お前、好きなんだよな?」
想い人に対して、辛辣すぎる評価をするアメリア。
エドワードはその恋心を疑いたくなる。
「一応好きですよ?ただ現実を見ているだけです。それに結婚出来ないのは妹がまだ幼いというのもあるでしょう」
ローズ家には母親がいない。 数年前に儚くなったそうだ。
ダグラスの妹は、まだ10歳。
しっかり者と噂だが、それでもまだ子どもだ。母親代わりの兄がそばにいてやらねばと彼は思っているらしい。
エドワードは「ふーん」と、その話を興味なさげに聞く。
「やる気出してください!殿下だってミアと結婚したいでしょ?」
「…できるもんならな」
エドワードは自嘲するように答えた。
エドワードもまた、お忍びで訪れた城下で気になる少女を見つけたらしい。
その娘の名はミア。ダグラス・ローズの妹である。
そう、2人はローズ商会が経営するカフェでお忍びデートをし、そこでローズ兄妹と出会ったのだ。
「ミア、美しい子ですよね」
「…そうだな」
エドワードは、ローズ商会の紅茶を啜りながら考える。
何がどうなって、彼女の中での自分の想い人が10歳の小娘になってしまったのかと。
「しかし、いくら美しいからといえど10歳の女の子に目をつけるなんて思いませんでしたわ。実は幼女趣味ですか?」
アメリアは疑惑の目を向ける。
「そこは青田買いと言ってくれ。美人を愛でるのに年齢は関係ない」
「物は言いようですね」
「大体、幼女と言うが別に幼女ほど幼くはないだろう。まあ見てろ、アレはあと3年もすれば大輪を咲かせるぞ?」
エドワードはなぜか得意げに言う。
女を見る目には自信があるらしい。
そういう所がアメリアの誤解を招く原因でもあるのだが、男の性か、やめられない。
「あと3年してもまだ13ですけどね」
やはり幼女趣味か、とアメリアは目の前の婚約者を半眼で見た。
エドワードは態とらしく咳払いする。
「あのな、アメリア。何度も言うが本当に違うからな?あの時だって数年後が楽しみだと言っただけだからな?」
「でも、ダグラスさんに『嫁にしたいか』と聞かれたとき、『そうだな』と答えいらっしゃいましたわ」
「そう答える雰囲気だったからだ」
幼女趣味ではないと一応念押しする。
真面目で快活で善良だが、思慮の浅いアメリアはいつ口を滑らせるかわからない。
王宮に『王太子幼女趣味疑惑』が広まるのも時間の問題だろう。
「まあ、兎に角!当たって砕けろですわ、殿下!」
「砕けたくはないなぁ」
「そこは言葉の綾というやつです」
砕けたくはないけれど、エドワードは一応婚約者としてアメリアの話に耳を傾ける。
「それで、婚約破棄宣言?」
「そうなんですけど、実際に参考としたいのはそこではなく、その前の段階です」
「前段階?」
「はい。私たちの目的は私たちの婚約を破棄し、新たに想い人と結ばれることです。しかし、王命であるこの婚約を破棄させるためにはそれ相応の理由が必要。なので巷で話題の恋愛小説を参考に、私が嫉妬に狂ってミアに嫌がらせをしたするのです。そうすれば次期王妃としての資質がないとされ、婚約を破棄できるという流れです!」
完璧な計画だろうとでも言いたげに胸を張って主張するアメリア。
しかし、エドワードの反応は微妙だ。
「それは無理だ。たとえお前との婚約を破棄できたとしても、俺にはまた別の令嬢をあてがわれるだけだ」
的確にアメリアの作戦の穴をつく。
流石に、次期王妃に平民の娘を据えるわけにはいかない。
「それに、してもいない嫌がらせなんてすぐにバレるぞ」
周囲はアメリアが平民の小娘に嫌がらせをするような女ではない事も、そもそも嫉妬に狂うほどエドワードに恋情など抱いていない事も知っている。
この案を実行しても、すぐに全てを明らかにされてしまうのは目に見えている。
「…あと、そもそもだ。お前に冤罪をかけてまで欲しいと思うものなど、俺にはない」
「そこはお気になさらずとも」
「気にするさ。お前はダグラス・ローズが初恋かもしれんが、俺はお前が初恋だからな」
161
あなたにおすすめの小説
私の以外の誰かを愛してしまった、って本当ですか?
樋口紗夕
恋愛
「すまない、エリザベス。どうか俺との婚約を解消して欲しい」
エリザベスは婚約者であるギルベルトから別れを切り出された。
他に好きな女ができた、と彼は言う。
でも、それって本当ですか?
エリザベス一筋なはずのギルベルトが愛した女性とは、いったい何者なのか?
とある令嬢の婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある街で、王子と令嬢が出会いある約束を交わしました。
彼女と王子は仲睦まじく過ごしていましたが・・・
学園に通う事になると、王子は彼女をほって他の女にかかりきりになってしまいました。
その女はなんと彼女の妹でした。
これはそんな彼女が婚約破棄から幸せになるお話です。
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
安息を求めた婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。
そして新たな婚約者は私の妹。
衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。
そう全ては計画通り。
これで全てから解放される。
……けれども事はそう上手くいかなくて。
そんな令嬢のとあるお話です。
※なろうでも投稿しております。
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
俺って当事者だよな? 知らぬ間に全てを失いました
碧井 汐桜香
恋愛
格上であるサーベンディリアンヌ公爵家とその令嬢ファメリアについて、蔑んで語るファメリアの婚約者ナッツル・キリグランド伯爵令息。
いつものように友人たちに嘆いていると、第二王子であるメルフラッツォがその会話に混ざってきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる