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アメリアはキョトンとした顔でエドワードを見る。
エドワードのサファイアの瞳が、真剣な眼差しでアメリアを見つめていた。
「…ダウト」
「…なぜ?」
「殿下は昔からわかりやすい美人が好きです」
「アメリアも綺麗だよ」
「それこそダウトです。私は生まれてこの方、こんな平均顔は見たことがないと言われ続けてきたほどの平均顔です。お父様にもお母様にも、平均すぎて印象が薄いと言われてきましたもの。殿下の好みじゃありませんわ」
「侯爵も奥方も容赦ないな」
事実ですから、とアメリアは紅茶に口をつける。
事実を言われても別に傷つきはしないし、アメリアとて自分の顔の評価くらい自分でわかる。
毎日鏡を見て、その度に美しい婚約者と自分を比べては落ち込んでいるのだから。
「殿下は無駄に顔が良いのですから、そのような嘘は言わない方が身のためですよ」
「無駄とか言うなよ」
「殿下の顔で女の子を期待させるような事を言おうものなら、勘違いからの修羅場コース真っしぐらです」
「中々勘違いしてくれん奴もいるがな」
「ミアってイケメンに耐性のあるタイプですか?」
アメリアの反応に、エドワードは深くため息をついた。
暖簾に腕押しとはまさに事。
「いっそ俺が王位継承権を放棄できたら良いのだけれど」
エドワードに王位継承権が無ければ、誰に求婚しても大きな問題にはならない。
何のしがらみもない状態になれば、きっと彼の思いもストレートに伝わる事だろう。
しかし、それをアメリアは強く否定した。
「それはなりませんわ!殿下は王になるべきお方です。王族でなくてはいけません」
エドワードは幼い頃から大変優秀で、将来は稀代の賢君になると臣下から期待されている王子だ。彼を失うことはこの国にとって不利益にしかならない。
また、エドワード自身も王族として並々ならぬ努力を積み重ねてきたことをいつも隣で見てきたアメリアは知っている。
「きっと殿下が治めるこの国はとても素敵な国になりますわ。私は殿下の治世の元、繁栄するこの国を見てみたいです」
「…アメリアがそう言うなら、俺は頑張らねばならんな。王族として」
そう言って、エドワードも微笑んだ。
大切にしてきたアメリアが幸せになれるよう、エドワードはこの国を守り、繁栄させていくことを誓う。
「では、私に他に好きな人ができたから婚約を解消したいとお父様にお願いするのはどうでしょう?」
いい感じに話が終わりかけていたのに、再び婚約破棄の話に戻され、エドワードは愕然とする。
「今日はやけに食い下がるな…。その話はまだ続くのか?」
「諦めたらそこで試合終了です」
そろそろ、流石のエドワードも面倒くさくなってきた。
「いや、本当に俺はこのまま結婚しても何の問題ないよ?というか、寧ろ俺はお前と結婚したい」
「そう仰って、過去何度も恋を諦めてこられたでしょう!?私は、殿下には幸せになって欲しいのです」
「俺だってアメリアには幸せになって欲しいし、幸せにするのは俺でありたいとも思う!」
「だからこその婚約破棄です!お互いを幸せに出来るのはお互いしかいませんわ!」
「確かにそうだが、そういうことではない…」
エドワードは項垂れる。
もうここまでくると、どう言っても伝わる気がしない。
エドワードは恋を諦めた事は一度たりともないし、アメリアが言う恋というのは彼が『あの子美人だなー』とか呟いたやつを『好きなのですか!?』と勘違いしただけのことなのだ。
それを、訂正する彼の言葉も聞き入れず、アメリアは思い込みだけでそう決めつけている。
流石に少し泣きそうだ。
「あ、いっそミアを我が侯爵家の養子にするというのはどうでしょう?そうすれば私と婚約破棄した後も、ミアと婚約を結べばサザーランド侯爵家と王家の絆も無事深まります!」
良い案を思いついたとでも言うように、アメリアはパンと手を叩いた。
普段は阿呆のくせに、結構な妙案を出してきたのでエドワードは少し焦る。
この案はそれなりに現実味があるからだ。
嫌な話だが身分の違いから、この案はミアの意思関係なく強行突破できてしまう。
まあ、侯爵を説得できればの話だが。
「侯爵家にはアメリアという娘がいる。後継には君の兄、ローレンス殿もいる。わざわざ養子を取る理由などない。」
「私はダグラスさんの元に嫁ぐのでいなくなります」
その言葉に、エドワードの眉がピクッと動いた。
他の男に嫁ぐという言葉に、思わず声が低くなる。
「仮にアメリアがダグラス・ローズの元に嫁ぎたいから、ミアを養子にしてくれと言っても侯爵は認めない」
「なぜですか?」
「平民生まれの平民育ち。これから貴族女性として必要な教育を施す手間を考えても、アメリアを手放すわけがない」
アメリアは頭は弱いが、所作や立ち居振る舞いは完璧だ。
そしてそれは長年に及ぶ訓練の賜物。
「私が淑女になるための教育を受け始めたのは9つの時です。ミアはしっかり者ですし、成人するまでには立派な淑女となると思います」
「確かにそうかもしれないが、今からまた8年かけて、令嬢をひとり育てる手間をわざわざ取らないだろう。だいたい、ミアの気持ちはどうなる?ミアは貴族になることを選ぶか?」
ミアは兄思いの優しい子どもだ。
自分のために結婚もせずに養ってくれている兄を見捨て、ひとり貴族になるような選択はしないだろう。
皆が皆、貴族の暮らしをしたいと思っているわけじゃない。
アメリアはそこを失念している。エドワードはそう思った。しかし…。
「現在、ローズ商会には借金があるそうです。ミアは家族思いです。ミアを養子にし、ローズ商会を経済的に支援するという契約を結べば可能ですよ?」
善良なアメリアから『ミアを金で買う』という案が出てきて、エドワードはギョッとする。
「…アメリア、それはミアを金で買うと言うことだぞ?」
「そうですよ?しかし、それによりローズ商会は救われますし、ミアは貴族になれます。貴族になれば今までとは違う裕福な暮らしができます。違いますか?」
少し、場の空気が張り詰める。
エドワードは努めて冷静に振る舞うが、その顔色はどんどん悪くなる。
「アメリア、自分が何を言っているのかわかっているのか?それは貴族という身分と金を利用して、平民のミアを無理やり従わせる行為だ」
貴族が自分の目的のためだけに、その身分差を利用し、金と権力で平民を買う。
その行為は善良なアメリアには似つかわしくない。
けれどエドワードはその行為に身に覚えがあった
「わかっていますよ?ですが、ミアにとっては幸せなはずでしょう?何故なら私がそうなのですから」
アメリアはその時、確かに花が綻ぶように笑った。
しかし、その目に感情が見えなかった。
エドワードのサファイアの瞳が、真剣な眼差しでアメリアを見つめていた。
「…ダウト」
「…なぜ?」
「殿下は昔からわかりやすい美人が好きです」
「アメリアも綺麗だよ」
「それこそダウトです。私は生まれてこの方、こんな平均顔は見たことがないと言われ続けてきたほどの平均顔です。お父様にもお母様にも、平均すぎて印象が薄いと言われてきましたもの。殿下の好みじゃありませんわ」
「侯爵も奥方も容赦ないな」
事実ですから、とアメリアは紅茶に口をつける。
事実を言われても別に傷つきはしないし、アメリアとて自分の顔の評価くらい自分でわかる。
毎日鏡を見て、その度に美しい婚約者と自分を比べては落ち込んでいるのだから。
「殿下は無駄に顔が良いのですから、そのような嘘は言わない方が身のためですよ」
「無駄とか言うなよ」
「殿下の顔で女の子を期待させるような事を言おうものなら、勘違いからの修羅場コース真っしぐらです」
「中々勘違いしてくれん奴もいるがな」
「ミアってイケメンに耐性のあるタイプですか?」
アメリアの反応に、エドワードは深くため息をついた。
暖簾に腕押しとはまさに事。
「いっそ俺が王位継承権を放棄できたら良いのだけれど」
エドワードに王位継承権が無ければ、誰に求婚しても大きな問題にはならない。
何のしがらみもない状態になれば、きっと彼の思いもストレートに伝わる事だろう。
しかし、それをアメリアは強く否定した。
「それはなりませんわ!殿下は王になるべきお方です。王族でなくてはいけません」
エドワードは幼い頃から大変優秀で、将来は稀代の賢君になると臣下から期待されている王子だ。彼を失うことはこの国にとって不利益にしかならない。
また、エドワード自身も王族として並々ならぬ努力を積み重ねてきたことをいつも隣で見てきたアメリアは知っている。
「きっと殿下が治めるこの国はとても素敵な国になりますわ。私は殿下の治世の元、繁栄するこの国を見てみたいです」
「…アメリアがそう言うなら、俺は頑張らねばならんな。王族として」
そう言って、エドワードも微笑んだ。
大切にしてきたアメリアが幸せになれるよう、エドワードはこの国を守り、繁栄させていくことを誓う。
「では、私に他に好きな人ができたから婚約を解消したいとお父様にお願いするのはどうでしょう?」
いい感じに話が終わりかけていたのに、再び婚約破棄の話に戻され、エドワードは愕然とする。
「今日はやけに食い下がるな…。その話はまだ続くのか?」
「諦めたらそこで試合終了です」
そろそろ、流石のエドワードも面倒くさくなってきた。
「いや、本当に俺はこのまま結婚しても何の問題ないよ?というか、寧ろ俺はお前と結婚したい」
「そう仰って、過去何度も恋を諦めてこられたでしょう!?私は、殿下には幸せになって欲しいのです」
「俺だってアメリアには幸せになって欲しいし、幸せにするのは俺でありたいとも思う!」
「だからこその婚約破棄です!お互いを幸せに出来るのはお互いしかいませんわ!」
「確かにそうだが、そういうことではない…」
エドワードは項垂れる。
もうここまでくると、どう言っても伝わる気がしない。
エドワードは恋を諦めた事は一度たりともないし、アメリアが言う恋というのは彼が『あの子美人だなー』とか呟いたやつを『好きなのですか!?』と勘違いしただけのことなのだ。
それを、訂正する彼の言葉も聞き入れず、アメリアは思い込みだけでそう決めつけている。
流石に少し泣きそうだ。
「あ、いっそミアを我が侯爵家の養子にするというのはどうでしょう?そうすれば私と婚約破棄した後も、ミアと婚約を結べばサザーランド侯爵家と王家の絆も無事深まります!」
良い案を思いついたとでも言うように、アメリアはパンと手を叩いた。
普段は阿呆のくせに、結構な妙案を出してきたのでエドワードは少し焦る。
この案はそれなりに現実味があるからだ。
嫌な話だが身分の違いから、この案はミアの意思関係なく強行突破できてしまう。
まあ、侯爵を説得できればの話だが。
「侯爵家にはアメリアという娘がいる。後継には君の兄、ローレンス殿もいる。わざわざ養子を取る理由などない。」
「私はダグラスさんの元に嫁ぐのでいなくなります」
その言葉に、エドワードの眉がピクッと動いた。
他の男に嫁ぐという言葉に、思わず声が低くなる。
「仮にアメリアがダグラス・ローズの元に嫁ぎたいから、ミアを養子にしてくれと言っても侯爵は認めない」
「なぜですか?」
「平民生まれの平民育ち。これから貴族女性として必要な教育を施す手間を考えても、アメリアを手放すわけがない」
アメリアは頭は弱いが、所作や立ち居振る舞いは完璧だ。
そしてそれは長年に及ぶ訓練の賜物。
「私が淑女になるための教育を受け始めたのは9つの時です。ミアはしっかり者ですし、成人するまでには立派な淑女となると思います」
「確かにそうかもしれないが、今からまた8年かけて、令嬢をひとり育てる手間をわざわざ取らないだろう。だいたい、ミアの気持ちはどうなる?ミアは貴族になることを選ぶか?」
ミアは兄思いの優しい子どもだ。
自分のために結婚もせずに養ってくれている兄を見捨て、ひとり貴族になるような選択はしないだろう。
皆が皆、貴族の暮らしをしたいと思っているわけじゃない。
アメリアはそこを失念している。エドワードはそう思った。しかし…。
「現在、ローズ商会には借金があるそうです。ミアは家族思いです。ミアを養子にし、ローズ商会を経済的に支援するという契約を結べば可能ですよ?」
善良なアメリアから『ミアを金で買う』という案が出てきて、エドワードはギョッとする。
「…アメリア、それはミアを金で買うと言うことだぞ?」
「そうですよ?しかし、それによりローズ商会は救われますし、ミアは貴族になれます。貴族になれば今までとは違う裕福な暮らしができます。違いますか?」
少し、場の空気が張り詰める。
エドワードは努めて冷静に振る舞うが、その顔色はどんどん悪くなる。
「アメリア、自分が何を言っているのかわかっているのか?それは貴族という身分と金を利用して、平民のミアを無理やり従わせる行為だ」
貴族が自分の目的のためだけに、その身分差を利用し、金と権力で平民を買う。
その行為は善良なアメリアには似つかわしくない。
けれどエドワードはその行為に身に覚えがあった
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