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ホテルにて⑤
しおりを挟む翌日、幸太が目を覚ますと叶は自身のベッドで体を起こしスマホを見つめていた。寝ぼけたまま叶を見つめていると、叶も幸太が起きた事に気付き微笑む。
「あっ、おはよう、私もさっき起きたんだけどね、ちょっとお先に顔洗ってくるね」
そう言ってそそくさと洗面所の方へと歩いて行った。
何を慌ててるんだ?――。
叶の少し戸惑うような仕草に疑問を抱き、まだ起きない頭を一生懸命回転させる。
暫く幸太が悩んでいると叶がすぐに戻り明るく声を掛けてきた。
「お待たせ、君も顔洗ってスッキリしてきたら?」
そう言って微笑む叶を見て、幸太も笑顔で頷き洗面所へと歩いて行く。
顔を洗い、歯を磨き、頭も少しスッキリして戻ると叶が少しはにかんだ笑みを浮かべて見つめていた。
「あ、あのさ、昨日はごめんね。私いつの間にか寝ちゃってたね」
少し照れくさそうに笑う叶を見て、先程から感じていた違和感は申し訳なく思ってたからだと気付き、幸太も思わず笑みを浮かべながら叶の横に腰を下ろす。
「疲れてるんだろなって思ったからそっとしといたよ。ちょっと寂しかったけどね」
少し意地悪な笑みを浮かべる幸太に叶は「ごめんってば」と言ってもたれかかった。
暫く話しながら甘い時間を過ごしていた二人だが、不意に叶のアラームが鳴り響く。
「ああ、そろそろ支度しなきゃ。昨日、晩御飯もろくに食べてないよね?朝はバイキングやってるみたいだけど行く?」
「ああなんかバタバタしてて忘れてたけど確かにお腹減ったな。そうだなせっかく高級ホテルに来てるんだしバイキング行きたいな」
「よし、じゃあそうしようか。すぐに支度するから待っててね」
そう言って叶は化粧ポーチを取り出すと素早く化粧をしていく。幸太も寝巻きから着替え暫く待っているとすぐに叶が振り返った。
「ねぇ、着替えるから向こう向いててよ」
そう言われ、思わず幸太も照れ笑いを浮かべて後ろを向いた。
やがて叶の支度も終わり二人揃って部屋を出る。二人がバイキングの会場に着くと見知った顔も散見されたが、叶は軽く会釈するだけであとは知らん顔を決め込んだ。
「いいの?お客さんじゃないの?」
不安になった幸太が尋ねるが叶は軽くため息をつくと首を振って僅かに口角を上げる。
「いいって。こっちは必要以上に拘束されてるんだし、それに昨日斗弥陀義人さんにはお礼伝えてるんだから過剰に反応する事ないよ。それよりバイキング堪能しようよ、こんな高級ホテル滅多に来れないんだから」
そう言って笑う叶だったが、確かに叶の言う通りそこには普段幸太が口にする事は出来ないような新鮮な魚介やブランド牛が和洋中様々な調理をされて並んでいた。
「あのさ叶さん。これって何から取るとかマナーみたいな物あるのかな?」
来たこともない高級ホテルのバイキングに幸太が戸惑っていると叶も苦笑いを浮かべて顔を近付ける。
「私もよく分からないけど、とりあえず流れに沿って、がっつく様な食べ方しなければいいんじゃないかな」
そう言って笑う叶と顔を合わせて幸太も笑っていた。
やがて好みの料理をプレートに取り席に着くと二人手を合わせて食事を始める。
「いただきます」
幸太が食べながら叶の方に目をやると、叶のプレートの上にはメインの肉料理や魚の他に旬の野菜やフルーツ等がバランス良く綺麗に並んでいた。
一方自分のプレートに目を向けると様々な肉料理と魚介類しか無く、バランスの悪さは一目瞭然だった。
少し恥ずかしくなりながら幸太が食事を進めていると、突然明るく声を掛けられる。
「おはようお二人さん、昨日はよく眠れた?それとも逆に寝不足かしら?」
慌てて幸太が視線を上げると、そこには満面の笑みを浮かべた志穂が二人を見つめて立っていた。
「疲れ果てて部屋に着いた途端に寝ちゃいましたよ」
ため息をつき、少しうんざりした様に叶が言うが志穂は変わらず笑みを浮かべたまま持っていたプレートをテーブルに置き、叶の横に腰を下ろした。
「あらそうなんだ。せっかく気を使ってそっとしといたのに」
「だったらもうちょっとそっとしといてくれませんか?今二人っきりの朝食楽しんでたんですけど」
「そんな邪険にしないでよ。一人で食事してても楽しくないんだから」
そう言って志穂が食事を始めると叶は眉間に皺を寄せてため息をつく様にして微かに頭を振った。
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