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斗弥陀邸へ
しおりを挟むその後ホテルを後にした一行は別々の車に別れて斗弥陀邸を目指す。義人達はミニバンに乗車し志穂達はレンタカーを返却した後、興梠を乗せていた車に乗車し斗弥陀邸へ向かった。
叶と幸太は初めに迎えに来てくれた運転手の車に再び乗車していた。
「すいません、またお願いしますね」
叶が柔和な笑みを浮かべて小さく頭を下げると、運転手もにこやかに頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします。またお二人を乗せて今度は斗弥陀邸へお送り出来る事を嬉しく思います」
「すいません、まずは私のマンションに寄ってもらえますか?」
「はい、承知しました。道だけ教えて頂いてもよろしいでしょうか」
そうして叶の道案内の元、車は叶のマンションへと辿り着いた。叶は車を待たしたまま幸太と共に自室へと戻ると、着替えを鞄に詰めていく。
「ごめんね、せっかく部屋に来てもらったのにゆっくりする時間もないね」
「まぁ今回は仕方ないよ。次は新しい部屋にゆっくり来させてもらうから」
そう言って笑う幸太の元にゆっくりと叶が歩み寄り、幸太の肩に手を掛けるとキスを交わした。
その後叶は幸太を見つめると眉尻を下げる。
「とりあえず君が変に気持ちを高ぶらせちゃう前に先に伝えとこうかと思うんだけどね、今から暫く一緒にいられるんだけど私としては他人の家、ましてやクライアントの家で君との関係を進めたくはないんだよね。別に凄く良いホテルとかじゃないと嫌だとか言ってるんじゃなくて、あくまでも二人っきりでプライベートな時間で君とはちゃんと進んで行きたいなって思っててさ」
申し訳なさそうに眉を八の字にする叶の頭を幸太が優しく撫でた。
「叶さんの言いたい事は分かるよ。正直もどかしいけど俺は大丈夫だから、ちょっとだけこうさせてよ」
そう言って叶を引き寄せ抱き締めると、叶も幸太の腰に手を回して力強く抱き締めた。
ダンボールが積み上がり殺風景になった部屋で暫く二人抱き締めあった後、すっと幸太の方から離れる。
「そろそろ行かなきゃまずいかな?」
「そうだね、行こうか」
そう言って二人向き合うと、互いに笑みを浮かべて部屋を後にする。
車を待たせていた駐車場まで二人して戻ると運転手は座席をやや倒してリラックスする様にシートに体を預けていた。
「お待たせしました」
叶が明るく声を掛けると運転手は慌ててシートを起こす。
「す、すいません、まさかこんなに早くお戻りになるとは思っておらず――」
慌てて弁明するような運転手に対して叶は「ふふふ」と笑いながら頭を振る。
「気にしないで下さい。あまりお待たせするのも申し訳ないかと思いまして」
「お気遣いありがとうございます。しかしもう少しごゆっくりされても大丈夫でしたよ、いいんですか?」
「ええ、はい。大丈夫です、行きましょう」
笑顔で叶が頷き幸太も乗り込んで来ると、運転手も笑顔で頷き車を発進させる。
叶と幸太を乗せた車は市街地を抜け、高速道路へと入って行く。運転手が高速の流れに乗り、スムーズに車を走らせていると後部座席から不意に叶が話し掛ける。
「運転手さん、そういえばお名前聞いてなかったですね。運転手さんでは味気ないんで差し支えなければ教えてもらってもいいですか?」
突然の質問に驚いた運転手だったがルームミラーに映る叶も満面の笑みを浮かべていた為、運転手もにこやかに答える。
「お気遣い頂きありがとうございます。私は横山と申します。斗弥陀邸までスムーズに行けば三時間程ですが、その間よろしくお願いします。夕方までにお二人をお連れするように言われてますので、少々寄り道する時間ぐらいならあります。ですので何処か寄りたい所があれば仰って下さい。出来る限り御要望にはお応えいたします」
「では横山さんあらためましてよろしくお願いしますね」
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