視える私と視えない君と

赤羽こうじ

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真相⑪

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「随分寂しくなったね」

 食堂内を軽く見渡しながら幸太が呟く。奏音、秋義がいなくなり、朱里や義人、それに三条と神谷崎に使用人の西園までいなくなっていた。
 初めの頃に比べると半数になった食堂内は確かに寂しを感じさせる。

「まぁ確かにそうね。だけどそれは仕方ないよ。まぁ今日帰って来る人もいるみたいだけどね」

 叶の言葉に幸太は目を丸くさせて驚いていたが、叶は楽しそうに笑ってそれ以上は話さなかった。
 やがて食事も終わり皆が食後の珈琲や紅茶を飲みながら歓談していると、屋敷の玄関の方が少し騒がしくなったような気がした。

 それに気付いた数人がふと食堂の扉の向こうに気を向けた時、食堂の扉がすっと開き秋義が姿を見せた。

「すいません、今戻りました」

 秋義はすぐに綺麗なお辞儀をし食堂内に入ると、一番に義将の元へと歩いて行く。

「斗弥陀が大変な時に不在にして申し訳ありませんでした」

 将義に向かって再び深く頭を下げると義将はゆっくり静かに頷いていた。

「仕方ない、お前も大変だっただろう」

 義将がそう声を掛けると同時に少し甲高い声が響く。

「秋義さん!」

 秋義だけでなく、食堂内にいた全員がその声に反応し振り向くと華月が秋義に向かって駆け出していた。
 華月はそのまま秋義に抱きつくと、秋義はしっかりと受け止める。

「秋義さん、大丈夫ですか?」

 早口で捲し立てるように問い掛ける華月を秋義は優しくぽんぽんと叩くと引き離した。

「ああ、俺は大丈夫さ奏音の傍についていただけだしな」

「あ、いや、でも、秋義さんも大変だったと思うし――」

 尚も心配を口にする華月だったが、秋義は大丈夫だと言わんばかりに片手を上げると叶達の方へと歩み寄る。

「鬼龍さん、それに陸奥方さんに倉井君だったよな?皆色々と助かったよありがとう。嵯峨良さんだったよな?あの人にもお礼を伝えたいんだけど」

「ああ、先生は食欲なくて部屋で休んでます。後で呼んで来ますね。まぁあまり活躍はしてないですけど」

 志穂が笑いながら言うが秋義は少し困った様に苦笑いを浮かべていた。
 そんな中、華月がゆっくりと歩み寄り秋義の傍らに立つ。

「あの、私、本当に秋義さんの事が心配で――」

 そう言って少し不満気な表情を浮かべる華月を見て、叶が静かに立ち上がった。

「あら、ごめんね。だけど元はと言えば華月さん、貴女が奏音さんの部屋にスズメバチを放つからそんな事になったんじゃない」

 叶が冷たい眼差しでそう言うと、食堂内は時が止まったかの様に静まり返った。

「な、何を言ってるんですか鬼龍さん?」

 目を潤ませ、今にも泣き出しそうな顔をして華月が声を震わせて問い掛けるが、叶は鼻で笑うと冷笑を浮かべる。

「あっ、ごめんごめん、少し違ったか。スズメバチを放ったんじゃなくて忍ばせてたのよね?」

 叶の問い掛けに華月は答えず静かに叶を見つめていた。

「華月さん、貴女は屋敷に着くとまず、奏音さんにあてがわれる予定の部屋を西園さんから聞き出しすぐにその部屋に行き桃の香水を軽く振り撒いた。そして初めに自分が案内された部屋に入ると眠らせたスズメバチを忍ばせ奏音さんが騒ぎ出すのを待った。桃に対してアレルギーがある奏音さんが匂いだけでも嫌悪感を示す事を貴女は知っていたから。案の定、貴女の予想通り奏音さんが部屋を変えるよう騒ぎ出すと満を持して部屋の交換を提案した。そうして奏音さんは殺人蜂が潜んでいる部屋へと喜んで入ってしまった。後は眠らせていたスズメバチが目を覚まし奏音さんに襲いかかるのを待てばいいだけ。蜂を駆除する人達も一回蜂を眠らせてから目印を付けて、そして目覚めた蜂が巣に帰るのを追って巣ごと駆除するらしいじゃん。何回か蜂を眠らす練習してればどれくらいで目覚めるかわかるんでしょ?」

 少し冷たく問い掛ける叶に対して華月は両手で顔を覆うと肩を震わせて俯いてしまった。
 
「そ、そんな事……酷い……」

 消え入りそうな声でそう呟く華月だったが、叶は冷笑を浮かべて華月を見つめる。
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