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あの日のかくれんぼ 侵入D団地
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恵美はO市にあるコンビニや喫茶店に行き日が落ちるのを待った。本当は少しでも明るいうちに団地内に入りたかったのが本音だったが、またあの警察官がいれば面倒な事になると思い渋々時間を潰すしかなかったのだ。
喫茶店でアイスティーを飲みながら腕時計に目を落とす。時計の針は九時を指していた。
「もう流石にあの警官もいないでしょ」
そう呟き席を立った。いくら明日が休みとはいえ、帰りの事を考えればそろそろ動き出さなければ帰宅が深夜になりかねない。いくら恵美の家が門限等厳しくないとはいえ、流石に深夜の帰宅は憚られる。
団地の前まで戻って来た恵美は周りの眼を警戒しながらゆっくりとD団地に近付いて行く。日が落ち、真っ暗な住宅街に佇むその灰色の団地からは異様な雰囲気が感じられ、妙な威圧感さえ感じる。まるで近付く者を拒んでいる様な、そんな気さえする。
「はぁ、私だってこんな所、好き好んで来てる訳じゃないんだからね」
小声で呟き、ゆっくりと団地内に足を踏み入れる。自分の腰程まで伸びた雑草をかき分けて、恵美は歩みを進めて行く。
雑草をかき分けて進んで行くと、行く手を遮るかの様に生い茂っていた雑草は突然無くなり団地の入口が姿を現した。団地周辺には草等生えてはおらず、まるでそこの空間だけ時が止まっているかの様だった。
「ははは、相変わらず不気味だって」
冷笑を浮かべて恵美が団地に近付くが、恵美はその裏にある別の棟に向かった。
「多分行くべきは事件があった棟よね?」
そう言って恵美は裏にある棟の入口の前に立った。入口には侵入者を拒む様に立入禁止と乱雑に書かれたベニア板が立て掛けられている。
しかし横には簡単に人一人出入り出来る程の隙間がある為、ここを訪れる者はここから出入りしているのが容易に想像出来た。恵美もその隙間から団地内に入る事にする。
団地内に入るとそこは無機質なコンクリートに囲まれており、月明かりさえ届かない暗闇が支配していた。恵美は来る途中のコンビニで購入した懐中電灯を取り出し、明かりを点けた。懐中電灯の明かりが所々亀裂の入った灰色の廊下を照らし出すと、恵美はゆっくりと歩み出す。コツコツと暗いコンクリート製の廊下に恵美の足音だけが反響する中、ゆっくりと歩きながら一階にある各部屋を覗いて行く。扉が壊れ、懐中電灯で照らしただけで簡単に中が覗ける部屋もあったが、扉を開けて中を覗き込まなければならない部屋もあった。恵美はその各部屋を丁寧に覗いて回る。
だがどの部屋も最近人が入った様な形跡は見られなかった。そのまま恵美が進んで行くと、途中で上へと上がる階段が現れる。だが恵美は階段を無視して更に進んで行く。
しかし暫く進んだ所で恵美の足が止まった。一階の突き進んだ先では天井部分が崩落し、行く手を遮っていたのだ。恵美はその崩落した瓦礫を見つめて暫く佇む。
「……私の行く先で崩れるのは勘弁してよ」
そう言って恵美は踵を返した。少し廊下を戻り、恵美は階段の前に立つと持っていた懐中電灯で階段を照らした。
「結局ここを登らなきゃいけない訳ね」
そう言ってゴクリと唾を飲む。恵美は慎重に一歩一歩階段を踏み締めながら上がって行く。二階に着くと恵美は懐中電灯を右に左にと振って周りを確認していた。
一階と同じ様に、暗闇の中に無機質な灰色の廊下が照らされる。
すると恵美は二階の廊下を進む事なく、そのまま階段を上がり三階へと進んで行った。
「ひとまず上から探して行こう」
そう呟きながら上がって行く。上から探す事に特に意味などなかった。ただなんとなく二階には近付きたくない、そんな気がしたのだ。
三階に着いた恵美は懐中電灯で足元を照らしながらゆっくりと歩いて行く。各部屋を一つ、また一つ、と覗きながら進んでいた時、ある部屋を覗いた所で思わず恵美の足が止まった。
その部屋は何も無くがらんどうとしていたのだが、何も無い部屋の中心にブラウン管のテレビと布団がポツンと置いてあったのだ。
恵美はその光景を見た瞬間に何故か全身に悪寒が走った。恵美は思わずその中心にあるテレビにゆっくりと歩み寄る。
「まさかこのテレビが映ったりしないよね?」
恵美が恐る恐るテレビの画面を覗き込むが、画面には反射した恵美が映っているだけだった。少しほっとして離れようとした時、横にある布団が僅かに膨らんでいる事に気が付く。
この布団の膨らみは何よ?――
布団の僅かな膨らみに気付いてしまった恵美に再び悪寒が走る。恵美は近くに落ちていた木を拾い上げると、木の先端を布団に掛けた。
恵美の手は震え、一筋の冷たい汗が頬を流れて行く。
喫茶店でアイスティーを飲みながら腕時計に目を落とす。時計の針は九時を指していた。
「もう流石にあの警官もいないでしょ」
そう呟き席を立った。いくら明日が休みとはいえ、帰りの事を考えればそろそろ動き出さなければ帰宅が深夜になりかねない。いくら恵美の家が門限等厳しくないとはいえ、流石に深夜の帰宅は憚られる。
団地の前まで戻って来た恵美は周りの眼を警戒しながらゆっくりとD団地に近付いて行く。日が落ち、真っ暗な住宅街に佇むその灰色の団地からは異様な雰囲気が感じられ、妙な威圧感さえ感じる。まるで近付く者を拒んでいる様な、そんな気さえする。
「はぁ、私だってこんな所、好き好んで来てる訳じゃないんだからね」
小声で呟き、ゆっくりと団地内に足を踏み入れる。自分の腰程まで伸びた雑草をかき分けて、恵美は歩みを進めて行く。
雑草をかき分けて進んで行くと、行く手を遮るかの様に生い茂っていた雑草は突然無くなり団地の入口が姿を現した。団地周辺には草等生えてはおらず、まるでそこの空間だけ時が止まっているかの様だった。
「ははは、相変わらず不気味だって」
冷笑を浮かべて恵美が団地に近付くが、恵美はその裏にある別の棟に向かった。
「多分行くべきは事件があった棟よね?」
そう言って恵美は裏にある棟の入口の前に立った。入口には侵入者を拒む様に立入禁止と乱雑に書かれたベニア板が立て掛けられている。
しかし横には簡単に人一人出入り出来る程の隙間がある為、ここを訪れる者はここから出入りしているのが容易に想像出来た。恵美もその隙間から団地内に入る事にする。
団地内に入るとそこは無機質なコンクリートに囲まれており、月明かりさえ届かない暗闇が支配していた。恵美は来る途中のコンビニで購入した懐中電灯を取り出し、明かりを点けた。懐中電灯の明かりが所々亀裂の入った灰色の廊下を照らし出すと、恵美はゆっくりと歩み出す。コツコツと暗いコンクリート製の廊下に恵美の足音だけが反響する中、ゆっくりと歩きながら一階にある各部屋を覗いて行く。扉が壊れ、懐中電灯で照らしただけで簡単に中が覗ける部屋もあったが、扉を開けて中を覗き込まなければならない部屋もあった。恵美はその各部屋を丁寧に覗いて回る。
だがどの部屋も最近人が入った様な形跡は見られなかった。そのまま恵美が進んで行くと、途中で上へと上がる階段が現れる。だが恵美は階段を無視して更に進んで行く。
しかし暫く進んだ所で恵美の足が止まった。一階の突き進んだ先では天井部分が崩落し、行く手を遮っていたのだ。恵美はその崩落した瓦礫を見つめて暫く佇む。
「……私の行く先で崩れるのは勘弁してよ」
そう言って恵美は踵を返した。少し廊下を戻り、恵美は階段の前に立つと持っていた懐中電灯で階段を照らした。
「結局ここを登らなきゃいけない訳ね」
そう言ってゴクリと唾を飲む。恵美は慎重に一歩一歩階段を踏み締めながら上がって行く。二階に着くと恵美は懐中電灯を右に左にと振って周りを確認していた。
一階と同じ様に、暗闇の中に無機質な灰色の廊下が照らされる。
すると恵美は二階の廊下を進む事なく、そのまま階段を上がり三階へと進んで行った。
「ひとまず上から探して行こう」
そう呟きながら上がって行く。上から探す事に特に意味などなかった。ただなんとなく二階には近付きたくない、そんな気がしたのだ。
三階に着いた恵美は懐中電灯で足元を照らしながらゆっくりと歩いて行く。各部屋を一つ、また一つ、と覗きながら進んでいた時、ある部屋を覗いた所で思わず恵美の足が止まった。
その部屋は何も無くがらんどうとしていたのだが、何も無い部屋の中心にブラウン管のテレビと布団がポツンと置いてあったのだ。
恵美はその光景を見た瞬間に何故か全身に悪寒が走った。恵美は思わずその中心にあるテレビにゆっくりと歩み寄る。
「まさかこのテレビが映ったりしないよね?」
恵美が恐る恐るテレビの画面を覗き込むが、画面には反射した恵美が映っているだけだった。少しほっとして離れようとした時、横にある布団が僅かに膨らんでいる事に気が付く。
この布団の膨らみは何よ?――
布団の僅かな膨らみに気付いてしまった恵美に再び悪寒が走る。恵美は近くに落ちていた木を拾い上げると、木の先端を布団に掛けた。
恵美の手は震え、一筋の冷たい汗が頬を流れて行く。
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