怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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あの日のかくれんぼ 遠き日のかくれんぼ②

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 恵美の両親が希の家に恵美が帰って来た事を連絡すると、今度は希がいなくなった事を聞かされた。

「えっ?  次は希ちゃんが?」

「ええ、さっきまでいたのに、今見たらいなくなってて――」

 混乱する大人達を他所に、恵美は泣き疲れて既にベッドで眠っていた。その後、大人達で希を捜索したが結局その日は希を発見する事は出来なかった。

 翌日、恵美は両親に前日の事を咎められたが、希が行方不明になっている事もあってそれどころではなかった様で、詳しく聞かれる事はなかった。
 大人達からしてみれば、行方不明になる寸前まで自宅にいた希の事件が恵美と関係があるとは思わなかったからだ。
 恵美はこの時になって初めて、希が行方不明になっていると知る事になる。だが恵美は自分の事を裏切った希の事を許せなかった事もあり、大人達に何をどう伝えればいいのか分からなかった。

 結局、警察による捜索は希の自宅周辺を重点的に行われた。だが何の手がかりもつかめないまま数日が経ってしまう。

 この頃になると恵美も怖くなり
「希ちゃんはあの団地でよく遊んでいたよ」
と大人達に伝える事にした。
 その話は回り回って捜索隊の耳にも入り、ようやく団地内にも捜索隊が入る事となった。団地内を捜索した警察はすぐに希の遺体を発見しこの事件は幕を降ろす事となった。
 何故希は自宅を抜け出し団地内に入ったのか、謎は残っていたが不審者等の目撃情報も無く真相は闇の中となる。

 希の事件から塞ぎがちになった恵美を心配して両親はO市を離れる事を決断し、一家は今のA市へと移り住んだ。

――現在。
「希ちゃん、あの、ごめんね。私――」

「なんで恵美ちゃんが謝るの?  勝手に帰ったのは私なんだから私が悪いんだよ。恵美ちゃんごめんね」

 希から思いもよらない言葉を掛けられて、恵美は一瞬戸惑いの表情を見せる。希はにこにこと、恵美の事を見つめていた。
 ひょっとすると希ちゃんは怒ってないのかもしれない。自分は許されるのかもしれない。
 恵美がそんな風に考えた時だった。希が笑顔で恵美に問い掛ける。

「ねぇ恵美ちゃん。恵美ちゃん見つけられたから次は恵美ちゃんが鬼だよ」

 屈託の無い笑顔でそう言ってくる希を見て、恵美は愕然とした。
 確かに希は怒ってはいなかった。ただ恵美とのかくれんぼをまだずっと続けていたのだ。その純粋な狂気に気付いた恵美は覚悟を決めて微笑んだ。

「そうね、次は私の鬼だね。でも希ちゃんちょっと待ってくれない?  その前にね教えてほしい事があるの」

 恵美の言葉に希は首を傾げて不思議そうに見つめていた。

「あのね、何日か前に私よりも小柄でショートカットの女の子がここに来なかったかな?」

「……ああ、ひょっとしてあの人かな?  多分来たよ」

 希が少し考えた後、思い出すと、恵美は身を乗り出して希に訴えかける。

「あのね希ちゃん。その子は麗って言うんだけど、麗は私の大切な友達なの。だから麗は帰してあげてほしいの。お願い」

「ふ~ん、あの人麗ちゃんって言うんだ。あの人ね、突然来て『希ちゃんお願い、もう恵美の事許してあげて』なんて言い出すから、また私と恵美ちゃんの仲を邪魔する人だと思っちゃった」

「あのね、麗は違うの。そんな悪い子じゃないから、だからお願い。希ちゃんは私と遊ぶんでしょ?  だから麗は帰してあげて」

 必死に懇願する恵美を見て、希は満面の笑みを見せる。

「あはは、そっか麗ちゃんは恵美ちゃんの大切な友達なんだ。じゃあ恵美ちゃんは麗ちゃんと遊ぶのかな?  もう一人の人も恵美ちゃんの友達かな?」

「もう一人?  藍かな?  長い黒髪の子なら私の友達の藍よ」

「そっか。じゃあ恵美ちゃんはその子達と遊ぶんだね。せっかく三人で遊ぼうと思ったのに、残念。じゃあね恵美ちゃん、麗ちゃんが一番の友達なんだね」

 そう言い残し希は目の前から忽然と姿を消すと、恵美の意識が朦朧としてくる。

「えっ?  希ちゃん?……どういう……事?」

 恵美はそのまま意識が遠ざかり、その場に倒れ込んでしまった。

――
 暫くすると団地内に動く人影があった。身体を起こし、周りを見渡す。

「……えっと……どうなったんだっけ?……そうだ希ちゃんが現れたんだ」

 戸惑いながら周りを見渡し麗が呟く。座り込んだまま、自身の手や体、足まで確認した所で自分が無事である事は理解した。
 周りを確認すると僅かに明るくなっていたが、まだ仄暗く、その薄明るさが逆に恐怖を掻き立てた。

「もう勘弁してよ、本当に」

 麗が弱々しく呟いた時、奥で誰かが横たわっている様な影が微かに見えた。薄暗い中、目を凝らして見つめると、それは人影であると確信する。
 麗は静かに唾を飲むと、ゆっくりとその人影に近付いて行く。そしてある程度近付いた時、麗が叫んだ。

「恵美!?」

 麗が慌てて駆け寄ると恵美が意識を失い倒れていた。戸惑いながら恵美の身体を起こし、揺さぶりながら声を掛けるが恵美の意識は戻らず、全身の力が抜けているかの様に手足はだらんとしていた。

 狼狽する麗だったが、近くに恵美のスマートフォンが落ちている事に気付き、直ぐに拾い上げると救急に連絡を入れ助けを求める。

 暫くすると団地はサイレンを鳴らし到着する救急車と警察車両の赤色灯に照らされ、騒ぎを聞きつけた野次馬達も溢れかえり、明け方だというのに物々しい雰囲気に包まれていた。
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