僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

文字の大きさ
42 / 382
第五話

11

しおりを挟む
まず先に立ち寄ったのは、女性専門の下着を扱うランジェリーショップだった。
香奈姉ちゃんはたどり着くなり、売り物の下着をわざわざ僕に見せる。

「ねえ、楓。…これなんか、どうかな?」
「うん。いいんじゃないかな」

と、僕は微笑を浮かべて答えた。
ショッピングモールを歩くのは構わないんだけど、まっすぐにランジェリーショップに来るのは、もはや計画的としか言いようがない。
ちなみに、香奈姉ちゃんとこの場所に来るのはこれで二回目だ。
さすがに女の子が男の子を連れてランジェリーショップに来るのはめずらしいのか、女の店員さんが僕に

「彼女さんですか?」

そう訊いてくる。
もはや興味津々にだ。
僕は、苦笑いをして

「ええ。まぁ……」

と、そう答えていた。
すると店員さんは笑顔で僕に言う。

「ずいぶんと可愛い彼女さんですね」
「ど、どうも……」

香奈姉ちゃんは、僕の自慢の彼女なんだから、可愛いのは当然だ。
店員さんは、僕と香奈姉ちゃんのことを覚えていたのか、さらに訊いてきた。

「前にも、この店に来ましたよね?」
「あ、あの時は、彼女に連れられてしまって……」
「なるほど。それじゃ、今回も例の彼女さんに?」
「ええ、まぁ……。僕本人としては、ここに来るのはどうにも緊張するというか、なんというか……」

うーん……。
なんとも説明しづらい。
ランジェリーショップの店員さんと、こうして話をすること自体、緊張する。

「緊張することはないと思いますよ。男の子に下着を選んでもらうっていう行為自体は、女の子にとってはとても重要なことなんですよ」
「そういうものなんですか?」
「君は、女子校に伝わっているジンクスを知らないのかな?」

店員さんにそう言われ、僕は「う~ん……」と困ったような表情を浮かべる。

「知らないことはないけど……」
「だったら、しっかりと応えてあげないと。彼女さんに嫌われてしまうぞ」

店員さんは、悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言った。
香奈姉ちゃんに嫌われるって言われても、いまいち信憑性に欠けるっていうか。
それよりも、なぜ香奈姉ちゃんが通っている女子校のジンクスを、この店員さんは知ってるんだろうか。
その辺が不思議だ。
女子校を卒業生だった人なのかな。

「楓。これなんて、どうかな?」

無邪気なもので、香奈姉ちゃんはショーウィンドウのマネキンに飾られてるパンツを指さして、僕に聞いてきた。
本当は、そんなところ見たくないんだけどな。
女物の下着しかないようなところなんかさ。
僕は、仕方なく香奈姉ちゃんが見ていた飾られてたパンツを確認する。
やはりセンスが抜群にいいのか、その下着は子供っぽくもなく、かと言って大人っぽくもない、年頃の女の子が選ぶような可愛らしい下着だった。

「うん。いいんじゃないかな」

やはり、そうとしか答えられない。
僕は、女の子の下着について詳しいわけじゃないから、何が可愛くてセンスのいい下着なのかわからないけど、香奈姉ちゃんが気に入っているんなら、それでいいんじゃないかと思う。
香奈姉ちゃんは、不満そうな表情で

「適当に答えてない?」

と、そう言う。
さすがに、傍らにいた店員さんも、これには苦笑いを浮かべていた。
僕は、弁明するつもりもなく、こう答える。

「え、そんなことはないよ。ちゃんと、真剣に答えているよ」
「ホントかなぁ」

香奈姉ちゃんは、訝しげな表情で僕を見る。
そんな目で見られても、僕は嘘はついていません。
香奈姉ちゃんは、しばらく僕を見ていたが、他に気に入った下着を見かけるとそれを手に取り、そのままレジへと向かう。
どうやら、その下着に決めたようだ。

「──お待たせ。次は、洋服を見に行こう」

買い物を終えると、香奈姉ちゃんは僕の手を引いて歩き出す。
店員さんから、「ありがとうございました」と笑顔で声をかけられるが、それはまるで、僕にかけられた言葉に感じてしまった。

次に向かったのは、香奈姉ちゃんが言ったとおり洋服店だった。
やはりショーウィンドウにあるマネキンには、今、流行の服が着せられ、飾られている。
香奈姉ちゃんは、それには目もくれず、他の気に入った洋服を複数手に取り、試着室に向かっていった。

「ちょっと待っててね」
「うん」

──数分後。
試着室のカーテンが開く。

「ねえ、楓。この服…どうかな?」

と言って出てきた香奈姉ちゃんは、気に入った洋服を見事に着こなしていた。
上下のセットなのか、コーディネートはバッチリだ。

「うん。よく似合っているよ」
「そっか。似合っているか。もういくつかあるから、もうちょっと待ってて」
「わかった」

さらに数分後。

「それじゃ、この服はどう?」

次に着替えた洋服も、さっきのよりは地味な感じだが、香奈姉ちゃんが着ると全然違う。
僕は、微笑を浮かべて答える。

「いいんじゃないかな」
「また適当に答えてない?」
「ちゃんと見て答えているよ。香奈姉ちゃんは、何を着ても似合うから、他に言葉が見つからなくて……」
「ホントに?」
「うん。香奈姉ちゃんが気に入った服は、大抵ハズレなしだから、似合っているとしか言えないよ」
「そっか。そう言ってもらえると、なんだか嬉しい」

香奈姉ちゃんは、笑顔でそう言っていた。
本当なら、僕が香奈姉ちゃんの行きたい所に連れていってあげたりするのが、デートの基本なんだけど。
気弱な性格のせいで、逆に香奈姉ちゃんにエスコートされちゃってる形だし。
まぁ、仮に僕がデートに誘っても、行き先のプランを立てる事なんてできないから、失敗するのが関の山なんだろうけど。
その後は、喫茶店で一緒にお茶を飲んだり、ゲームセンターに行ったりと、デートを楽しんだ。
一番まいったのは、途中でお手洗いに行った時のことだ。
デートも終わり、その帰りってこともあって、気が緩んだんだと思う。

「ごめん。ちょっと、お手洗いに行ってくるね」
「うん。…いってらっしゃい」

香奈姉ちゃんも、安心して僕をトイレに行かせてくれた。
今にして思えば、香奈姉ちゃんを一人にしたのが悪かったんだと思う。
何があったかなんて、言うまでもない。
──そう。ナンパだ。
僕がお手洗いから戻ると、複数人の男性が香奈姉ちゃんの前に立ち、「君、今一人?」と、話しかけていた。
僕はすかさず

「香奈姉…いや、香奈さん」

と、声をかける。
──おっと。いけないいけない。
他の人の前で香奈姉ちゃんと呼ぶのは、彼氏として失格だ。

「あ、楓」

香奈姉ちゃんは僕の姿に気がつくと、すぐに僕のところにやって来て、腕を組んできた。

「すみません。私、彼氏とデート中なんです。ね。楓?」
「うん、香奈さん」

僕は、そう頷いて話を合わせる。
香奈姉ちゃんのその言葉に、男性たちは引き下がるしかなかったようだ。
男性たちは、僕のことを一瞥すると「ちっ! 彼氏付きかよ」と言って一様に舌打ちし、そのまま去っていった。
男性たちが去っていった後、香奈姉ちゃんは、安心したかのように大きく息を吐く。

「ふぅ~。なんとかやり過ごすことができたよ」
「間に合ってよかった」
「ホントにだよ。楓が来てくれて助かったよ」
「トイレから戻ってきたら、香奈姉ちゃんがナンパされてるんだもん。正直、びっくりしたよ」
「私もびっくりしたのよ。何気なくベンチに座っていたら、いきなり声をかけられたんだもん」

どうやら、香奈姉ちゃんはホントに何気なくベンチに座っていたらしい。
まぁ、香奈姉ちゃんは黙っていても可愛いから、他の男性たちからしたら、声をかけたくなるのかもしれないが。
僕は、改めて女の子の大変さに気がついて

「そうなんだ。…女の子って大変なんだね」

そう言っていた。
可愛いと周囲から声をかけられる可能性も高くなるみたいだ。

「そうだよ。…色々と大変なんだから」

香奈姉ちゃんは、僕の顔を見てそう言った。
そこまで大変なら、今度からは、僕が守ってあげないとな。

「とりあえず、デートも無事に終わったことだし、家に帰ろうか?」

僕は、香奈姉ちゃんにそう言った。
香奈姉ちゃんも、「え? もうそんな時間?」と言ってスマホを見る。
気がつけば、もう午後の三時になっている。
今から帰れば、ちょうどいい時間だ。
ちなみに、今日の予定には、バンドの練習することは書かれていない。

「今から家に帰ったら、色々と準備に間に合いそうだしさ」
「…そっか。楓がそう言うのなら、帰ろうか」

香奈姉ちゃんは、少し残念そうな顔をしていた。
まだ一緒に行きたい所でもあったのかな?
ショッピングモールは大体回ったし……。
他にあるとすれば、場所は異なるけど楽器店とかかな。

「他に行きたい場所でもあった?」

僕は、何気ないふりをして訊いていた。

「ううん。特にはないかな」

香奈姉ちゃんは、作り笑いをしてそう答える。
その言葉は、嘘だというのはすぐにわかった。
香奈姉ちゃんが作り笑いをする時は、何かを我慢している証拠だ。
僕は、香奈姉ちゃんの手を取り

「ホントに、行きたい場所はないの?」

と、普段より強い口調で言う。
僕にそんなことをされるとは思わなかったのか、香奈姉ちゃんは、恥ずかしそうに顔を赤くする。

「え、いや……。ないって言えば嘘になるけど。そんな──」

たぶん、僕が積極的な態度で香奈姉ちゃんの手を取ったのが、かなり効いたらしい。
だけど僕は、ここで引くつもりはない。

「どこなの? 僕も一緒に行くから、案内してよ」
「…ホントにいいの?」
「もちろんだよ」
「私も、一人であそこに行くのは不安だったから、かえって助かるかな」
「ん? どこへ行くの?」
「着いてからのお楽しみだよ。早く行こう」

香奈姉ちゃんは、そう言うと掴んでいた僕の手を握り返してきて、有無を言わさず引っ張っていく。
予定していた夕飯の準備は少し遅れそうだけど、この際仕方ない。
夕飯のための買い出しには、香奈姉ちゃんと別れてから行くことにしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...