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第六話
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なんだか一人で帰るのも、久しぶりだな。
いつもなら校門前に香奈姉ちゃんたちが待っているはずなんだけど、今日は誰もいなかった。
きっと、文化祭の準備で忙しくなったんだろうと思われる。
そうなると、しばらくの間、香奈姉ちゃんたちが校門前に来ることはないな。
一人で家路に帰ろうとしている時に、スマホが鳴った。
電話の着信音じゃないから、メールだろう。
誰だろうと思い、スマホを取り出して確認してみると、香奈姉ちゃんからだった。
『今、学校にいるかな? 今日は、行くのが無理っぽいです』
これはまぁ、『わかったよ』とメールを返せばいいかな。
少し思い悩んでいると、向こうから声をかけられる。
「…あれ? 楓君じゃない?」
聞き覚えのある女の子の声に、僕は声がした方に視線を向ける。
そこにいたのは、ツインテールの女の子──美沙さんだった。
美沙さんは、その手に買い物袋をたくさん持って、なんの躊躇いもなく僕に近づいてくる。
僕は、美沙さんを見て思案げな表情になって訊いていた。
「あれ? 美沙先輩じゃないですか。いったい、どうしたんですか? 今日から、文化祭の準備で忙しいはずですよね?」
「うん。楓君の言う通り、今日から文化祭の準備だよ」
美沙さんは、僕に見せるように買い物袋を掲げる。
個人で買い物するような量じゃないから、きっと文化祭のイベントで使うものだろう。
「そうなんだ。…大変そうですね」
「うん、大変だよ。私の組は、横断幕を作成する班になっちゃったからね」
「え? それじゃあ、香奈姉ちゃんも?」
「香奈ちゃんは、違うかな。たしか喫茶店を出店する班だったような……」
「喫茶店って?」
「私も詳しくは知らないんだけどさ。香奈ちゃんの友人から聞いた話では、メイド喫茶を出店するっていう話だったような気がするんだよね」
「メイド喫茶をですか?」
「あら。楓君ったら、興味ある?」
「少しだけ……」
僕は、控えめに言う。
少しというより、かなり興味あるよ。
香奈姉ちゃんのメイド服姿か。意外と似合っていそう。
でも、僕には絶対に見られたくないだろうな。
「たしかな情報が入ってきたら、楓君に知らせるけど……。どうかな?」
「あ、お願いできますか?」
「もちろん! デート一回で手をうってもいいよ」
「デート一回…ですか? 別に構わないけど、僕となんかでいいんですか?」
「うん! 楓君にパンツを渡してから、一回もデートに行ったことなかったからね。こっちからお願いしたいくらいだよ」
「ちょっ……。声が大きいですよ」
「あ、ごめんごめん。つい……」
「とにかく、デート一回で手を打ちますから、情報の方をよろしくお願いします」
「わかったよ。楓君も、結構好きなんだね。その手の情報」
「はい。香奈姉ちゃんのメイド服姿は、滅多に見られないですからね」
香奈姉ちゃんは、基本的に真面目な方でそういう服は絶対に着ない。
こんなイベントでもない限り、無理だろう。
「気持ちはよくわかったよ。とりあえず情報が入ったら知らせるね。だから楓君は、バイト頑張ってね」
「はい。頑張ります」
僕は、そう返事をする。
忘れていたわけじゃないが、今日はバイトのシフトが入っているから、このままいくと香奈姉ちゃんに会うのは、とても難しいかもしれない。
「それじゃ、私はこの買い物袋をみんなのところに持っていかなきゃいけないから、私は、ここで失礼するね」
「あ、はい。文化祭の準備、頑張ってくださいね」
「ありがとう。楓君!」
「っ……⁉︎」
美沙さんは、近づいて僕の頬にキスすると、そのまま踵を返し雑踏の中へと歩いていった。
美沙さんといい奈緒さんといい、することがいきなりすぎて予測できないな。
どうしても、不意打ち気味にキスされたりしてしまうし。
今後は、気を付けないとな。
とりあえず僕の方は、忘れるといけないから香奈姉ちゃんにメールを返しておこう。
家に帰ってきた時にスマホを確認すると、またも香奈姉ちゃんからメールが入ってきていた。
『少し寂しいけど、今日は楓の家には来れそうにないです。だから、私が前に渡したパンツを私だと思って抱いて寝てね。ああ、それと、明日の朝にお弁当を交換したいので、また作ってくれるとありがたいな』
いや、香奈姉ちゃんのパンツを抱いて寝るとか、どんだけ変態かって話だよ。そんなこと絶対にしないし。
それに、お弁当を作ってくれって……。
また相愛弁当を作ってくるつもりだろうか。
「…そんな風に頼まれてしまうと、仕方ないか。材料はあったかな?」
僕は独り言のようにそう言って、冷蔵庫に向かう。
「どうしたの、楓?」
冷蔵庫の中を調べている時に、母から声をかけられる。
僕は、母に
「うん。ちょっと……」
と言って、言葉を濁す。
母は、勘がいいのか意味深な笑みを浮かべる。
「さては、また香奈ちゃんからお弁当を頼まれたのかい?」
「なんでわかったの?」
「そんな冴えない顔して冷蔵庫の中と睨めっこしてたら、すぐにわかるわよ」
「やっぱり、わかっちゃうんだ」
「母親やってたら、そういうのは自然とわかるものなのよ」
「そういうものなの?」
「昔から楓は、頼まれたら嫌とは言えない性格だからね。香奈ちゃんの頼みは、余計に断りきれないんでしょ?」
「うん。…残念ながらね」
「それなら、しっかりとお弁当を作って、楓の良いところをアピールしなくちゃね」
「アピールって、言い過ぎじゃ……」
「何言ってるの。楓の長所は、そういうしっかりしたところでしょ。女の子はなかなか見てくれないような長所だよ」
「そうなのかな?」
「料理が得意な男の子っていうのはなかなかいないんだから、自信を持ちなさい」
「う、うん。まぁ、自信を持てるかどうかわからないけど、普段どおりのお弁当を作ってみるよ」
「そうしなさい」
母は、そう言うと笑顔を僕に向けていた。
とりあえず、明日のお弁当の具材については問題ないようだ。
あとは、香奈姉ちゃんがどんなお弁当を作ってきてくれるのかを楽しみにするだけだ。
問題があるとすれば、一つだけ。
この前みたいに、ご飯の部分にハートマークを描くのはやめてほしいなと願うばかりである。
いつもなら校門前に香奈姉ちゃんたちが待っているはずなんだけど、今日は誰もいなかった。
きっと、文化祭の準備で忙しくなったんだろうと思われる。
そうなると、しばらくの間、香奈姉ちゃんたちが校門前に来ることはないな。
一人で家路に帰ろうとしている時に、スマホが鳴った。
電話の着信音じゃないから、メールだろう。
誰だろうと思い、スマホを取り出して確認してみると、香奈姉ちゃんからだった。
『今、学校にいるかな? 今日は、行くのが無理っぽいです』
これはまぁ、『わかったよ』とメールを返せばいいかな。
少し思い悩んでいると、向こうから声をかけられる。
「…あれ? 楓君じゃない?」
聞き覚えのある女の子の声に、僕は声がした方に視線を向ける。
そこにいたのは、ツインテールの女の子──美沙さんだった。
美沙さんは、その手に買い物袋をたくさん持って、なんの躊躇いもなく僕に近づいてくる。
僕は、美沙さんを見て思案げな表情になって訊いていた。
「あれ? 美沙先輩じゃないですか。いったい、どうしたんですか? 今日から、文化祭の準備で忙しいはずですよね?」
「うん。楓君の言う通り、今日から文化祭の準備だよ」
美沙さんは、僕に見せるように買い物袋を掲げる。
個人で買い物するような量じゃないから、きっと文化祭のイベントで使うものだろう。
「そうなんだ。…大変そうですね」
「うん、大変だよ。私の組は、横断幕を作成する班になっちゃったからね」
「え? それじゃあ、香奈姉ちゃんも?」
「香奈ちゃんは、違うかな。たしか喫茶店を出店する班だったような……」
「喫茶店って?」
「私も詳しくは知らないんだけどさ。香奈ちゃんの友人から聞いた話では、メイド喫茶を出店するっていう話だったような気がするんだよね」
「メイド喫茶をですか?」
「あら。楓君ったら、興味ある?」
「少しだけ……」
僕は、控えめに言う。
少しというより、かなり興味あるよ。
香奈姉ちゃんのメイド服姿か。意外と似合っていそう。
でも、僕には絶対に見られたくないだろうな。
「たしかな情報が入ってきたら、楓君に知らせるけど……。どうかな?」
「あ、お願いできますか?」
「もちろん! デート一回で手をうってもいいよ」
「デート一回…ですか? 別に構わないけど、僕となんかでいいんですか?」
「うん! 楓君にパンツを渡してから、一回もデートに行ったことなかったからね。こっちからお願いしたいくらいだよ」
「ちょっ……。声が大きいですよ」
「あ、ごめんごめん。つい……」
「とにかく、デート一回で手を打ちますから、情報の方をよろしくお願いします」
「わかったよ。楓君も、結構好きなんだね。その手の情報」
「はい。香奈姉ちゃんのメイド服姿は、滅多に見られないですからね」
香奈姉ちゃんは、基本的に真面目な方でそういう服は絶対に着ない。
こんなイベントでもない限り、無理だろう。
「気持ちはよくわかったよ。とりあえず情報が入ったら知らせるね。だから楓君は、バイト頑張ってね」
「はい。頑張ります」
僕は、そう返事をする。
忘れていたわけじゃないが、今日はバイトのシフトが入っているから、このままいくと香奈姉ちゃんに会うのは、とても難しいかもしれない。
「それじゃ、私はこの買い物袋をみんなのところに持っていかなきゃいけないから、私は、ここで失礼するね」
「あ、はい。文化祭の準備、頑張ってくださいね」
「ありがとう。楓君!」
「っ……⁉︎」
美沙さんは、近づいて僕の頬にキスすると、そのまま踵を返し雑踏の中へと歩いていった。
美沙さんといい奈緒さんといい、することがいきなりすぎて予測できないな。
どうしても、不意打ち気味にキスされたりしてしまうし。
今後は、気を付けないとな。
とりあえず僕の方は、忘れるといけないから香奈姉ちゃんにメールを返しておこう。
家に帰ってきた時にスマホを確認すると、またも香奈姉ちゃんからメールが入ってきていた。
『少し寂しいけど、今日は楓の家には来れそうにないです。だから、私が前に渡したパンツを私だと思って抱いて寝てね。ああ、それと、明日の朝にお弁当を交換したいので、また作ってくれるとありがたいな』
いや、香奈姉ちゃんのパンツを抱いて寝るとか、どんだけ変態かって話だよ。そんなこと絶対にしないし。
それに、お弁当を作ってくれって……。
また相愛弁当を作ってくるつもりだろうか。
「…そんな風に頼まれてしまうと、仕方ないか。材料はあったかな?」
僕は独り言のようにそう言って、冷蔵庫に向かう。
「どうしたの、楓?」
冷蔵庫の中を調べている時に、母から声をかけられる。
僕は、母に
「うん。ちょっと……」
と言って、言葉を濁す。
母は、勘がいいのか意味深な笑みを浮かべる。
「さては、また香奈ちゃんからお弁当を頼まれたのかい?」
「なんでわかったの?」
「そんな冴えない顔して冷蔵庫の中と睨めっこしてたら、すぐにわかるわよ」
「やっぱり、わかっちゃうんだ」
「母親やってたら、そういうのは自然とわかるものなのよ」
「そういうものなの?」
「昔から楓は、頼まれたら嫌とは言えない性格だからね。香奈ちゃんの頼みは、余計に断りきれないんでしょ?」
「うん。…残念ながらね」
「それなら、しっかりとお弁当を作って、楓の良いところをアピールしなくちゃね」
「アピールって、言い過ぎじゃ……」
「何言ってるの。楓の長所は、そういうしっかりしたところでしょ。女の子はなかなか見てくれないような長所だよ」
「そうなのかな?」
「料理が得意な男の子っていうのはなかなかいないんだから、自信を持ちなさい」
「う、うん。まぁ、自信を持てるかどうかわからないけど、普段どおりのお弁当を作ってみるよ」
「そうしなさい」
母は、そう言うと笑顔を僕に向けていた。
とりあえず、明日のお弁当の具材については問題ないようだ。
あとは、香奈姉ちゃんがどんなお弁当を作ってきてくれるのかを楽しみにするだけだ。
問題があるとすれば、一つだけ。
この前みたいに、ご飯の部分にハートマークを描くのはやめてほしいなと願うばかりである。
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