僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

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第八話

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夕飯を食べ終えて、しばらくボーッとしていると家の呼び鈴が鳴った。

「ん? 誰だろう?」

兄は、座っていたソファーから立ち上がる。
僕も立ち上がったが、先に立ち上がった兄に「俺が出るから」と言って制され、その場に残ることになった。
兄は、そのまま玄関の方へと向かっていく。
誰なのかは、すぐにわかった。
この時間になってもそちらに行く気配がなかったので、向こうからやってきたんだろう。

「誰かと思えば、香奈じゃないか。どうして?」

しばらくしないうちに、向こうから驚いたような兄の声が聞こえてくる。

「楓はいるよね? ちょっと失礼するよ」

その声は、聞き間違えることはない。
香奈姉ちゃんは、迷うことなく僕がいる居間の方にやってくる。

「楓。何してるの? 私たちのお泊まり会に行くよ」
「えっと……。香奈姉ちゃん」

僕は、あまりのことに呆然としてしまう。
代わりに反応したのは、兄だ。
兄は、何のことかわからず訝しげな表情で訊いていた。

「ちょっと待て。お泊まり会って何だよ?」
「楓と約束したんだよ。今回の三連休にパジャマパーティーをやるから、楓にも参加してもらうって──」
「俺は、何も聞いてないぞ!」
「それは、当然だよ。隆一さんには、言ってないからね」

香奈姉ちゃんは、当然のことのように言う。
兄は、納得がいかない様子で香奈姉ちゃんに言った。

「そんな大事なことを、どうして黙ってたんだよ!」
「別に言う必要もないかと思って。私は、楓を誘ったんだし。それに、いつものバンドメンバーが揃っているから、隆一さんを呼んでも…ね」
「それは……。そうかもしれないが……。だけどなぁ……」
「そういうことだから、楓は連れて行くよ。…ほら、楓。夕飯が済んだんなら、私の家に行こう」

そう言って、香奈姉ちゃんは僕の腕を掴んで、強引に引っ張っていく。

「あの……。ちょっと……」
「どうしたの、楓? …何か忘れ物?」
「いや……。忘れ物とかじゃないんだけど」
「忘れ物じゃないなら、何なのよ?」
「まだ洗い物があるから、その……。それが終わってからなら──」

僕は、台所に溜まっている使用した食器を見やり、そう言った。

「なんだ、そういうことか。…それなら、私がサッとやってあげるよ」

香奈姉ちゃんは、躊躇いもなく台所に行き、皿洗いをし始める。

「そんな……。悪いよ」
「私に気をつかう必要はないよ。…そんなことよりも、奈緒ちゃんたちが待ってるから」
「でも……」

僕は、あまりのことに呆然となってしまう。

「ほら。ボーッとしてないで、楓はさっさと私の家に行っててよ」
「う、うん。わかった。…ありがとう」

僕は、あらかじめ用意しておいたリュックを持って居間を後にした。
わざわざ僕を迎えに来るなんて。
この展開は、正直考えていなかったな。
香奈姉ちゃんは、本当に僕のことを待っていてくれたのか。
僕は、香奈姉ちゃんたちに気を遣って、敢えて行かないようにしようと思っていたのに。
香奈姉ちゃんが考えることは、僕が考えることの斜め上を行ってるからなんとも言えないんだけど。

香奈姉ちゃんの家に戻ると、三人が出迎えてくれた。

「やぁ、楓君」
「楓君ったら、遅いよ。今まで、何やってたのかな?」
「『来るのが遅いね』って言いながら待ってたんだよ~。一体、何してたの?」

三人とも、もう寝間着姿だ。
僕は、寝間着姿の三人を見て思わずドキッとしてしまったが、なんとか平静を装い言った。

「何してたって言われても……。自分の家でボーッとしていたんだけど」
「楓君。約束を破ったらダメだよ」

奈緒さんは、ため息混じりに言う。
別に約束を破るつもりはなかったんだけどな。

「別に破るつもりはなかったんだけど……。僕が抜ければ女の子同士のパジャマパーティーになるから、その方が香奈姉ちゃんたちにとってもいいかなって思って──」
「なるほどね~。まぁ、気持ちはわからなくもないけど」

と、美沙さん。

「それなら──」
「だけどね。それだと香奈ちゃんを怒らせる結果になると思うよ」
「う……。それだけは、嫌だ……」

僕は、怒らせるというワードにビクッとなってしまう。
香奈姉ちゃんを怒らせることだけは、絶対にしたくない。
普段から誰にでも優しい性格だから、その分だけ怒ったらすごく怖いのだ。

「だったら、わかってるよね?」
「うん……。なんとなくは……」

僕は、自信なさげにそう答える。

「それなら、良しとしよう」

美沙さんは、そう言って僕の手を掴んできた。

「あの…美沙先輩。何を?」
「香奈ちゃんの部屋に行くんだよ。そこで、香奈ちゃんが戻ってくるのを待つつもりだけど。何か問題でもあるかな?」
「香奈姉ちゃんの部屋で待つの? 香奈姉ちゃんを待つのなら居間でもよくない?」

僕がそう言うと、美沙さんは深々とため息を吐く。

「ダメだよ、楓君。こういうのは形から入らないと雰囲気出ないんだから!」
「そうなの?」
「そういうものなんだよ! 楓君だって、一応、寝間着くらいは持ってきているでしょ?」
「うん。持ってきてはいるけど……」
「それなら、問題はないかな。香奈ちゃんが戻ってくる前に寝間着に着替えちゃおうか?」
「いや……。寝るには、まだ早い気が……」
「まだ寝ないよ。楓君とは、お話したいことがたくさんあるからね」
「話したいことって……」

──僕は特にないんだけどな。話したいことって言われても。
そうこうしてる間に、香奈姉ちゃんが戻ってくる。

「ごめん、遅くなって。みんな、楓に変なことしてないでしょうね?」
「変なことって……。特に何もしてないよ」

と、奈緒さん。
香奈姉ちゃんは別に怒っているわけじゃない。しかし、一応、答えておかないといけないような空気感が香奈姉ちゃんから伝わってきていた。
美沙さんにもそれが伝わったのか、引きつった笑顔を見せる。

「楓君にも寝間着に着替えてもらおうかなって思ってさ」
「気持ちはわからなくもないけど……。時間的に、まだ早いと思うよ」

香奈姉ちゃんは、時計を見てそう言った。
ちなみに時間は夜の十九時半だ。
たしかに、寝間着に着替えるのは、まだ早い時間帯である。

「そうかなぁ。どうせ誰もこないんだしさ。時間的にはもういいかと思うんだけど」

だからみんな寝間着姿なのか。
外はもう暗いし、この時間帯で出歩く人はいないだろうな。
香奈姉ちゃんは、寝間着に着替えていた三人を見て言った。

「たしかに、誰も来ないから問題ないけど……。この場合、私も寝間着に着替えないと、逆に変に見えちゃうよね」
「うんうん。ここで香奈ちゃんが寝間着姿にならないと、パジャマパーティーにならないよ」

美沙さんは、はっきりとそう言う。

「そうだよね」

香奈姉ちゃんは、その場で服を脱ぎ出した。

「っ……⁉︎」

──ちょっと待って。
僕がいる前で、服を脱ぐの?
僕は、咄嗟に後ろを向いて香奈姉ちゃんから視線を逸らす。

「どうしたの、楓?」

香奈姉ちゃんは、そんな僕に気がついたのか声をかけてくる。

「いや……。えっと……」

僕は、下着姿になった香奈姉ちゃんになんとも言えず、後ろを向いたまま黙ってしまう。
香奈姉ちゃんは、今の自分の姿を察したのか、悪戯っぽい笑みを浮かべて聞いてきた。

「もしかして、私の下着姿を見るのは嫌なのかな?」
「そんなことは……」

わかっているんなら、どうしてそんなことをするんだか。

「そんなことはあるんじゃない? 私の裸は平気で見てるくせに下着姿を見るのは嫌って、どれだけエッチなんだか──」
「それは、香奈姉ちゃんが……」

そう言いかけて、途中でやめた。
香奈姉ちゃんの前では、そんなことも無意味なように感じたからだ。
香奈姉ちゃんは、ちかくにあった寝間着を手に取り、ゆっくりと着替え始める。

「ん? 私がどうかしたのかな?」
「…なんでもないです」

みんながいる前で、これ以上言うことができない。
『香奈姉ちゃんが過剰気味に誘ってくるから』だなんて、はっきり言えないよ。
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