僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

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第九話

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──翌日。朝。
学校に着くなり、複数の男子たちに囲まれた。
何事かな?
僕が思案げにしていると、リーダーらしき男子生徒が現れ、僕に話しかけてきた。

「よう。お前はたしか須藤…だったよな?」
「『周防』です」

僕の名前を間違えるかな、普通。
だいたい、須藤って誰なんだよ。

「そんなことはどうでもいいんだよ。──須藤。お前は女子校に通っている西田香奈と仲がいいみたいだけど、どういう関係なんだ?」

男子生徒は真剣な眼差しで、僕に聞いてくる。
──なんていうか。
僕は『須藤』じゃなくて、『周防』なんだけどな。
ホントに僕の名前なんて、どうでもいいんだね。

「どういう関係って言われても……。香奈姉ちゃんは、香奈姉ちゃんだし。強いて言うなら、僕の幼馴染で姉的存在…かな」
「そうかそうか。それじゃ、まだ付き合ってはいないんだな?」
「『付き合ってる』って言われたら、どうなんだろう? 僕にはわからないや」

それは、香奈姉ちゃんが決めてることだからなぁ。
僕が勝手にあれこれと言えないよ。
余計なことを言って、香奈姉ちゃんに怒られても嫌だしな。

「そうか。お前は、西田香奈とは付き合っていないのか。それならちょうどいい。俺は、ちょうど彼女と別れたばかりだからな。西田香奈に告白する頃合いとしてはちょうどいいだろう」
「香奈姉ちゃんに告白って?」
「お前には、関係ないだろ」
「………」

まぁ、そう言われたら、たしかに関係はないけど。
僕は、男子生徒を見る。
見るからに粗暴そうな感じだ。
男子生徒は、自信ありげな表情を浮かべて、言った。

「俺は今日、西田香奈に告白するぜ!」
「さすが先輩。…先輩なら、絶対に西田さんを落とせますよ」

周りにいる後輩たち(たぶん僕からしたら先輩になるんだろうけど)は、その男子生徒を鼓舞するかのようにそう言っていた。
言うまでもなく、この男子生徒は男子校の高校三年で、僕の先輩だ。
僕はあんまり興味がないのでこの男子生徒の名前まではわからないが、男子校では有名な生徒の一人だ。
僕のことを『須藤』と呼んでくるあたり、向こうも僕に興味がないのはまるわかりである。
それにしても、三年生の間でも、香奈姉ちゃんのことを知っているだなんて、どんだけ香奈姉ちゃんは有名なんだろうか。
その辺りが、一番気になるな。

「待っててくれよ。西田香奈」

男子生徒は、そう言うと踵を返し、そのまま歩き去っていった。
香奈姉ちゃんが、見知らぬ男子と付き合うとは思えないんだけど。
今日も、香奈姉ちゃんと帰る予定だから、あの男子生徒が告白する瞬間を見ることになるだろうな。
たぶんフラれて終わりだと思うんだけど。
せっかくだから、香奈姉ちゃんがどういう反応をするかくらいは見ておこうかな。

──放課後。
いつもどおりに帰り支度をして学校の校門前に行くと、朝に僕に話しかけてきた男子生徒がいた。
何をしているのかは、言うまでもない。
校門前には、いつもどおりに香奈姉ちゃんがいて、僕のことを待っていたのだ。

「──西田香奈。俺は、お前のことが好きだ。俺と付き合ってくれ」

男子生徒は、香奈姉ちゃんにはっきりとそう言っていた。
香奈姉ちゃんに告白するって言っていたけど、本人に会ってすぐに告白するだなんて……。
──さて。
香奈姉ちゃんは、どんな返答をするのかな。
僕は、咄嗟に物陰に隠れる。
この時、香奈姉ちゃんと目が合ったような気がしたけど、気のせいだろう。
香奈姉ちゃんは、頭を下げてこう言った。

「ごめんなさい。私は、あなたと付き合うことはできません」
「やっぱりダメなのか? だったら、一週間くらいのお試しでもいいんだ。…それなら、いいだろ?」
「お試しでも、付き合うことはできないです」

男子生徒からの懇願に対しても、香奈姉ちゃんは毅然とした態度でそう返す。

「どうしてだよ。他に好きなやつでもいるのかよ?」
「うん。いるよ」
「俺なら、ソイツより好きにさせることができる自信がある! ──頼む。俺と付き合ってくれ!」

男子生徒は、強い口調でそう言った。
なんというか。
これは告白というより、しつこく言い寄ってるだけじゃないのかな。

「ごめんなさい。私は、あなたのことをよく知らないの。好意を持ってくれるのは嬉しいけど、あなたとは付き合えないな」
「そうか。名前を知らないのか。それなら、教えてやるよ。俺は──」
「ここであなたの名前を知っても、私は、あなたと付き合うつもりはないの。…だから、ごめんなさい」
「あー。うるせえな。俺が付き合えって言ってるんだから、黙って付き合えよ」

男子生徒は、そう言うと香奈姉ちゃんの腕を掴んだ。

「──ちょっと⁉︎ …やめてよ」
「うるせえ! 黙って俺と付き合えよ」
「いや……」

うん。
ここまで来ると、脅迫だ。
そろそろ香奈姉ちゃんのところに行かないと。
僕は、すぐに物陰から出て、香奈姉ちゃんのところに向かう。

「──香奈姉ちゃん」
「あ……。楓」
「あ、お前は……」

男子生徒は、香奈姉ちゃんの腕を掴んだまま僕を睨む。
僕は、そんなこととは関係なしに香奈姉ちゃんのもう片方の空いた手を握る。

「何してるの? はやく帰ろう」
「う、うん」

香奈姉ちゃんは、不安そうな表情で頷く。
それを許さなかったのは、男子生徒だった。

「ちょっと待てよ。俺はまだ、話は終わってないぜ」

男子生徒は、そう言って香奈姉ちゃんの腕をグイッと引っ張る。

「きゃっ!」
「うわっ!」

僕も、香奈姉ちゃんの手を握っていたから、それに釣られてよろけてしまう。
腕を引っ張られたのが不快だったのか、香奈姉ちゃんは強い口調で言う。

「さっきも言ったとおり、私はあなたとは付き合えません。ごめんなさい」
「なんでだよ!」

男子生徒は、それでも諦めたくないのか食い下がる。
ここまで諦めが悪いと、決定的なものを見せるしかないのかな。
でも僕には、それをする勇気はない。

「理由は…これだからだよ」

香奈姉ちゃんは、僕に視線を向けてきて、そのままキスしてきた。

「っ……⁉︎」

まだ心の準備もしてないのに。
香奈姉ちゃんの行動には、いつも驚かされる。
もう慣れたけど。
男子生徒は、愕然とした様子で香奈姉ちゃんを見ていた。

「そんな……。嘘だろ……」

呆然としていたからなのか、香奈姉ちゃんの腕を掴んでいたその手が離れる。
香奈姉ちゃんは、握っていた僕の手を握り返し、もう片方の手で僕を抱き寄せる。
そして、一旦唇を離して、もう一度キスしてきた。
今度のは、僕に対する親愛を込めたキスのようだ。
香奈姉ちゃんの想いが込もった抱擁に、僕は逆らうことができず、流れのままに香奈姉ちゃんを抱きしめる。
これは香奈姉ちゃんの知恵らしく、諦めの悪い男子には、こうすることで諦めてもらっている…らしい。
まぁ、香奈姉ちゃんの悪知恵なんで、効力のほどはわからないけれど……。

「──お前ら、そういう関係かよ」

これ以上、見ていたくはなかったんだろう。
男子生徒は、不快そうな表情を浮かべ歩き去っていった。
僕と香奈姉ちゃんがキスをするシーンは、よほどショックだったんだろう。
香奈姉ちゃんは、片目をパチリと開けて男子生徒が去っていくのを確認すると、キスするのをやめてゆっくりと僕から離れる。

「やっと諦めてくれたか。よかった、よかった」

香奈姉ちゃんは、『どうだ』と言わんばかりの表情を浮かべてそう言った。
まぁ、さすが香奈姉ちゃんだね。
しつこい男に言い寄られた場合のマニュアルも頭に入っているみたいだから、対策としてはバッチリなんだろう。

「──いつから気づいていたの?」

僕は、微苦笑して香奈姉ちゃんに聞いていた。
気づかれないと思っていたのに。

「う~ん……。いつからかな? 楓が物陰に隠れたところからかな」

それってつまり、告白されていた時からじゃん。
香奈姉ちゃんには、すべてお見通しだったってわけだ。
僕が物陰に隠れて、成り行きを見守っていたことについては──。
あの時、目が合ったのは、気のせいなんかじゃなかったじゃん。

「そうなんだ」

僕は、平静を装ってそう言った。
香奈姉ちゃんは、僕の心情を理解しているのか、悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「もしかして、私が他の誰かと付き合うとでも思っていたのかな?」
「それは……」

以前に、兄からの告白を断っているから、そんなことは思っていないけど……。

「心配しなくても大丈夫だよ。私は、楓以外の人とは付き合うつもりはないから」
「そっか」

僕以外の人とは付き合うつもりはない…か。
それは、僕に対する告白なんだろう。

「さぁ、私たちもはやく帰ろう。今日も、楓の家で一緒に遊ぼうよ」

香奈姉ちゃんは、そう言って僕の手を引っ張っていく。
香奈姉ちゃんが『遊ぼう』っていう時は、スキンシップももちろんあるが、勉強も含まれている。
──さて、今日のスキンシップは、何があるのかな。
少しだけ、楽しみになってきたぞ。
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