84 / 382
第九話
13
しおりを挟む
香奈姉ちゃんは、いつまで下着姿でいるつもりなんだろうか。
たしかに目の保養には…なるかもしれないが、母や兄が帰ってきたらどうするつもりなんだ。
そう思いながら香奈姉ちゃんと一緒にベッドで寝ていると、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。
──誰だろう。
僕は、香奈姉ちゃんを起こさないようにベッドからゆっくりと起き上がり、ドアの前まで行く。
「はい」
「あら、楓。起きてたのね」
ドアの向こうから、母の声が聞こえてきた。
どうやら、ドアをノックしたのは母のようだ。
僕は、そのままドアを開けようかどうか迷ったが、返事をするだけにした。
「今、起きたところだよ」
「…てことは、完全に私が起こしちゃった感じかな。なんかごめんね」
「ううん。気にしなくていいよ。…それで、何か用事でもあった?」
「ちょっと香奈ちゃんにね。頼みたいことがあったから……。今、楓の部屋にいるんでしょ?」
「うん。いるけど……」
僕がそう言うと、母は部屋のドアを開ける。
鍵はかかっていないから、ドアを開けて入ってくるのは容易だ。
「あらまぁ……。香奈ちゃん」
母は、僕のベッドでスースーと寝息をたてている香奈姉ちゃんを見て言葉をもらす。
一応、掛け布団を掛けているので下着姿の状態を見られることはなかったが、それでも僕のベッドで寝ていること自体には問題があったようだ。
僕は、懸命に言い訳をしようと口を開く。
「あの……。母さん。これは、その……」
「二人とも、一体どこまで仲良くなったのかな?」
母は、すごくニヤニヤして僕の方を見ていた。
はっきり言うけど、破廉恥なことは何もしてないからね。
「だから、その……。これは、香奈姉ちゃんがいきなり──」
「言わなくても、わかってるわ。楓にそんな度胸があるわけがないし。──きっと、香奈ちゃんは欲求不満だったのね」
「そんなものなの?」
「女の子って、そういうものなのよ。欲求不満になると、好きな男の子の側にいたいっていう気持ちの方が勝ってしまうの」
「だから今日、学校を休んだのか」
僕は、妙に納得してそう言っていた。
すると母は、びっくりしたような表情を浮かべて香奈姉ちゃんを見る。
「あらあら……。香奈ちゃんったら、学校を休んだの?」
「うん。学校側には、体調不良ってことで休んだみたい」
「そこまでして、学校を休んだの。よほど楓のことが心配だったのね」
「僕は、『気にしなくていいよ』って言ったんだけどね」
「何言ってるの。香奈ちゃんは、他のことが手につかなくなるくらい楓のことが心配だったのよ。そんな香奈ちゃんの想いを、きちんと汲んであげるのが男の子である楓のやることよ」
「僕が、香奈姉ちゃんの想いに?」
「そうよ。これは、いつか絶対に応えなくちゃいけないことだから、楓もその時がくるまでに覚悟を決めておきなさい」
「うん。…わかった」
母が言うのだから、たしかなことなんだろう。
「香奈ちゃんが寝てるんならしょうがないか。後でお願いしようかしら」
「一体、何を頼むつもりだったの?」
「ちょっとしたことよ。たいしたことじゃないの」
「そうなんだ」
ちょっとしたこと…ね。
母が言う『ちょっとしたこと』というのは、僕が知る中ではちょっとしたことじゃないな。
一体、何をさせようっていうんだ。
「そういうことだから、香奈ちゃんが起きたらお願いできる?」
「うん。香奈姉ちゃんが起きたら伝えるよ」
「ありがとう。もしかしたら、楓にも手伝ってもらうことになるかもしれないけど、その時はお願いね」
「わかったよ」
僕が頷くと、母は僕の部屋を後にした。
香奈姉ちゃんと僕に手伝ってほしいことって、一体何だろう。
すごく気になるが、今は香奈姉ちゃんの寝顔を見ていようかな。
うん。そうしよう。
僕は静かに、あどけなさが残る香奈姉ちゃんの寝顔を見ていることにした。
しばらくして、香奈姉ちゃんが目を覚ます。
「あ、楓。起きてたの?」
「うん。なんとなく目が覚めてね」
僕は、つとめて笑顔を浮かべてそう言った。
体調は良いとは言えないけど、香奈姉ちゃんには変な心配をさせたくない。
香奈姉ちゃんは、ゆっくりとベッドから起き上がる。
「今、何時?」
「午後の四時半かな」
近くに置いてあった置き時計を見て、僕はそう答えた。
「もう四時半か。なんだかはやいな」
「今日一日、寝て過ごしていたからね。時間が過ぎるのがはやいのも仕方ないんじゃない」
「学校をズル休みしちゃったからね」
香奈姉ちゃんは、そう言って僕の目の前で制服を着はじめる。
さすがに、下着姿は恥ずかしいと思ったんだろう。
それにしても、制服って……。
私服は持ってこなかったのかな。
「僕は、ズル休みじゃないけどね」
僕は、そう言って肩をすくめる。
香奈姉ちゃんにとってはズル休みでも、僕の方はズル休みじゃない。風邪で学校を休んでいる。
香奈姉ちゃんは、そのことを思い出したのか僕の方を見て言った。
「そうだったね。風邪で休んだんだよね」
「うん。でも香奈姉ちゃんのおかげでだいぶ良くなったし、明日からは学校も大丈夫だと思う」
「そっかぁ。それなら、ズル休みした甲斐があったかな」
嬉しそうに言う香奈姉ちゃんを見て、僕は苦笑いをする。
そして、ふいに母が言ったことを思い出す。
『香奈ちゃんの想いを汲んであげることが、男の子である楓のやること』
香奈姉ちゃんの原動力が僕だとしたら、僕はどうやって香奈姉ちゃんの想いに応えてあげたらいいのか。
「ありがとう。香奈姉ちゃん」
今の僕にできることは、香奈姉ちゃんに礼を言うことくらいだ。
そういえば、母が香奈姉ちゃんに頼みたいことがあったみたいだけど、それって一体何だろうか。
僕にも手伝ってもらうかもって言っていたけど、何をしてほしいんだろう。
う~ん……。すごく気になる。
たしかに目の保養には…なるかもしれないが、母や兄が帰ってきたらどうするつもりなんだ。
そう思いながら香奈姉ちゃんと一緒にベッドで寝ていると、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。
──誰だろう。
僕は、香奈姉ちゃんを起こさないようにベッドからゆっくりと起き上がり、ドアの前まで行く。
「はい」
「あら、楓。起きてたのね」
ドアの向こうから、母の声が聞こえてきた。
どうやら、ドアをノックしたのは母のようだ。
僕は、そのままドアを開けようかどうか迷ったが、返事をするだけにした。
「今、起きたところだよ」
「…てことは、完全に私が起こしちゃった感じかな。なんかごめんね」
「ううん。気にしなくていいよ。…それで、何か用事でもあった?」
「ちょっと香奈ちゃんにね。頼みたいことがあったから……。今、楓の部屋にいるんでしょ?」
「うん。いるけど……」
僕がそう言うと、母は部屋のドアを開ける。
鍵はかかっていないから、ドアを開けて入ってくるのは容易だ。
「あらまぁ……。香奈ちゃん」
母は、僕のベッドでスースーと寝息をたてている香奈姉ちゃんを見て言葉をもらす。
一応、掛け布団を掛けているので下着姿の状態を見られることはなかったが、それでも僕のベッドで寝ていること自体には問題があったようだ。
僕は、懸命に言い訳をしようと口を開く。
「あの……。母さん。これは、その……」
「二人とも、一体どこまで仲良くなったのかな?」
母は、すごくニヤニヤして僕の方を見ていた。
はっきり言うけど、破廉恥なことは何もしてないからね。
「だから、その……。これは、香奈姉ちゃんがいきなり──」
「言わなくても、わかってるわ。楓にそんな度胸があるわけがないし。──きっと、香奈ちゃんは欲求不満だったのね」
「そんなものなの?」
「女の子って、そういうものなのよ。欲求不満になると、好きな男の子の側にいたいっていう気持ちの方が勝ってしまうの」
「だから今日、学校を休んだのか」
僕は、妙に納得してそう言っていた。
すると母は、びっくりしたような表情を浮かべて香奈姉ちゃんを見る。
「あらあら……。香奈ちゃんったら、学校を休んだの?」
「うん。学校側には、体調不良ってことで休んだみたい」
「そこまでして、学校を休んだの。よほど楓のことが心配だったのね」
「僕は、『気にしなくていいよ』って言ったんだけどね」
「何言ってるの。香奈ちゃんは、他のことが手につかなくなるくらい楓のことが心配だったのよ。そんな香奈ちゃんの想いを、きちんと汲んであげるのが男の子である楓のやることよ」
「僕が、香奈姉ちゃんの想いに?」
「そうよ。これは、いつか絶対に応えなくちゃいけないことだから、楓もその時がくるまでに覚悟を決めておきなさい」
「うん。…わかった」
母が言うのだから、たしかなことなんだろう。
「香奈ちゃんが寝てるんならしょうがないか。後でお願いしようかしら」
「一体、何を頼むつもりだったの?」
「ちょっとしたことよ。たいしたことじゃないの」
「そうなんだ」
ちょっとしたこと…ね。
母が言う『ちょっとしたこと』というのは、僕が知る中ではちょっとしたことじゃないな。
一体、何をさせようっていうんだ。
「そういうことだから、香奈ちゃんが起きたらお願いできる?」
「うん。香奈姉ちゃんが起きたら伝えるよ」
「ありがとう。もしかしたら、楓にも手伝ってもらうことになるかもしれないけど、その時はお願いね」
「わかったよ」
僕が頷くと、母は僕の部屋を後にした。
香奈姉ちゃんと僕に手伝ってほしいことって、一体何だろう。
すごく気になるが、今は香奈姉ちゃんの寝顔を見ていようかな。
うん。そうしよう。
僕は静かに、あどけなさが残る香奈姉ちゃんの寝顔を見ていることにした。
しばらくして、香奈姉ちゃんが目を覚ます。
「あ、楓。起きてたの?」
「うん。なんとなく目が覚めてね」
僕は、つとめて笑顔を浮かべてそう言った。
体調は良いとは言えないけど、香奈姉ちゃんには変な心配をさせたくない。
香奈姉ちゃんは、ゆっくりとベッドから起き上がる。
「今、何時?」
「午後の四時半かな」
近くに置いてあった置き時計を見て、僕はそう答えた。
「もう四時半か。なんだかはやいな」
「今日一日、寝て過ごしていたからね。時間が過ぎるのがはやいのも仕方ないんじゃない」
「学校をズル休みしちゃったからね」
香奈姉ちゃんは、そう言って僕の目の前で制服を着はじめる。
さすがに、下着姿は恥ずかしいと思ったんだろう。
それにしても、制服って……。
私服は持ってこなかったのかな。
「僕は、ズル休みじゃないけどね」
僕は、そう言って肩をすくめる。
香奈姉ちゃんにとってはズル休みでも、僕の方はズル休みじゃない。風邪で学校を休んでいる。
香奈姉ちゃんは、そのことを思い出したのか僕の方を見て言った。
「そうだったね。風邪で休んだんだよね」
「うん。でも香奈姉ちゃんのおかげでだいぶ良くなったし、明日からは学校も大丈夫だと思う」
「そっかぁ。それなら、ズル休みした甲斐があったかな」
嬉しそうに言う香奈姉ちゃんを見て、僕は苦笑いをする。
そして、ふいに母が言ったことを思い出す。
『香奈ちゃんの想いを汲んであげることが、男の子である楓のやること』
香奈姉ちゃんの原動力が僕だとしたら、僕はどうやって香奈姉ちゃんの想いに応えてあげたらいいのか。
「ありがとう。香奈姉ちゃん」
今の僕にできることは、香奈姉ちゃんに礼を言うことくらいだ。
そういえば、母が香奈姉ちゃんに頼みたいことがあったみたいだけど、それって一体何だろうか。
僕にも手伝ってもらうかもって言っていたけど、何をしてほしいんだろう。
う~ん……。すごく気になる。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる