僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

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第十話

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たとえ隆一さんとのデートでも、洋服選びは重要なことだ。
私は、出来る限りお洒落で可愛い洋服をタンスの中から選び、手に取った。

「よし。今日は、これにしようかな」

今日、着ていく服はこれでいいとして──。
問題なのは、下着の方かな。
今、着用している下着は、可愛さ重視でもなんでもない無難なものだ。
せっかくだから、下着の方もとびきり可愛いのにしようかな。
隆一さんとのデートだから、粗相のないようにしなきゃいけないし。
そう思った私は、少し可愛い感じの白の下着をタンスの中から取り出した。

私は、いつもどおりに楓の家に向かう。
しかし今日は、楓に会うためじゃなくて、楓の兄の隆一さんとデートに行くためだ。
理由は、楓には言ってない。
理由を言えば、楓は絶対に止めるはず……。いや、もしかしたら止めないかもしれない。
楓の家の玄関先にたどり着くと、そこには隆一さんがいた。
私のことを待っていた──というわけじゃなく、誰かと連絡をとっていたというのが正しいだろう。
その証拠に、隆一さんはスマホをいじっている。
それに時間的には、約束した時間より一時間くらいはやいし。

「おはよう、隆一さん」

私が声をかけると、隆一さんは驚いたような表情を浮かべていた。

「お、おう。おはよう」

その挨拶も、どこかぎこちない。
私に、何か隠し事をしてるのかな。
それにしたって、その態度は……。
こんな、ぎこちない態度の隆一さんを相手にしていてもしょうがないので、私は、家の中に入らせてもらう。

「家に上がらせてもらうね」
「………」

それに対しても隆一さんは返事をせず、スマホばかりいじっていた。
こんなことなら、隆一さんとじゃなくて、楓とデートに行ったほうがマシだったかな。
そう思ったが、今日は隆一さんにとって特別な日。
ここは、グッと我慢しなくちゃ。

家の中に入ると、楓がいつもどおり台所で皿洗いなどをやっていた。
今日も頑張ってるな。

「おはよう、楓」

そう挨拶すると、楓は笑顔で返してきた。

「おはよう、香奈姉ちゃん」

やっぱり、どう考えても隆一さんよりも楓の方がいい。
そんな本心を隠しつつ、私は楓の側に行く。

「まだデートの時間には早いし。何か手伝おうか?」
「大丈夫だよ。すぐ終わるから」

楓は、笑顔でそう言って洗い物を終わらせていく。
さすがは楓だ。
そういうことに関しては手際がいい。
洗い物を終えた楓は、改めて私を見ると笑顔で聞いてきた。

「今日は、その服装でデートに行くの?」
「うん。どうかな?」

私は、モデルさんのような立ち振る舞いで今着ている服を楓に見せる。
楓は、若干頬を赤くして答えた。

「よく似合っているよ」
「ありがとう」

私は、素直に礼を言う。
楓とのデートの時でさえ着なかった服だから少し緊張したけど、問題はなかったみたいだ。
私は、ふと時計を見やる。
隆一さんとの約束の時間まで、後三十分かぁ。
特別な日っていうことだから付き合ってあげることにしたけど、隆一さんはどこに連れていってくれるんだろうか。
う~ん……。気になるなぁ。
そうしてソファーに腰掛けてリラックスしていると、玄関の方から隆一さんがやってきて、私に声をかけてきた。

「香奈。ちょっといいか?」
「どうしたの? 隆一さん」
「今日のデートのことなんだが……」
「うん。どうしたの?」
「実は、祐司のやつがな。妹を連れてくるって聞かなくてよ」
「妹って、明美のこと?」

隆一さんが言う祐司の『妹』というのは、小鳥遊明美のことだ。
彼女はバンドメンバーではないが、私のクラスメイトで友達である。

「そうそう。そういえば祐司の妹って、香奈と同じ女子校に通ってるんだったな」
「そうだよ。明美は私と同じクラスで友達だから、別に連れてきても問題ないかと思うけど」
「そうか。別に問題ないか……」

隆一さんは、なにかが納得いかないのか『う~ん……』と唸り声を上げた。

「何かあったの?」

私は、悩んでいる隆一さんを見て、思案げに首を傾げる。
隆一さんは、私の顔を見て言う。

「何もない。香奈は、余計な心配しなくていいんだ」
「それが余計に──」

と言いかけて、私は口を閉ざす。
デート前に余計な揉め事はしたくない。
本音を言わせれば、とても気になるところだけど、それを隆一さんに言うのは、喧嘩の原因になるから。
これだから、付き合うとしたら楓の方がいいんだよなぁ。
楓だったら、きちんと話し合うし。

「お。そろそろ時間か。行くぞ、香奈」
「う、うん」

気がつけば、もう約束の時間だった。
私は、小さな肩掛けバッグを下げ、隆一さんについていく。

「二人とも、気をつけてね」

家を後にする私たちに、楓は声をかけてくる。

「うん。行ってくるね」

こんな時の楓の心遣いは、正直嬉しい。
私は、笑顔でそう言って楓の家を後にした。
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