僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

文字の大きさ
97 / 382
第十一話

1

しおりを挟む
「楓は、どういう雰囲気でキスとかしたい?」

香奈姉ちゃんは、何を思ったのかそう聞いてきた。
いきなりそんなこと聞かれても、答えられるはずがない。
僕はふいに香奈姉ちゃんの顔を見る。

「…突然どうしたの?」
「いいから答えて。楓はどんなタイミングでキスしたいの?」
「そう言われてもなぁ。キスとかって、その場の雰囲気とかでするもの…て、聞いたことあるけど、実際にはしたことないし……」

登校中にする話題なのか、それって……。
それにキスしたいとか、そういう欲は特にないし。
そういえば、今までに香奈姉ちゃんに何かされたことはあっても、僕からしたことはないな。
いきなりキスとかしたら、香奈姉ちゃんは嫌がるだろうし。
そういうのって、やっぱりその場の雰囲気や流れでするものだと思う。

「だったらさ。今度は楓の方からしてみようよ。私は、いつでもいいから…ね」

香奈姉ちゃんは頬を染め、微笑を浮かべてそう言った。
やっぱり、香奈姉ちゃんは綺麗で可愛いな。
香奈姉ちゃんのその笑顔を見ていたら、ホントにそう思う。
だけど、そんな笑顔を向けられたからって、僕の方からキスとかするのは無いかな。

「いつか…ね。僕がしたくなったら、させてもらうよ」
「もう! 私たちは、付き合ってるんだから遠慮しなくてもいいんだぞ」
「わかってるんだけど、その……。そういうのって、恥ずかしいからさ……」
「何よそれ? まるで、私がキスとかする時って、何も恥ずかしくないみたいじゃない!」
「恥ずかしくないの?」
「そ、それは……。ちょっとだけ、恥ずかしい…けど。でも好きな人だけにするんだから、恥ずかしくないかも……」
「どっちなの?」
「どっちでもいいでしょ! 私が決めてそうするんだから」
「なるほど」

ようするに、『恥ずかしくない』ってことでいいのかな。
僕は、香奈姉ちゃんの顔を見て、なんとなく微笑を浮かべる。
香奈姉ちゃんは、僕の手を握ってきて、そのまま走り出した。

「ほら、行くよ。このままだと遅刻しちゃう」
「う、うん」

僕と香奈姉ちゃんは、男子校と女子校とで向かう場所は違うけど、登校時間などは同じだ。
僕は香奈姉ちゃんに手を引かれたまま、学校に向かっていく。
ちょっと恥ずかしいけど、途中までなら別にいいか。
着くのは男子校の方が先になるし。

「楓」
「何? 香奈姉ちゃん」
「この前やったアレ。忘れたら絶対にダメだよ。あれは私の気持ちなんだからね」

アレというのは、セックスのことだろう。
香奈姉ちゃんとしたセックスは、忘れろっていうほうが難しいと思う。
香奈姉ちゃんから、求めてきたから余計にだ。

「う、うん。絶対に忘れないよ」
「それならいいんだ。ありがとう、楓」

香奈姉ちゃんは、大人っぽい笑顔を浮かべてそう言った。

放課後。
今日も、香奈姉ちゃんは校門前に来ているだろうな。
いつもどおり、他の男子生徒たちに声をかけられているんだろう。
そんなことを考えながら教室で帰り支度をしていたら、突然誰かに声をかけられる。

「ふ~ん……。弟くんは、いつもここで授業を受けているんだね」
「え?」

男子校には、教師以外で女の人はいない。
いるはずがないのだ。
しかも、僕のことを『弟くん』と呼ぶのは一人しかいない。
僕は、思わず声がしたところに視線を向ける。
そこにいたのは、香奈姉ちゃんだった。

「香奈姉ちゃん⁉︎ どうしてここに?」
「ここの学校の先生がね。中に入りなさいって言ってくれたの。だから、まっすぐここに来たんだよ」
「まっすぐって……。よく先生が許したね」
「よくわからないんだけど、私が校門前にいると、ちょっとした騒ぎになるみたいで……」
「なるほど。それでか……」

香奈姉ちゃんはルックスもスタイルも抜群だから、ワンチャン狙いで声をかける人はいるかもしれない。
すべて玉砕してるんだろうけど。
先生たちも、そんな香奈姉ちゃんの顔をすっかり覚えてしまったんだろう。
だから、敢えて学校の中に入れる判断をしたんだな。
校門前で騒ぎを起こさせないために。
履き物が学校指定の上履きではなく、お客様用のスリッパになっているのは、その証拠だ。

「ところで、今日は私と一緒に帰ってくれないのかな?」
「いや、いつも一緒に帰っているよね?」
「今日は、ダメってこと?」
「ダメってことはないけど……。帰る前に、このプリントを職員室に持っていかないと……」

僕は、机の上に置いてあるプリントを手に持って言う。
香奈姉ちゃんは、すばやい動作で僕からプリントを取り上げる。

「なになに…共同実習のイベントについて──。…って、なによこれ?」

香奈姉ちゃんは、訝しげな目で僕を見る。
これは事情を説明したほうがいいかな。

「書いてあるとおりなんだけど。何かわからないことでもあった?」
「共同実習ってたしか、男子校と女子校の生徒で集って催されるイベントよね?」
「うん。そうだよ」
「私の学年では、そんなイベントはなかったんだけど」
「それは……。一年生のイベントだからね」
「弟くんは参加するつもりなの?」

そこでなぜか悲しそうな目をして訊いてくる香奈姉ちゃん。

「まぁ、サボるわけにはいかないしね」
「そう……」

そんな寂しそうな顔をされても……。
学校の成績は平均とはいえ、一応、優秀な方で通っているし。
香奈姉ちゃんは、プリントの内容を見て、何か思うところがあったのか口を開く。

「このイベントって、男子校と女子校の一年生とでペアを組んでやるんだよね?」
「うん。基本的には、男女でペアを組んで実習するイベントだよ」
「…ということは、このイベントで恋が芽生えたりすることもあったりする?」
「う~ん……。どうだろう。…それは個人差があるんじゃないかな」

さすがに、それはどうだろうか。
恋愛についてまでは、考慮にいれてなさそうだけど。
あくまでも学校側がやる交流イベントの一環だから、香奈姉ちゃんが気にする必要はないと思うんだが……。
それに香奈姉ちゃんの時は、どうだったんだろう。

「弟くんのことだから、わからないじゃない! もし同学年で可愛い女の子と一緒に組むことになったら……。もしそんな可愛い女の子と相性がよかったら不安でしょうがないじゃない」
「考えすぎだって……。もしそんな可愛い女の子と組むことになっても、好きにはならないって……」

出会ってすぐに恋愛なんてならないと思うし。

「ホントに?」
「僕が嘘をついたことってある?」
「ないけど……。でも心配で──」
「心配いらないよ。僕は、香奈姉ちゃん一筋だから」

僕は胸を張ってそう言った。
教室に誰もいないから、言えたんだと思う。
普段だったら、恥ずかしくて絶対に言えないことだ。
香奈姉ちゃんのことが大好きな気持ちは変わらないからこそ、はっきりとそう言っても後悔はない。

「それならいいんだけど……」

それでも心配なのか、香奈姉ちゃんは不安そうな表情を浮かべていた。
僕は自分の鞄を持つと、プリントを持った香奈姉ちゃんに言う。

「今から、それを持って職員室に行くけど。一緒に行くかい?」
「もちろん。私は、弟くんと一緒に帰るつもりでここにいるんだからね。行かないわけがないでしょ」
「そうだよね」

僕は、いつもと変わらない香奈姉ちゃんの態度を見て微苦笑する。
男子校にやって来ても、香奈姉ちゃんは萎縮することはないか。
今の時間帯にも、何人か廊下を歩いているんだけど。
香奈姉ちゃんからプリントを返してもらうと、僕は教室から出て、まっすぐに職員室に向かう。
香奈姉ちゃんも、それに伴いついてくる。
ちなみに職員室は二階にある。ここからはそんなに遠くはない。
だから、香奈姉ちゃんが一緒についてきても問題はない。
一つだけ問題があるとすれば、男子生徒たちが香奈姉ちゃんとすれ違うたびに見てくることだ。いくら眉目秀麗だからって、香奈姉ちゃんのことを見すぎだよ。
香奈姉ちゃん自身は、気にしていないみたいだからいいんだけど……。
香奈姉ちゃんは、まわりの視線に何かを感じたのか、僕の腕にしがみついてくる。

「男の子の視線がちょっとだけ怖いから、少しの間だけお願いできるかな?」
「う、うん。わかった」

ちょっと……。胸が当たってるんですけど。
そんなサービスはいらないから。
そう言いそうになったけど、言葉には出てこなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...