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第十二話
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香奈姉ちゃんの苦手なものってなんだろうか。
見た感じでは、欠点なんてなさそうな感じなので、苦手なものを見つけるのはなかなかに難しそうに思えてしまう。
「どうしたの、楓? 私の顔に何かついてる?」
「え?」
どうやら、ジッと香奈姉ちゃんの顔を見ていたみたいだ。
まぁ、僕の部屋で二人きりだから、他に見るものなんて無いんだけど……。
いつもどおり、学校から帰ってきてまっすぐ僕の部屋に来たからお互い制服姿だ。
香奈姉ちゃんは、訝しげな表情を浮かべ、僕の顔を見てくる。
「その顔は、エッチなことを考えていたでしょ?」
「さすがにそれは……。少しの間、ボーッとしていただけだよ」
「ホントかなぁ~。なんか怪しいな」
そんなジト目で睨まれても、何も出てこないと思うんだけどなぁ。
「何もないって。ホントに、ボーッとしていただけだよ」
「ホントに?」
そう言って、香奈姉ちゃんはズイッと迫ってくる。
「うん。ホントに──」
たとえ香奈姉ちゃんに迫られても、答えられることは何もないからいいんだけどさ。
ただ、ちょっと気になったことがあったから、香奈姉ちゃんを見てしまっただけなんだけど。
「そっか……。ボーッとしていただけか。ちょっと残念だな。でも、何かあったら、すぐに言ってね。楓のリクエストには、できるだけ何でも聞いてあげるから」
香奈姉ちゃんは、そう言ってスカートの裾をつまみ上げる。
「それじゃあ、さっそくいいかな?」
「何かな?」
「香奈姉ちゃんのメイド服姿が見てみたいな」
「私のメイド服姿? そんなの見てどうするの?」
「…無理だったら、別にいいんだ。僕も、冗談で言ってみただけだから──」
普通に香奈姉ちゃんのメイド服姿を見たいって言っても、無理な話だよね。
香奈姉ちゃんにも、羞恥心ってものがあるだろうし。
「わかった。ちょっと待っててね」
香奈姉ちゃんは、スッと立ち上がると僕の部屋を後にした。
僕は冗談で言ってみただけなんだけど。
まさか本気でメイド服に着替えてこないよね。
そもそも香奈姉ちゃんの家に、メイド服ってあるのか?
しばらく経ったころ、誰かが僕の部屋のドアをノックしてきた。
わざわざノックをしてくるのは、律儀なことだ。
「空いてるよ。入ってくるならどうぞ」
「それでは、失礼いたしますね」
そう言って、丁寧な仕草でドアを開けて入ってきたのは、メイド服姿の香奈姉ちゃんだった。
「え……。香奈姉ちゃん」
「お待たせしました、ご主人様」
「いや、お待たせって……。僕は冗談で──。それにご主人様って……」
僕は、香奈姉ちゃんの態度についあたふたしてしまう。
香奈姉ちゃんは、心配そうな表情を浮かべ僕の顔を覗き込んできた。
「どうかなさいましたか? ご主人様」
「いや……。どうって言われても……。香奈姉ちゃんが、その……」
「私のこと…ですか? 私は、いつもどおりですよ」
香奈姉ちゃんは、上品な笑顔を浮かべる。
いや。完璧にメイドの役になりきってるでしょ。
「いつもなら、僕のことを『ご主人様』なんて呼ばないよ」
「あら。そうでしたか? 私のご主人様はあなたしかいないので、よくわかりません」
「そんな……」
なにも、そこまでやれとは言ってないんだけど。
「さぁ、何からしてあげましょうか。肩揉みですか? それとも、ご主人様へのご奉仕がいいですか?」
「ご奉仕って?」
「まぁ! そちらのほうからご希望なのですか? ご主人様って、意外と積極的だったりするんですね」
香奈姉ちゃんはそう言うと、頬を赤く染めて僕の側に寄り添ってくる。
香奈姉ちゃんの胸が、僕の肩に当たっているし。
これは、やっていいことなのかな。
「あの……。香奈姉ちゃん。さすがにこれは……」
「私の精一杯のご奉仕ですよ。何か問題でもありましたか?」
「問題もなにも……。そろそろやめにしようよ。僕の冗談からなったことなんだし」
「やめないよ」
「え?」
「やめるつもりはありません。しばらくの間は、この格好でご奉仕させていただきます」
「そんな……。一日だけじゃないの⁉︎」
「当たり前です。せっかく着替えたのですから、しばらくはこの格好で居させてもらいます」
しばらくの間って、どれくらいだろう。
一週間くらいかな?
もしかして、僕とデートに行く時もその格好なのか。
だとしたら、かなり恥ずかしいかも。
「嬉しくないのですか?」
香奈姉ちゃんは、哀しげな顔をして訊いてくる。
僕は、香奈姉ちゃんのご機嫌を損ねないように注意を払いながら答えた。
「う…嬉しいよ。香奈姉ちゃんが僕のために、やってくれた事だからね。嬉しくないって言われたら、嘘になるよ」
「そうですか。それを聞いて、安心しました。しばらくの間は、ご主人様にご奉仕しますね」
「いや……。僕は、香奈姉ちゃんのご主人様じゃ……」
「ご主人様じゃないんですか?」
香奈姉ちゃんは、今にも泣きそうな顔で僕を見てくる。
そんな顔で見られても……。
返答に困るんですけど。
ここで泣かれても嫌なので、僕は、こう答えた。
「いえ……。ご主人様です……」
「うん。そうですよね」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情を浮かべて抱きついてくる。
ここで何を言っても、香奈姉ちゃんは聞きそうにないので、僕は黙って香奈姉ちゃんを優しく抱きしめることにした。
見た感じでは、欠点なんてなさそうな感じなので、苦手なものを見つけるのはなかなかに難しそうに思えてしまう。
「どうしたの、楓? 私の顔に何かついてる?」
「え?」
どうやら、ジッと香奈姉ちゃんの顔を見ていたみたいだ。
まぁ、僕の部屋で二人きりだから、他に見るものなんて無いんだけど……。
いつもどおり、学校から帰ってきてまっすぐ僕の部屋に来たからお互い制服姿だ。
香奈姉ちゃんは、訝しげな表情を浮かべ、僕の顔を見てくる。
「その顔は、エッチなことを考えていたでしょ?」
「さすがにそれは……。少しの間、ボーッとしていただけだよ」
「ホントかなぁ~。なんか怪しいな」
そんなジト目で睨まれても、何も出てこないと思うんだけどなぁ。
「何もないって。ホントに、ボーッとしていただけだよ」
「ホントに?」
そう言って、香奈姉ちゃんはズイッと迫ってくる。
「うん。ホントに──」
たとえ香奈姉ちゃんに迫られても、答えられることは何もないからいいんだけどさ。
ただ、ちょっと気になったことがあったから、香奈姉ちゃんを見てしまっただけなんだけど。
「そっか……。ボーッとしていただけか。ちょっと残念だな。でも、何かあったら、すぐに言ってね。楓のリクエストには、できるだけ何でも聞いてあげるから」
香奈姉ちゃんは、そう言ってスカートの裾をつまみ上げる。
「それじゃあ、さっそくいいかな?」
「何かな?」
「香奈姉ちゃんのメイド服姿が見てみたいな」
「私のメイド服姿? そんなの見てどうするの?」
「…無理だったら、別にいいんだ。僕も、冗談で言ってみただけだから──」
普通に香奈姉ちゃんのメイド服姿を見たいって言っても、無理な話だよね。
香奈姉ちゃんにも、羞恥心ってものがあるだろうし。
「わかった。ちょっと待っててね」
香奈姉ちゃんは、スッと立ち上がると僕の部屋を後にした。
僕は冗談で言ってみただけなんだけど。
まさか本気でメイド服に着替えてこないよね。
そもそも香奈姉ちゃんの家に、メイド服ってあるのか?
しばらく経ったころ、誰かが僕の部屋のドアをノックしてきた。
わざわざノックをしてくるのは、律儀なことだ。
「空いてるよ。入ってくるならどうぞ」
「それでは、失礼いたしますね」
そう言って、丁寧な仕草でドアを開けて入ってきたのは、メイド服姿の香奈姉ちゃんだった。
「え……。香奈姉ちゃん」
「お待たせしました、ご主人様」
「いや、お待たせって……。僕は冗談で──。それにご主人様って……」
僕は、香奈姉ちゃんの態度についあたふたしてしまう。
香奈姉ちゃんは、心配そうな表情を浮かべ僕の顔を覗き込んできた。
「どうかなさいましたか? ご主人様」
「いや……。どうって言われても……。香奈姉ちゃんが、その……」
「私のこと…ですか? 私は、いつもどおりですよ」
香奈姉ちゃんは、上品な笑顔を浮かべる。
いや。完璧にメイドの役になりきってるでしょ。
「いつもなら、僕のことを『ご主人様』なんて呼ばないよ」
「あら。そうでしたか? 私のご主人様はあなたしかいないので、よくわかりません」
「そんな……」
なにも、そこまでやれとは言ってないんだけど。
「さぁ、何からしてあげましょうか。肩揉みですか? それとも、ご主人様へのご奉仕がいいですか?」
「ご奉仕って?」
「まぁ! そちらのほうからご希望なのですか? ご主人様って、意外と積極的だったりするんですね」
香奈姉ちゃんはそう言うと、頬を赤く染めて僕の側に寄り添ってくる。
香奈姉ちゃんの胸が、僕の肩に当たっているし。
これは、やっていいことなのかな。
「あの……。香奈姉ちゃん。さすがにこれは……」
「私の精一杯のご奉仕ですよ。何か問題でもありましたか?」
「問題もなにも……。そろそろやめにしようよ。僕の冗談からなったことなんだし」
「やめないよ」
「え?」
「やめるつもりはありません。しばらくの間は、この格好でご奉仕させていただきます」
「そんな……。一日だけじゃないの⁉︎」
「当たり前です。せっかく着替えたのですから、しばらくはこの格好で居させてもらいます」
しばらくの間って、どれくらいだろう。
一週間くらいかな?
もしかして、僕とデートに行く時もその格好なのか。
だとしたら、かなり恥ずかしいかも。
「嬉しくないのですか?」
香奈姉ちゃんは、哀しげな顔をして訊いてくる。
僕は、香奈姉ちゃんのご機嫌を損ねないように注意を払いながら答えた。
「う…嬉しいよ。香奈姉ちゃんが僕のために、やってくれた事だからね。嬉しくないって言われたら、嘘になるよ」
「そうですか。それを聞いて、安心しました。しばらくの間は、ご主人様にご奉仕しますね」
「いや……。僕は、香奈姉ちゃんのご主人様じゃ……」
「ご主人様じゃないんですか?」
香奈姉ちゃんは、今にも泣きそうな顔で僕を見てくる。
そんな顔で見られても……。
返答に困るんですけど。
ここで泣かれても嫌なので、僕は、こう答えた。
「いえ……。ご主人様です……」
「うん。そうですよね」
香奈姉ちゃんは、嬉しそうな表情を浮かべて抱きついてくる。
ここで何を言っても、香奈姉ちゃんは聞きそうにないので、僕は黙って香奈姉ちゃんを優しく抱きしめることにした。
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