僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

文字の大きさ
122 / 382
第十二話

11

しおりを挟む
千聖が言ってた文房具屋さんは、僕がいつも音楽のノートを買いに来てた場所だった。
最近は来なくなってしまったが、どこに何があるのかは、今でもよくわかる。
千聖は、まっすぐに原稿用紙があるところに向かって歩いていく。

「実はね。楓君と出会ったのは、ここなんだよ」
「え……。ここで?」
「そうだよ。楓君はその時、音楽のノートを買いにこの店によく来てたよね」
「その時って、僕がまだ中学生の頃の話だったような……」

僕は、そう言って神妙な表情になる。
中学生の頃はバンドに興味があり、独自で曲作りなどをやっていた時だ。
その時は、何冊も音楽のノートを買っていったのを今も覚えている。
千聖は、中学生の頃のことを思い出したのかクスッと笑い、僕に言った。

「うん。その時から、ちょっと気になっていたんだよね。音楽のノートばっかり買っていくものだから、何書いてるのかなぁって──」
「いや、あの時は……。周囲の人の目も気にせずに歌詞や曲を書いてたから……」
「どんな曲を作っていたの?」
「それは……。言うのも恥ずかしいくらいのものだよ」

僕は、思わず苦笑いをする。
今、読み返したらポエムかと思うくらいに恥ずかしいものだ。
何であんなものが書けたんだろうと思うくらいに……。
千聖は可笑しかったのかクスッと笑い、訊いてきた。

「それって、私が描いてる漫画くらい恥ずかしいものなの?」
「どうだろう。千聖さんの漫画を見たわけじゃないからなぁ。何とも言えないや」
「私の漫画…かぁ。たしかに、今は持ってきてないから、見せることはできないけど。機会があったら、見せてあげるよ」
「ホントに?」
「そのかわり、楓君が作詞したものを見せてくれないかな?」
「え、いや……。さすがにそれは……」
「私の漫画、見たくないの?」

千聖は、甘えるような表情でそう言ってくる。
そう言われてしまうと見たいような気もするけど、交換条件に僕のポエム的なアレを見せなきゃいけないってなると話は別だ。

「やっぱりやめておこうかな」

僕は、千聖の提案を丁重に断る。
アレだけは、世に出したらいけない代物だ。
どんな条件を出されようと、のむわけにはいかない。

「え~。ダメなの? それなら、私の新作の漫画込みならどう? 見せてくれるかな?」

千聖は、どうしても僕が書いたアレを見たいのか、そう言ってきた。
どんなに良い条件を出されても、僕の意思は変わらないです。

「ごめん……。それだけは、勘弁して。兄貴や香奈姉ちゃんにすら見せたこともないものだから……」
「やっぱりダメか……。それなら、私が楓君の専属メイドになってご奉仕するっていうのならどうかな?」
「え……。ご奉仕って……?」
「言葉どおりの意味だよ。楓君にご奉仕するの」
「それは遠慮しておくよ。専属メイドなら、もう間に合ってるし……」

そう言いかけたところで、途中でやめる。
まさか香奈姉ちゃんが僕の専属メイドになっているだなんてこと、千聖さんには言えないし……。

「間に合ってるって、どういう意味よ?」
「いや、こっちのことです」

そう言って、僕は千聖から離れていく。

「ちょっと⁉︎ きちんと説明しなさいよ。逃げるな!」

千聖は、そう言いながら追いかけてくる。
やっぱり言えるわけがない。
千聖には悪いけど……。
僕は、先に文房具屋さんを後にした。

千聖は、自分の買い物を済ませると、不満そうな顔をして文房具屋さんから出てくる。

「…まったくもう! 楓君が先に出ちゃうもんだから、ゆっくり見てくることができなかったじゃない!」
「ごめん……」

僕は、謝ることしかできなかった。
あんな場所でメイドになるとかっていう話題を振られると、逃げたくもなる。
なにより、周囲の人の視線が痛いし……。

「まぁ、あの場所であんなことを言ってしまった私も悪かったんだけどさ……」

千聖は、恥ずかしかったのか頬を赤くする。
頬を染めて言う辺り、千聖にも自覚はあるんだろうな。
そんな彼女を責めるのは、どうにも憚られてしまう。

「頼むからあんな冗談は、絶対に言わないでね。勘違いしちゃう人もいるかもしれないから」
「半分は冗談なんかじゃないんだけどな……」
「え……。それって?」

僕がそう聞き返すと、千聖はなぜか物欲しそうな表情で僕を見上げてきて言ってくる。

「楓君が望むのなら、専属メイドにくらい、なってあげるよ」
「それは……」

僕は、はっきりと拒否できなかった。
その時点で、古賀千聖という女の子に魅入られてしまっているってことなんだろう。
でも、ここはハッキリと言っておかないといけない。

「丁重にお断りしておくよ」
「どうして? 私は、西田先輩みたいに奥手じゃないよ」

千聖は、そう言って僕の腕を掴んでくる。
千聖にとっては、香奈姉ちゃんってそんな風に見えてしまうのか。
しかし、僕は知っている。
積極的にエッチなことをしてくる香奈姉ちゃんの姿を……。

「香奈姉ちゃんは、あんな風に見えて、好きな男性にはけっこう積極的なんだ」
「なるほど。それで、西田先輩はあなたの専属メイドになっているってわけか」

千聖は、納得したようにそう言う。
ん……。
全部バレてる?

「あの……。千聖さん?」
「わかっていないと思ってた? 初めから全部わかっていたわよ」
「えっと……」
「初めから全部わかっていて、あなたの専属メイドになりたいって言ってるんだけど……。それでもダメかな?」
「ごめん……。気持ちは嬉しいんだけど。やっぱり無理があるって言うか……」

僕の専属メイドになりたいっていう気持ちはわかるんだけど、距離的に無理があるような気がするんだよな。
そもそも、どうして僕なんかの専属メイドになりたいって思うのか、そこら辺が不思議なんだけど。

「メイドが一人から二人になるんだよ。楓君にとっては嬉しいことじゃないの?」
「そういうのは一人で間に合っているかな。それに──」
「それに、楓の専属メイドは、私だけなんだから」

僕の言葉を遮るかのようにそう言ったのは他でもない。
メイド服姿の香奈姉ちゃんだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...