僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

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第十四話

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私たちがお風呂から上がると、妹の花音が不機嫌そうな表情で立っていた。

「楓なんかと一緒にお風呂って──。ずいぶんと仲良さそうだね。お姉ちゃん」

花音は、私のことを睨みつけてそう言ってくる。
正確には楓かもしれないが。
髪は少し短めで、髪の両側をリボンで結んでいる。
そして、少し吊り上がったような目元。薄桃色の唇は生意気そうに引き結んでいた。
全体的に見れば、美少女なんだろうけど。
まだ中学生だからなのか、体の成長はそこまで発達していない。そこはまぁ、仕方ないのかもしれないが。
楓と一緒にお風呂に入るってことは、仲が良いってことだし。別に悪いことをしてるわけじゃない。

「あのね、花音。これはね。楓とのスキンシップのつもりで──」
「スキンシップ…ねぇ」

花音は、訝しげに私と楓を交互に見やっていた。
そういえば、お風呂から上がってきたばっかりで私も楓もバスタオルを一枚巻いた姿だ。
私たちのその姿を見て何を想像したのか、花音はハッとした様子になり、すぐに顔を赤くして言う。

「お風呂場でのスキンシップって、まさかセセセ、セック……」

おそらく『セックス』と言おうとしたんだろう。
まぁ、たしかにセックスに近いことはしたかもしれないけれど。問題になるようなことはしていない。
少なくとも、中学生の女の子が言っていい言葉ではないかな。
私は、花音の口を人差し指で添えて笑顔で答える。

「花音には、ちょっと早いかな」
「………」

花音は、呆然とした様子で私を見ていた。
私が楓とお風呂場で何をしていようと、花音には関係ない。
そもそも、花音は楓のことを軽蔑しているみたいだしね。

花音は、私と楓が一緒にいるのが気に入らないのかムッとした表情を浮かべていた。

「ちょっとお姉ちゃん! いつまでのんびりしてるつもりなのよ! 私、お腹空いたんだけど」
「え? 今日は、花音のシフトじゃなかったっけ?」
「そうだけどぉ……。私は、お姉ちゃんの手料理が食べたいの!」

花音は、甘えた子供のようにそう言ってくる。
花音も料理ができないわけじゃないけど、そこまで手の込んだものは作れない。

「そんな、わがまま言われても……」

私は、ため息混じりにそう言った。

「それなら、僕が作ろうか?」

そう言ったのは楓だ。
楓は、さっきから居間のソファーに腰掛けていたんだけど、そう言うと立ち上がり服の袖をまくる。

「ああ、楓。まだいたの? 用が済んだんなら、さっさと帰れば?」

花音は、素っ気ない態度でそう返していた。
私の代わりに料理を作ってあげると言ってくれているのに、その言葉はないだろう。
さすがに私はイラッとしてしまい、口を開く。

「こら、花音! 楓に向かってそんな態度はないでしょう!」
「だって、楓だよ。こんな奴の何を敬えばいいのか、よくわからないし」
「こんな奴って……」

花音の言葉に、私は愕然となる。
私の恋人のことを、そんな風に言ったのだ。
許せるわけがない。

「お姉ちゃんも、よくこんな奴と一緒にお風呂に入れるよね。私なら、絶対に無理だよ」

花音が楓のことを軽蔑視してるのはわかっていたけど、ここまでとは……。
だけど──。

「私の好きな人のことを悪く言う人には、手料理は振る舞いたくないな」
「そんなぁ……。そこを何とか──」
「ましてや、今日は私のシフトじゃないしね」

私は、楓の手を握りそう言った。
このままだと、確実に楓が仲裁に入って『僕が料理を作る』って言いかねない。
楓の手を握ったのは、それを止めるためだったのだが。
楓は、私の方を見て微笑を浮かべると、すぐに花音に向き直る。

「今日は、たくさんお世話になったことだし。僕が作るよ」
「楓……。でも……」
「香奈姉ちゃんは、気にしなくていいよ。僕が勝手にやることだから」

そんなことを言われたら。
私だって、じっとしていられない。

「楓がそう言うのなら、私もやるよ」
「いいの?」

楓は、不安そうな表情を浮かべてそう訊いてくる。
まぁ、花音のわがままだから、無視してもいいんだけど。
花音がヘソを曲げ始めたら、どうにもならないからね。

「別にいいよ。楓に私の料理をご馳走したいし」

あくまでも楓のために料理を作るんだから、別にいいだろう。

「お姉ちゃん。私には? 私の分は作ってくれないの?」
「花音の分は、楓がちゃんと作ってくれるでしょ」
「え~。楓が作るの? 私、お姉ちゃんの手料理がいいな」
「文句があるんなら、自分で作りなさい。花音は、自分でも作れるでしょ?」
「そうだけどぉ……」

花音は、不機嫌そうに頬を膨らませる。
私が作るものは良くて、楓が作るものは嫌って……。
どこまでわがままなんだろう。
料理の腕は、私よりも楓の方が上なんだけどなぁ。

花音は、なんだかんだ文句を言いながらも楓の手料理を食べてくれた。
家族分を作ってくれたので私ももちろん食べたが、やっぱり楓の手料理は美味しい。

「やっぱり、楓の手料理は美味しいな」

私は、上機嫌でそう言っていた。
食べ終わった後にそんなことを言っても、楓の心には伝わらないと思うけど……。
花音はどんな反応を見せるんだろうか。
私は、固唾を呑んで花音の方を見る。

「ふんっ。まぁまぁなんじゃないの」

花音は、鼻を鳴らしそう言った。
楓の前では素直に美味しいって言わないから、その返答でも、まぁ、許してあげようかな。

「そっか。口に合ってよかったよ」

楓は、そう言って微笑を浮かべる。
楓にも、花音の気持ちはわかっているんだろう。
花音は、少しだけ頬を上気させてそっぽを向く。

「──さて。僕も、そろそろ帰ろうかな」

楓は一息吐いた後、いきなりといったタイミングでそう言い出した。
すると私が動くより早く、花音が動き出す。
居間を後にしようと歩き出した楓の手をギュッと握っていたのだ。

「花音?」

私は、思わず首を傾げて花音を見る。
花音は、下を俯いたまま言葉を発さない。

「花音? えっと……。どうしたの?」

楓も、ちょっとだけ驚いた様子でそう訊いていた。
さすがに何も言わないまま楓の手を握ったのは申し訳ないと思ったのか、花音は口を開く。

「料理…作ってくれて、ありがと。ホントにまぁまぁだけど、美味しかったわ……」

小声で囁くようにそう言ったのだが、私や楓には聞こえていた。
楓は、笑顔で返す。

「どういたしまして」

花音は、照れ臭かったのか再び鼻を鳴らしそっぽを向いた。
これで話は終わったんだろう。

「それじゃ、私が楓の家まで送っていくよ」

私はソファーから立ち上がり、楓に近づくともう片方の腕を掴んでそのまま引っ張ろうとする。しかし──。
ん?
どうしたんだろう?
花音が、楓の手を離そうとしない。
しっかりと楓の手を掴んでいる。

「どうしたの、花音? 話は終わったんじゃないの?」
「あの……。その……」

めずらしく花音が挙動不審だ。
楓は、花音のその仕草が気になったんだろう。心配そうに言った。

「どうしたの? 言いたいことは、はっきりと言った方がいいよ」

すると花音は、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして言う。

「きょ、今日くらい、家に泊まっていったって、いいんじゃないの?」
「「え……」」

私と楓は、一瞬だけ顔を見合わせるが、すぐに花音の方に視線を向けていた。
花音が楓にそんなことを言うなんて……。
めずらしいこともあるもんだなぁ。
さっきは、用がないならさっさと帰れとまで言ったのに。
どういう風の吹き回しなんだろう。

「花音ちゃん。まさか花音も、楓のことが目当てなの?」

私は、少しだけ不安になりそう言っていた。
花音は、あきらかに動揺した様子で口を開く。

「はぁ⁉︎ そ、そんなわけないじゃない! 何、バカなこと言ってるのよ」
「そうだよね。まさか花音ちゃんも、楓のことがいいだなんて言わないよね」
「当たり前じゃない! 誰が、こんなナヨナヨとした男となんか──」

そうは言ってるが、花音が楓を見る目があきらかに違う。
それは単純な嫌悪感ではなく、無理に好意を押し殺しているみたいな感じ。
まさか…ね。

「そういうことなら、遠慮なく楓を部屋に連れて行くけど……。いいの?」
「勝手にすればいいじゃない」

花音は、また鼻を鳴らしてそう言った。
強がってるのは見え見えなんだけど。
楓は、困った様子で私と花音を見やる。

「あの……。僕は、自分の家に──」
「ねぇ、楓。今日はもう、やる事ないんだよね? だったら、私の家に泊まっていかない? いや、泊まっていくでしょ? 泊まっていきなさい」

私は、ずいっと楓に迫る。
家に帰ったって、後は寝るだけなんだろうし。
それなら、私と一緒にいた方が有意義なひとときを過ごせるはずだ。

「う、うん。香奈姉ちゃんがいいのなら……」

楓は、あきらめた様子で頷いていた。
なんだろう。
私が押し切った感がハンパないんだけど……。
花音は、なぜか楓の手を握ったまま離さずにいた。
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