僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃

文字の大きさ
172 / 382
第十五話

11

しおりを挟む
放課後になり、僕がいつもどおり帰宅準備をしていると、慎吾は不機嫌そうな表情で言う。

「今日も、西田先輩と一緒に帰るのか?」
「そうだけど……。どうかしたの?」
「いや、別に……」

めずらしく慎吾が、言葉を詰まらせている。
これは、確実に何かあったような表情だ。
だからといって、それを聞き出すというのも悪い気がするし。
さて、どうしたものか。
やっぱり聞かない方がいいよね。
僕は、自分の鞄を肩に担ぎ教室を出る前に慎吾に一声かける。

「それじゃ、慎吾。また明日」
「お、おう。また明日な」

慎吾は、それでも笑顔で僕にそう返した。
やっぱり何かあったのかな。
気にはなるけど、僕には関係のなさそうな話だろうし、ここは何も聞かないでおこう。
僕は、迷わず教室を後にした。

校門前に来ると、相変わらず二人の女子生徒が……いや、今日は見慣れない女子生徒がさらにもう一人いた。
二人の女子生徒が、香奈姉ちゃんと奈緒さんなのは言うまでもないが、もう一人の女子生徒は一体誰だろう。
髪を金髪に染めていて、いかにもギャルっていう感じの女の子だ。
僕が来たことに先に気づいたのは、香奈姉ちゃんだった。

「やっと来たね、楓。はやく帰ろう」
「う、うん」

僕は、ギャル系の女の子に視線を向けながら、そう返事をする。

「へぇ、彼が西田の彼氏なんだ。なんか意外~」

ギャル系の女の子は、僕のことを頭の先から足の先まで舐めるように見てきて、そう言った。

「あの……。香奈姉ちゃん。この人は?」

僕は、思わず眉をひそめてしまう。
たぶん、香奈姉ちゃんがつれてきたんだろうと思うんだけど。この人は、さすがに……。
さすがの香奈姉ちゃんも、ギャル系の女の子を無視できなかったんだろう。
香奈姉ちゃんは、苦笑いをしてギャル系の女の子のことを紹介した。

「えっと……。この人はね。私と同じ二年生で、名前は鳩中さんって言うんだ」
「ヤッホー。明美で~す。よろしくねぇ」
「あ、うん……。よろしく」

僕は、引き攣った表情でなんとか対応する。
はっきり言って、僕はギャル系の女の子の相手は苦手だ。
そもそも、何でそんな人が僕に近づいてくるんだろう。

「一応、楓にとっては先輩になるから、鳩中先輩って呼べばいいからね」
「わかった。鳩中先輩だね」

僕がそう言うと、ギャル系の女の子──鳩中先輩は、ムッとした表情を浮かべる。

「何よ、それ。ものすごく普通なんだけど。──もっと軽い感じで、『明美』って呼んでほしいな」
「いやいや。楓にそんな風に呼ばせるのは、さすがに……」
「あたしがいいって言ってるんだから、いいんだよ」
「でもね。楓にとっては──」
「ああ、もう。西田は、色んなことで堅いんだから。そんなだから、宮繁先輩に目をつけられるんだよ」
「それは……」

図星を突かれてしまったのか、香奈姉ちゃんは言葉を詰まらせてしまう。
宮繁先輩って、女子校の生徒会長だよね。
この間、男子校に来たからすごく緊張してしまったけど。
話をする相手が学校の生徒会長とかになると、緊張してしまうのは何故だろうか。

「それにひきかえ、あたしは生徒会長から目の敵にされてるから、次期生徒会長とかっていう話もないんだけどね」

鳩中先輩は、なぜか自慢げにそう言った。
自慢できるようなことなのかな。それって……。
まぁ、髪を金髪に染めて、わざと制服も着崩しているような、いかにもギャルっぽい女の子は、生徒会長などからは嫌われて当然だろうな。
さすがの僕でも、普通に近づきたくないような相手だ。

「私は……。生徒会長になるつもりなんて、ないんだから!」

香奈姉ちゃんは、毅然とした態度でそう言う。
まぁ、香奈姉ちゃんの場合はそうなんだろうな。
次期生徒会長を任せられるくらい優秀なんだろう。
実際、成績は優秀だしね。
たしか女子校の生徒会長になると、恋愛禁止になるんじゃなかったっけ?
それだけじゃなくて、大人になっても婚期を大きく逃してしまうっていうジンクスもあったような気がしたけど。
もし香奈姉ちゃんが生徒会長になったら、僕との付き合いも無くなってしまうのか。
それは、すごく寂しいな。

「それはともかくとして。君は料理が得意なんだよね?」

鳩中先輩は、いきなり僕の手を掴んできてそう訊いてくる。

「ちょっと……。鳩中さん!」

そんな香奈姉ちゃんの言葉も、もう聞こえてはいないみたいだ。
こんな時、なんて答えればいいのかわからないけど、ホントのことを言った方がいいんだよね。

「『得意』とは言えないけど、家では主に僕が料理を作ってる時の方が多いかな」
「そっか。それなら、西田から聞いたとおりだよ。よかったぁ……」

鳩中先輩は、安堵の息を吐く。
何がよかったのか、僕には全然わからない。

「ん? どうしたの?」
「えっと……。実はね」

そこで香奈姉ちゃんの傍にいた奈緒さんが、口を開く。
これは、なにやら事情がありそうだ。

「ここで話すのもどうかと思うし、近くの公園に行こうか?」

僕は、そう提案する。
いつまでも校門前で四人でたむろってるわけにもいかない。
香奈姉ちゃんもそう思ったのか、口を開いた。

「そうだね。ここからなら公園が近いから、そこで話をしよう」
「あたしは、どっちでも構わないよ」
「それじゃ、話は公園でしよう」

そう言うと僕は、公園の方に向かって歩き出す。
その後を、三人の女の子たちがついてきた。
料理の話っていうのは理解できたけど、どんな内容なんだろうか。
僕にもできるような料理なら、いいんだけど……。

公園に着くなり、鳩中先輩は近くにあったベンチに腰掛けた。

「──さて。とりあえず、君は西田よりも料理ができるって話だけど……。実際のところは、どうなのかな?」

よりにもよって、訊いてくることが料理のことって……。
普通にギャルの女子高生が、料理の話題をしてくることってあるのかな。

「香奈姉ちゃんよりもというより、香奈姉ちゃんと同程度……と思った方がいいかもしれないよ。僕は、そこまで料理が上手というわけでもないし……。普通にあり合わせのもので作ってるだけだよ」
「あり合わせか……。なるほどね」

鳩中先輩は、ふむふむと言った様子で頷いていた。
この先輩。意外と家庭的な女の子だったりするのかな。
よくわからないけど。

「聞きたいことは、それだけかな?」

僕がそう訊くと、鳩中先輩は、今、思いついたかのように言いだした。

「唐揚げのことなんだけどさ。味付けはどうやっているの? 手作りなんだよね?」
「唐揚げ?」

僕は、思案げに首を傾げてしまう。

「うん、唐揚げの味付け。西田のを貰ったときさ、病みつきになるほど美味しかったんだよね。差し支えがなければ教えてくれるかな?」

鳩中先輩は、鞄の中からメモ帳を取り出した。
たしかに香奈姉ちゃんに渡したお弁当の中には、唐揚げは入れたけど……。
いきなり唐揚げの味付けのことを言われても、答えられない。
あれは、企業秘密みたいなものだ。

「あれは……。さすがに教えられないかな」
「どうしてもダメかな?」

鳩中先輩は、今にも泣きそうな視線で僕を見つめてくる。
そんな目をされても、ダメなものはダメだ。
僕が作る唐揚げの味付けは、僕の母にも作ることができない特別なものなのだから。

「ごめん……。あれはちょっと……」
「そっか。普通の手段じゃ、やっぱダメか……。それなら──」

鳩中先輩は、呟くようにそう言うと、僕の傍に寄り添ってくる。

「ちょっ……⁉︎ 鳩中さん!」

香奈姉ちゃんは、あまりの事にびっくりしてしまい声をあげた。
しかし鳩中先輩は、そんなことを気にすることはなく、体を密着させてくる。
ちょっと……⁉︎
胸が当たってるんだけど⁉︎

「あの……。これは一体──」

僕は、思わず言ってしまう。
鳩中先輩は、意に介した様子もなく言葉を返す。

「色じかけだけど……。やっぱり、これでもダメなのかな?」

そんなことされても……。
僕は、教える気はないんだけどな。

「ごめん……。僕の特別なレシピだから、他人に教えるのはさすがに……」
「それじゃ、仕方ないか……」

僕が教える気がないと察したのか、鳩中先輩はゆっくりと僕から離れた。
どうやら、諦めてくれたみたいだ。
僕は、安堵してしまいホッと一息吐く。
そう思った矢先、鳩中先輩はビシィッと僕に指を突きつける。

「それなら、君はあたしにもお弁当を作る事。これは、決定事項なんだから」
「え、いや……。それは……」

この先輩は、僕の料理を諦めてくれたわけではなかったみたいである。
僕は、異論を唱えようと口を開く。
さすがにそれは無理だろう。
そう言おうとしたのだけど。

「無理なことはないよね? 西田とお弁当交換してるくらいなんだからさ」

鳩中先輩は、図星を突いたかのようにそう言った。
まるで初めから知ってるかのように。

「え、ちょっと……。どうしてそれを知ってるのよ⁉︎」

それに反応したのが、香奈姉ちゃんだ。
香奈姉ちゃんは、めずらしく慌てた様子だった。
鳩中先輩は、したり顔で笑顔を浮かべ香奈姉ちゃんの質問に答える。

「女子校に通ってる生徒の間では有名だよ。西田が男の子にお弁当を作ってもらっているってね。あくまでも噂なんだろうけど、男の子からお弁当を貰ってる人って、女子校じゃ皆無だからね。すぐにわかるよ」
「………」

香奈姉ちゃんは、その場で押し黙ってしまう。
女子校では、そんな噂が流れているのか。
なんか驚きだ。
実際には、お弁当を香奈姉ちゃんにあげてるんじゃなくて、香奈姉ちゃんのお弁当と僕のお弁当を交換してるだけなんだけどな。

「まぁ、この事実を周りに吹聴されたくなかったら、君は、あたしの分もお弁当を作ることだね」
「別に吹聴してもいいよ」
「え……。それって……」

僕の言葉に、鳩中先輩は呆然となるが、すぐに慌てだした。

「いや、でも……。これは、まわりにバレたらどうなるか……」
「僕は、別にいいよ。吹聴しても構わないよ。だってほとんどの内容が事実だし」

なにをそんなに慌てているのか、僕にはわからないんだけど。
香奈姉ちゃんは、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして黙っている。

「そういうことなら、あたしは遠慮なく言うからね。どうなっても知らないから」

アテが外れてしまったのか、鳩中先輩はムッとした表情になり、そのまま走り去ってしまった。
それを呆然とした表情で見ていた僕たち──。
これでいいんだろうか。
僕は、香奈姉ちゃんたちの方に向き直る。

「あの……。これで良かったのかな?」
「楓君が良いのなら、それで良かったんじゃないかな」

奈緒さんは、微笑を浮かべていた。
香奈姉ちゃんはというと。
よほど恥ずかしかったのか、まだ赤面している。

「どうしたの、香奈姉ちゃん? 顔が真っ赤だけど、風邪でも引いたの?」
「な、なんでもないよ。ちょっと、暑くなっただけだよ。…ホントになんでもないんだから」
「それなら、良いんだけど……」

僕も、これ以上は敢えて訊かなかった。
たぶん、訊いても曖昧な答えで返ってきそうだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...